予知夢を見るということ
と、桜木は感じたが、
「ひょっとすると、宗教団体という家族の中にいることができたことで、悪夢を見るということがなかったのかも知れない」
と思うのだった。
団体の家族には、
「自分でも少し信じられないような、不思議な力がある」
と思っていた。
それが、どんなものなのかということは分からなかったが、
「予知夢というものを見るのは自分だけではないとは思っていたが、それを口外してはいけないことだと思っていることから、本当は、予知鵜を見ることができるのは、自分だけなんだと思うようになったのも事実なんだよな」
と桜木は言った。
桜木は、教団の話を話して聞かせたが、頼子は、驚いている様子もなく、ただ無表情で聞いているだけだった。
本質
桜木が話を聞く限りでは、
「私の見る予知夢は、怖い夢ばかりを見ている」
ということであった。
彼女は自分からハッキリとは言わぬが、
「そんな怖い夢ばかりを見ているから、人とかかわることがいやなのだ」
といっているようで、見ている限り、
「とにかく、世の中のほとんどのことを怖がっている」
ということであった。
「なるほど、家族が早く結婚させたいと考えたのは、そういうところからきているのだろうか?」
ということだった。
「早く厄介払いしたい」
という思いがあったのだろう。
おそらく、娘である頼子は、そのことを分かっていて、
「家族に余計な気を遣わせてはいけない」
と思っているのだろう。
それを家族も分かっていて、ただ分かっているというのは、
「娘はあざとさがある」
ということから、
「わざとらしさを持っている」
ということで、
「遠ざけたい」
と考えているに違いない。
お互いに、気を遣いあいすぎると、ロクなことはないということの証明ではないかと思えるのであった。
桜木にとって。その感覚は、
「教団を出てから、実家に帰った時に感じた」
という思いであった。
正直、
「あのまま、教団にいた方がよかったのではないか?」
とも考えている。
何も考えず、気を遣うこともなく、まわりと接することができるのは、教団の家族の前だけでだった。
と思っているからだ。
だが、
「そんな彼女は、俺のどこを気にいってくれたのだろう?」
と桜木は考えた。
そもそも、桜木は、
「彼女が気を遣ってくれることがうれしい」
と思っていたのだが、付き合っていくうちに、
「彼女は、さりげなく気を遣っているだけだ」
と感じた。
何よりも、
「気を遣われる」
ということが、子供の頃は一番いやだった。
というのは、
「気を遣われるということは、気を遣ってくれた相手にも、気を遣うことでお返しをする」
というのが、当たり前だと言わんばかりだからである。
「頼子は、いつも、自分を隠そうとしている」
という思いと、
「それなのに、気を遣おうとしている」
というのは、今までの知っている女性の中ではないパターンだった。
そもそも、
「自分を隠そう」
とするタイプの女性が、自分のまわりにいなかったからであり、それが、
「教団の家族」
というものの中にはいなかったのである。
学校のクラスメイトにはいたかも知れないが、そんな連中を、
「友だち」
であったり、
「仲間」
として認識していなかったことから、
「自分に対して、何かを隠そう」
と考える人はいないのだ。
というのは、
「隠そうとするくらいなら、最初から接触しようとは思わないはずだ」
と考えたからだ。
確かに、学校でも、
「露骨に近づこうとしない」
という人が結構いると思っていた。
それはそれでよかった。
「こっちも、必要以上に気を遣わなくていいからだ」
と思っていた。
そういう意味で、
「俺って楽天的なんだろうな」
と思っていた。
そう思わせてくれたのは、
「教団での家族たち」
というもので、
「教団の家族」
というものと仲良くできていると思えば思うほど、
「血のつながりのある母親とは疎遠になってきている」
と感じたのだ。
だから、
「高校生になると、教団を抜けたい」
と感じた。
「教団の家族」
との別れに関しては、そもそも、
「血のつながりがない」
ということで、
「教団から卒業」
と思えたからだ。
だから、
「卒業した」
というだけで、その後も、かかわりが消えるというわけではないと思ったからだ。
しかし、これが、
「血のつながりのある母親」
ということであれば、どうだろう。
教団に母親を残して出ていくということは、
「家族を見捨てる」
ということで、
「二度と家族として会うことはない」
といえるのではないだろうか。
それこそ、立場とすれば、父方の家族と同じだからである。
というのは、
「桜木の考え方」
というよりも、
「母親が絶対にそう思っているはずなので、会いに行っても、断れれるだけのことだ」
といってもいいだろう。
だから、桜木としては、
「教団から抜けるのは、最後の手段」
と思っていて、それこそ、
「母親を見捨てる」
ということになるのだ。
それを考えていたから、
「高校生になるまで、教団を抜けようとは思わなかった」
ということである。
「母親とあれだけ一緒にいたいと思っていたのに」
と後から思えば考えたが、それは、
「母親に甘えたい」
であったり、
「母親が好きだから」
ということではなかった。
「母親と一緒にいることで、父方の家族と一緒にいないで済む」
ということからであった。
正直、その時代、両親と桜木は、
「父方の家族と同居」
をしていたのだ。
昔でいえば、当たり前のことなのだろうが、娘とすれば、一つの考えがあった。
「たまに会うから、息子や子供にばかりひいきする」
ということになると思ったのだ。
「奥さんが、息子を一人占めにしている」
と考える男親が多いということは聞いたことがあった。
「お盆や正月に、旦那の実家で、家族が集まる」
というのは、昭和の時代には結構あったが、世紀末くらいでは、かなりなくなっているといわれていたが、
「実際には、まだまだある」
ということで、母親とすれば、たまったものではなかった。
父親は、四人兄弟の次男であった。
だから、本当であれば、
「親と同居」
ということをしなくてもいいのだろうが、長男が、商社マンということで、海外赴任というのが、頻繁だったという。
「単身赴任はしたくない」
というのが、おじさんの考え方だったことで、
「家族で、海外赴任」
ということだったため、実質、
「うちの家族が、父親の家族と同居」
ということになったのだ。
母親とすれば、
「そのうちに慣れてくるだろう」
と思っていたが、実際には、
「そうもうまくいく」
ということはなかったのだ。
それでも、
「ずっと一緒にいれば、悪口雑言もなくだるだろう」
と思っていた。
別居であれば、
「盆正月だけのことなので、そこまで気にしなくてもいい」
ということであったが、母親とすれば、
作品名:予知夢を見るということ 作家名:森本晃次



