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過去と未来の人類

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 というと、
「ええ、そうですよ。そのことはあなたが一番ご存じのはず。昔から、自分が自由に、自分の好きなことだけをして暮らしていける自分を、望んでいましたからね。さらにそこに、名誉であったり、満足感、達成感というものが生まれれば、それが最高のことだと思っていたはずですよね」
 という。
「まさにその通り。だから、余計に未来の自分を見てみたくなってやってきたというわけです」
 という。
「あなたのその選択が正しいか間違っているかということは私には何ともいえないですが、ただ、歴史としての正しい行為というわけではなかった。あなたが、過去から未来に来たというのは、本来であれば、私が帰ってこなければいけないものを違う人間。しかも、過去の自分が戻ってきたというのは、歴史的にはタブーなんですよ。だから、今あなたが見ている私は、本当のあなたではない。そもそも、時代を時系列に逆らうということ自体がタブーなので、その中のさらにタブーを犯すということになると、話はまったく変わってくるということです」
 という。
「つまりは、そもそもタイムマシンという発想自体が間違っていると?」
「いえいえ、そうではなく、人間は、いずれは、タイムマシンを開発することになるのが運命なんですよ。その運命を、正しいということにすれば、移動するというタブーはタブーではない。タブーのタブーが、普通のタブーということになるんですね」
 という、まるで禅問答のようだった。
「自分がこの時代にいるのは、間違いなんですか?」
 と正信が聞くので、
「そうだな。間違っているんだろうな」
 と平気な顔をして、正敏は言った。
 その顔は、まるで、何かを覚悟しているかのようであり、よくよく聞いてみると。
「わしはな。もうすぐ死んでしまうんだよ」
 というではないか。
 その時正信が思ったのは、
「未来というのは、自分の寿命が分かる世界になっているんだ」
 ということで、少し感動した。
 しかし、よくよく考えてみると、
「人間の寿命が分かるなんて、そんなの前にいた時代であれば、それこそがタブーではないだろうか?」
 と思った。
「自分の寿命が分かるなんて、面白くない」
 ということであり、もっといえば、
「自分の未来が分かることほど、面白くないということもないだろう」
 というものであった。
 正敏は、そのことを正信が考えていることが分かるのか。
「私がお前くらいの年の頃には、そんな発想になったことはなかったな」
 という。
「私が考えていることが分かるんですか?」
 と聞くと、
「お前の考えとしては、未来人だから、何かの機械を使って知ることができるとでも思っているんだろう?」
 ときかれて、半分は図星ということもあって、少したじろいだ。
 しかし、逆に。
「いえ、やはりあなたが、私の未来の姿だということなんだろうと思いました」
 というので、
「そうかな?」
 と正敏はにやりと笑った。
「人間というのは、便利になればなるほど、元々持っていた、本能であったり、野生の素質のようなものが鈍ってくる。いわゆる、退化してくるということになるんだろうな。だから、それを補うために、新しいものを開発し、それを進化として、退化を補おうとするわけさ」
 というので、
「それは分かる気がします。でも、実際に面と向かって言われると、何かが違う気がしてくるんですが、それも不思議な感覚ですね」
 というのであった。
「だから、人間というのは、いつもいたちごっこを繰り返しているわけで、退化するから、進化しないといけない。だから、文明が発達する。つまりは、他の動物のように、ゆっくりした進化のままでいいと思っていれば、こんないたちごっこを繰り返す必要などないわけさ。なまじ、頭脳が発達したことで、先に進化しようと思ったことで、退化が生まれた。だから、人間の進化というのは、その時点で、退化を余儀なくされたも同然なのさ」
 という。
「ということは、進化のスピードが落ちれば、退化するのみということですか?」
 と聞くと、
「ああ、そうだよ、実際にそれが今の時代といってもいい。そしてその時代は、お前がいた時代も、今のこの時代をも含んでいるわけで、どこまでが進化で、どこからが退化なのかというのは、分からないということさ」
 という。
「じゃあ、私の心が分かったというのは?」
 と聞くと、
「別に機械を使っているからでもなく、お前の未来の姿だというわけでもない。しいていえば、私の死期が近いからだといってもいいだろうな」
 というと、
「ああ」
 と、正信は悟った。
「確かに動物は、自分の死期が分かると言いますからね」
 というと、
「野生の動物で、自分の死に際を見せたくないという本能を持っている動物は、死期が敷かづくことを知るのが、当たり前のことで、それが本能ということだろう。ただ、これは、人間にも言えることで、人間が、本当に本能というものを、他の動物並みに発揮することができるのが、死期が近づいたこと時だということさ」
 という。
 その話を聞いた正信は、
「正敏さんの最期は、この私が看取らなければいけない」
 と思った。
「過去に行った、正敏さんに気の毒だ」
 と思った。
 そもそも、
「自分がこのまま過去に帰るということができるんだろうか?」
 というのも、一抹の不安であったが、考えてみると、
「今の俺は、自分がこの間までいた過去である、2000年という歴史をほとんど忘れている」
 ということで、当然ながらというべきか、
「生まれてから2000年までの記憶がほとんどなかったのだ」
 ということは、
「このまま過去に戻っても、自分が知っている人は誰もいないということになる」
 という、いわゆる、
「ウラシマ現象」
 に愕然としていた。
「過去の人間は、自分を知っているだろうから、もしこのまま戻った場合には、この俺は、記憶喪失者ということになるんだろうな」
 と思った。
 その時に感じたのが、
「それこそ、植物人間のようなもの」
 と感じた。
 人工の生命維持装置というものに頼らないだけで、過去に戻った自分が、どうなるのかということを考えると、
「戻る意味があるのか?」
 ということであった。
 本来であれば、
「過去に戻って、タイムマシンを、過去にいる正敏さんに返さなければいけない」
 というのが当たり前のことなのに、今、目の前で、死を覚悟している正敏さんを、裏切ってしまうことになりそうで、
「それだけは絶対にできない」
 と考えるのであった。
 ただ気になることとして、
「過去に正敏さんが残り、今の時代の正敏さんが、まもなく死のうとしている」
 ということを考えると、
「もし、正敏さんが、この時代に戻ってくると、元々、その存在がないと言われていた秘密結社の正敏さんに戻ることになるんだろうか?」
 ということであった。
 それを考えると、
「過去に行った正敏さん」
 という存在が何なのか?
 と考える。
 正敏という男の存在は、確かにこの時代にはない。
 目の前で死を迎えている人物は、実際には、
「過去にやってきた正敏」
 とは違う人間に思えて仕方がない。
作品名:過去と未来の人類 作家名:森本晃次