一感情全偶然
と思ったのだ。
その時出会ったのが、
「吉谷洋子」
という女性であった。
彼女こそ、
「今までで、一番好きだった女性」
ということになるのであったが、その時は、ハッキリとは分かっていなかった。
ただ、
「今まで知り合った女性とは違う」
という思いがあった。
最初は、その思いがどこから来るのかということが分からなかった。
しかし、分かって見ると。自分で納得がいったことであり、それが、
「一目惚れだった」
ということであった。
考えてみれば、今まで付き合った女性は。
「一目惚れ」
という人はいなかった。
それらすべてを、
「好かれたから好きになったんだ」
と思うようになっていた。
だから、今まで付き合った女性は、
「自分が好きになるよりも、先に相手が好きになってくれた」
ということで、よくいえば、
「相手に一目惚れをさせるタイプなのかも知れないな」
ということでの、
「自惚れ」
というのはあったのだ。
そういう意味で、
「好かれたから好きになる」
というのは、
「自分の個性」
ということであり、そのことは決して悪いことではないと思うようになったのであった。
だが、もう一つ考えたのは、
「今まで付き合ってきた女の子は、熱しやすく冷めやすいタイプなのかも知れない」
と思った。
「こっちが好きになった」
という時に、別れが襲ってくるということで、
「これはすれ違いなんだ」
と感じていたのだ。
ただ、
「それが間違いだった」
ということに気づいたのは、
「実は、離婚した時だ」
ということであった。
松島には離婚経験がある。
「吉谷洋子」
と別れることになってから、付き合った女、
「杉下さつき」
という女性と付き合ってから、順風満帆に、結婚というものに、ゴールインしたのであった。
さつきは、松島が、
「吉谷洋子」
という女性と付き合っていて、
「ずっと好きだったのに、別れなければならなくなって、いまだに落ち込んでいる」
ということを分かったうえで、付き合うことにしてくれたという相手であった。
さつきという女は、やはり基本は、
「おとなしいタイプの女性」
ということであったが、実際には、学生時代の友達などには、
「自分の方から主導権を握る」
というタイプであった。
考えかたもしっかりしているので、
「自分にも主導権を握ってくるのではないだろうか?」
と思っていたが、あくまでも、松島に対しては従順で、必要以上に、言葉を発しないというタイプだったのだ。
それで、松島とすれば、
「この女性は、自分だけ、他の人と違う」
という態度を取ってくれることから、いつの間にか、自分も惹かれているということが分かってきたということであった。
だから、それまで付き合ってきた女性にはない。
「相思相愛」
という感覚を初めて味わったのだ。
しかし、あくまでも、二人の関係は、
「男が前面に出ていて、女性は三行半」
という感覚であった。
それが、
「松島にとって一番いい」
ということであり、
「どうして今まで、こんな関係になったことがなかったのか?」
と考えてみたが、考えてみれば、
「初恋の人がそうだったような気がする」
と感じたのだ。
ただ、離婚の時というのは、そううまくいったわけではなく、最終的には、調停離婚ということになったのだが、それも致し方がないといってもいいだろう。
そもそも、
「嫁の異変」
というものに気づいていなかったわけではない。
「おかしい」
と思いながらも、自分に都合がいいように解釈するということになったのだ。
というのは、
「ある時から、女房は何も言わなくなった」
ということで、それまでは、
「他の人とは会話がなくとも、家庭内ではいつも楽しそうにしていた」
ということであった。
つまりは、
「誰にも言えないようなことを、俺には話してくれたのだった」
ということであった。
しかし、
「さつきが急に話さなくなった」
ということで、本来であれば、
「緊急事態」
ということであっただろう。
しかし、それを、
「何かあれば、話をしてくれるはず」
ということで、それこそ、
「便りがないのがいい知らせ」
という言葉のようなものだと思っていた。
つまりは、
「都合よく考えてしまった」
ということである。
つまりは、都合のいい考えたとすることで、嫁の態度、ある意味での、
「SOS」
というものを、察知できなかったということになるのだ。
おかしいということは分かっていて、勝手な解釈をすることで、近づこうとしなかったというのは、
「逃げの態度だ」
といってもいいだろう。
「どうして、そういう解釈になったのか?」
というと、
「それまでのさつきは、他の人に言えないことを自分に言ってくれていた」
つまりは、
「この世で一番話しやすいのが俺なんだ」
と思っていたのだ。
しかし、実際に話をしてくれようともせず、そばにいるだけで、緊張感が込みあげてきて、
「この世で、一番話しにくい相手」
という感覚になったことで、
「逃げるしかない」
と考えてしまったのだろう。
何とか説得にいったりした。
その時にいう言葉としては、
「お前と一緒にいた時楽しかったじゃないか。その時のことを思い出せば、怒りも消えるだろう」
というような話し方しかしなかったのだ。
「どうして、そんなにひどい状態になったんだ?」
と聞いても何も言わない。
その時すでに、さつきは、我慢できなくなったのか、
「実家に帰ります」
という手紙と、離婚届の半分を埋めた状態で、テーブルの上に置いて、実家に帰ってしまったのだ。
もちろん、松島は慌てた。
確かに、おかしいとは思っていたが、実際に行動を起こされると、
「まったく予期せぬ出来事が起こった」
と思ってしまうのだった。
そのために、すべてが、
「青天のへきれき」
ということになってしまい、
「自分が悪い」
という感覚がマヒしていたのだ。
つまりは、
「何かを考えているのであれば、旦那に相談しないのが悪い」
ということであり、
「相談もしないのに、何勝手なことをしているんだ」
という思いが、怒りに変わるのだ。
だが、実際には、
「何も言わない間に、彼女は自分なりに必死に考えていて、実際に手紙と離婚届を置いて出ていった」
というのは、
「すでに考えは決まっている」
ということなのだろう。
実は、
「離婚する夫婦でこのパターンは結構多い」
ということであり、
「特に女は、自分の考えを決して相手には言わないので、男だけが取り残される」
ということが多いというのだ。
結局は、
「男が取り残された」
といえば聞こえがいいが、実際には、
「わかってやれなかったということが、命取りであり、最初から逃げようとしているのだから、二人は、まったく別の方向を向いていた」
ということになるのだ。
だから、
「それまでは、一番は自分だ」
という自惚れがあったが、実際に歯車が狂ってしまうと、
「一番会話が成り立たない」



