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いたちごっこの光と影

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 という思いから、それまでの時間が、
「果てしなく長く感じさせられるであろう」
 ということを、ずっと考えさせられるという、
「恐怖よりも、気持ち悪さ」
 といった時間帯だったのだ。
 倒れている男は、仰向けに倒れていて、目は開いたままで、まともに見るのは怖いのだが、今までサスペンスドラマでさんざん見てきたという印象があるが、
「やはり、リアルは違う」
 という感覚だった。
 実際には同じなのかも知れないが、それ以上に、まわりの雰囲気ということで、
「鉄分を含んだ異様な臭い」
 というものが一番大きいのだが、
「あるはずがないと思っていた機械が残っていた」
 ということ、
「必要以上に鉄分の臭いがひどい」
 ということ。
 これは、廃工場の錆が混じっているからで、本来であれば、
「血の臭い」
 というものと、
「さび付いた鉄分」
 ということで、その臭いの質が違うということも分かっているので、その気持ち悪いと思われる二つがまじりあうことで、余計に気持ち悪さを演出していた。
 しかし、
「死体の臭い」
 というのは、実際に慣れている刑事でも、吐き気を催すということがあるというではないか。
 今回のこの死体も、おそらくは、
「それだけの吐き気があって、しかるべき」
 ということなのであろうが、実際にはそこまではない。
「感覚がマヒしている」
 といっていいのかも知れないが、それ以上に、
「異様な臭いが混ざり合ったことで、それぞれに、打ち消す相殺作用というものから、吐き気を催すということがなかったのではないか?」
 と思えば、複雑な心境になるのであった。
「きっと、この臭いは、しばらく身体から消えないだろうな」
 と感じ、本当なら、
「早く帰ってシャワーを浴びたい」
 と思った。
 通報した以上、いや、通報は義務なのでしないわけにはいかないが、どちらにしても、そこから逃げ出すわけにはいかない。
 そう思えば、
「死後どれくらい経っているか、素人なので分からない」
 と思うと、
「まさかとは思うが、これが経った今の犯行だった」
 ということであれば、
「犯人が、この付近に潜伏している」
 といえなくもない。
 ということから、恐怖がよみがえってきた。
 しかし冷静に考えれば、
「ここで犯行が行われたのであれば、物音がしてもいいはずだ」
 ということであった。
 これだけ機械があるのだから、もみ合ったとすれば、どこかに当たった可能性がある、ナイフを持っているのだから、金属音が響いてもいいだろう。そんなことを考えると、
「実際の犯行が経った今だった」
 という可能性は低い気がする。
 もちろん、
「死体の保存」
 ということで、警察がやってきて、鑑識作業の邪魔になるのは嫌だし、何よりも、
「指紋を残す」
 ということになると、
「犯人ではないか?」
 ということで、
「疑われないとも限らない」
 というのが一番怖いというものだ。
 だが、気になるのは、
「断末魔の表情」
 というのを証明するかのように、カッと見開いた両目である。
 まるで、この世への未練であるかのようで、そんな目で見つめられれば、身動きなど絶対にできないだろう。
 その目はしっかりと天井を見据えていて、犯人も、
「覚悟の犯行」
 ということであったろうが、さすがに、自分が手を下したというだけに、この恨めしそうな眼を見て、どう感じただろうか?
 それも、これが、
「衝動的な犯行」
 なのか、それとも、
「計画的な犯行なのか」
 によって、変わってくるといってもいいだろう。
 警察が来るまでの恐怖の時間、そんなことを考えながらいると、思ったよりも、時間が経つのが、あっという間のような気がするのであった。
「人間って、究極な場面に遭遇すると、根性が据わってくる」
 と聞くが、
「まさにその通りなのだろうな」
 と感じるのであった。
 そんなことをしている間に、遠くから、サイレンの音が、けたたましく聞こえてきた。
 それこそ、
「臨場感」
 というもので、
「いよいよか?」
 と緊張したものだが、今さら緊張しても仕方がない。
「逃げも隠れもしない」
 という言葉があるが、今の自分は、
「逃げも隠れもできない」
 ということで、
「俎板の鯉」
 というところであろうか。
 このあたりは、民家も少ないので、誰もこの明かりを気にしなかったのだろう。
「そもそも、この廃工場を昼間、誰が気にするというものか?」
 とも感じられたのだった。
 そう思うと、
「普段から、この廃工場は誰に気にされる」
 ということもなく、どちらかというと、
「路傍の石」
 のようなものに思われたのかも知れない。
 ここで、
「石の臭いを感じた」
 というのも、そういう意味では、ただの偶然ではなかったということになるのではないだろうか?
 確かに、自分がこのあたりの住民だったとしても、昼間歩いた時、この廃工場を意識はしなかっただろう。
 それこそ、今日のような臭いに誘われるということでもなければ、まったく無視していたといってもいい。
 それを思えば、
「臭いを感じる時は、ひょっとすると夜の方が多いのかも知れないな」
 と思ったのだ。
 そういえば、血の臭いということでは、昔の西洋の話に、
「ドラキュラ」
 というのがあるが、その正体を、
「コウモリ」
 ということである。
 コウモリというと夜行性で、
「目も見えない状態で、人里に出てくることもなく、ひっそりと、しっかげ漂う、鍾乳洞などの洞窟で暮らしている」
 ということだ。
 その逸話として、
「イソップ寓話」
 に残っている話しとして、
「卑怯なコウモリ」
 という話がある。
 この話は、
「鳥と獣が戦争をしているところに、コウモリが入ってきた」
 ということから始まるのだ。
 その時、コウモリは、獣に対しては、
「自分には体毛が生えているということで、自分は獣だ」
 といい、鳥に対しては、
「自分には羽根があるので、鳥だ」
 といって、都合よく立ち回った。
 ということであった。
 しかし、いずれ、鳥と獣の戦争が終わり、和解した時、コウモリの話が浮上し、双方から、
「あいつは卑怯なやつだ」
 ということで、鳥や獣から相手にされなくなり、結局、
「他の動物がいないところで、ひっそりと生活をするしかなくなった」
 ということになったという逸話だった。
 そもそもの、
「コウモリの生態」
 というものを見た時に考えられたストーリーなのだろうが、
「さすがに寓話」
 ということで、
「実際には、このようなコウモリの行動は、人それぞれの解釈で、毒にも薬にもなる」
 ということになるのだろうが、イソップ寓話においては、
「完全に悪だ」
 ということで糾弾しているといってもいいだろう。
 そんなことを考えると、
「昼と夜」
 というものの間には、人が考えるよりも、さらに違うものが潜んでいるといってもいいのではないだろうか?
 昼と夜の違いということで、考え方がいくつもあるが、数あるおとぎ話なのでは、
「昼と夜の違い」
 というものを、それぞれの神が争っているというような逸話にしているものもあったような気がする。
作品名:いたちごっこの光と影 作家名:森本晃次