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いたちごっこの光と影

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 その光が見えてくると思わず、寄ってしまうという、
「誘蛾灯」
 というものを感じさせられた。
 昔から、
「気持ち悪いものの代表」
 のように思っていたが、この時は、それ以上に好奇心が勝ったということになるのであろう。
 おそるおそる近づいていくと、その光が織りなす、
「影のコントラスト」
 から、工場の前の、舗装もされていない砂地が、まるで波打っているかのように波打ち際の影というものを映し出していたのだ。
 ゆっくりと中に入ってきた。
 さしがに、途中で、
「辞めればよかった」
 という後悔もあったが、
「ここまできたのだからやめられない」
 と感じたのは、自分が、
「ほぼ中に入り込んだ」
 と考えたからだ。
「百里の道は九十九里を半ばとす」
 という言葉があるように、実際には、まだまだあったのであった。
 それを自覚できなかったという理由は、
「一度も後ろを振り向かなかった」
 ということからで、
「後ろを振り向くと、何かがいるかも知れない」
 ということで振り向かなかった。
 それを後で思い出すと、
「振り向かなかったのは、自分が臆病の境地だったからなのだろう」
 と思ったが、ずっとその思いは消えることはなく、
「これから、また同じことがあったとしても、同じことを繰り返してしまうに違いないだろうな」
 と感じるのであった。
 最初は臆病風からか、耳に音はまったく入ってこず、ただ、
「風が耳の奥を通り抜けるだけ」
 と思っていたが、実際に近づいてくるうちに、音を感じるようになった。
 最初は、
「草木が風でそよぐ音」
 であった。
 しかし、風情のあるというものではなく、
「何も聞こえないという恐怖を、少しだけでも和らげてくれる」
 というだけのことのように感じたのだ。
 完全に腰が曲がり、おじいさんにでもなったかのように前に向かって歩いていたが、気持ちは、
「前のめり」
 ということであった。
 ただの、恐怖心を和らげるためということであったが、歩いているうちに、何やら覚悟がきまってきたかのように感じるのだった。
 覚悟といっても、魑魅魍魎に囲まれるかのような覚悟ではなく、
「何か、想像を絶するものを発見するのではないか?」
 という思いであり、覚悟が定まっていくうちに、
「それが何なのか?」
 ということを想像できるのではないか?
 ということであった。
 実際に、覚悟がきまってくると、前のめりになった足が自然と早くなってくることを感じ、途中から、あっという間に、明かりがする方に近づいたようであった。
 中を覗き込むと、昔の機械が、いくつか放置されていた。
 実際に、稼働して、工場として機能するには、あまりにも少ないのだが、
「廃工場になっている」
 ということで、
「そこには機械という機械は一切ないだろう」
 と思っていたので、意外といえば意外だった。
 だから、機械は光に照らされ、幾種類かの影を作っていたのだ。その影を確認しながら、機械と照らし合わせてみていた。
「恐怖心がハンパない状態で、よく冷静に見れるものだな」
 と感じたのだが、
「何も感情と感覚はいつも比例しているとは限らない」
 と感じた。
 やはり、どこか気持ちは究極に向かっていて、恐怖にも結界があるようで、その血気に近づけば、見ることはできないまでも、感じるということはできるというのではないだろうか?
 そんなことを感じていると、一歩一歩と、前に進んでいる自分を感じさせられたのであった。
 こういう光景を見ると、ホラー小説などでは、
「今にも動き出しそうな機械たち」
 という表現が出てくるのかも知れない。
 しかし、そんなことはなかった。
 どちらかというと、
「空気という海原を感じる」
 という感覚で、相変わらずの湿気の多さが、気圧の濃さのようなものが感じられ、それこそ、
「水中にいる」
 と思わせる。
「逃げようとしても、足が思ったように動かない。全身で泳ごうとしても、まったく前に進まない」
 という感覚である。
 だから、最初は、この不気味な中に前のめりになり、前だけを見て進んでくると、
「次第に、スピードが速くなってきている」
 と感じるようになった。
 それは、別の感覚へのカモフラージュのようなもので、
「歩くスピードが速くなったわけではなく、時間の感覚が想像している以上に、早かったのではないか?」
 と思えるのだ。
 恐怖心があると、実際よりも、
「なかなか時間が過ぎてくれない」
 と感じる。
 それは、恐怖心だけではなく、
「自分がいやだと思ったり、好きではないと感じたりした」
 という時に感じる感覚ではないだろうか。
 しかし、途中からは、感覚が変わってきた。
「覚悟が定まってきた」
 というのもその理由なのだろうが、それ以外に、
「そこに何があるのか?」
 ということが、ある程度定まってきたからであろう。
 ただ、それも、
「いくつかの種類」
 というものがあり、
「最悪でなければいいな」
 という思いからであった。
 しかし、実際に、廃工場で見つけたものは、
「最悪」
 というものであり、少なくとも、その場から、
「見なかったことにしよう」
 ということで立ち去ることができなくなったからである。
 もし、ここで、
「何もなかったこと」
 ということで立ち去ると、それだけで罪になる。
 最悪は、
「警察から最悪の容疑を掛けられ、普通に生活ができなくなる」
 というものであった。
 実際にそれを見た時、腰を抜かしてしまった。
「この場から立ち去りたい」
 という思いはあったが、立ち去ってしまうと、その方が自分に不利だということを、なぜか冷静に感じたのだ。
 手元にあるスマホから、
「110番」
 を掛けた。
「事故ですか? 事件ですか?」
 と言われ、どちらとも分からないので、とりあえず、
「廃工場で、人が死んでいます」
 といって、後は相手に誘導されながら答えたのだが、あまりにも気が動転しているということもあって、ハッキリと答えられたかどうか、自分でもよく分からなかった。
 ただ、ハッキリと覚えているのは、
「短髪で、黒いカッターシャツを着ていた」
 ということから、
「普通の仕事をしている男ではないかも?」
 という思いであった。
 まるで、昔のやくざ映画にでも出てくるような、
「チンピラ風」
 に感じた。
 しかし、冷静に考えれば、
「チンピラというと、昔ならアロハのような派手な服を着ている」
 と思った。
 だから、この男は、
「もう少し上ぼ立場の、何かの構成員かも知れないな」
 と感じた。
 ただ、
「カタギということではなさそうだ」
 と感じた。
 ちなみに、この死体発見という場面の主人公で、警察に通報したという、
「第一発見者」
 という立場の人間は、
「水谷良平」
 という男で、彼は今、
「警察に通報した」
 ということで、警察が来るのを待っている立場だった。
 さっきまで一人であったが、一人であることの恐怖をそこまでは感じなかったのに、警察を呼んでからの一人のこの時間は、
「本当の恐怖を味わっているようだ」
 と感じ、
「早く来てくれないか?」
作品名:いたちごっこの光と影 作家名:森本晃次