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いたちごっこの光と影

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「クラスで委員を決める時も、いつもまわりから、名前を挙げられていたんですが、最初は、面倒なことを押し付けられても、いやだとは言えない子供なのかと思っていたんですが、それ以外でも、必ず最初に彼の名前が挙がるんですよ。しかも、実際にやってみると、まわりの期待に見事にこたえるんです。実際に、才能もあるんでしょうが、努力もハンパないといえる子供ではなかったかと思うんですよ」
 というではない。
「それこそ、片桐君には、まるで後光がさしているといってもいいのではないかと思うほどだったですね」
 と付け加えられた。
「じゃあ、自分から目立とうとしなくても、自然と目立ってしまうというタイプだったわけですね?」
 と樋口刑事がいうと、
「ええ、まさにその通りですね。でも、彼には、カリスマ性が確かにあったんですね。だから、途中から、まるで教祖のような存在になっていた気がします」
「教祖というと、あの宗教団体などにある?」
「そうですね。そういう意味で、カリスマ性があったとわざと言ったわけで、彼を慕う人はかなりいました。彼も、それにこたえようと頑張っていたので、彼の高校時代は、褒められることはあっても、決して人から非難されたり、悪い生徒だったなんていう人は、きっと誰もいないと思いますよ」
 という。
「死んだ人にムチ打つ」
 ということで、殺された人の悪口をいう人はあまりいないだろう。
 しかし、これが、
「殺人事件で。しかも、殺されたのがその本人」
 ということで、
「そのことで、警察が訪ねてきた」
 という場合は、本当に、
「ワル」
 ということであれば、
「死んだ人を悪く言うのは忍びないが」
 といいながら、客観的な事実だけを話してくれるという場合が結構あるのではないだろうか?
 しかし、この高校でも何人かに聞いたし、実際に、
「卒業生の中の彼を知っている人」
 ということで数人に尋ねてみたが、確かに彼を悪く言う人は、一人もいなかったのである。
「そんな男が十数年経って、今では、
「チンピラ」
 あるいは、
「やくざの構成員」
 というものに成り下がった。
 ということで、実際には、
「高校時代とは正反対だった」
 といえるだろう。
「一体彼に何があったというのか?」
 と、樋口刑事は、殺人事件の捜査もさることながら、この、
「片桐」
 という男に興味を持った。
 そういう意味で、やつの卒業後を探ってみることにしたのだった。
 最近の1年くらいは、捜査本部の方で結構調べていたので、詳しく報告されていた。
「ここ最近の彼は、表立って何かがあったということはなかったようですね。ただ、今はすっかりカタギとなったといわれる、やつがかつて所属していた組での彼の立場というのが、闇の仕事人と言われていたようで、そう簡単には、彼が何をしたのかということは、分からないということでした」
 という報告だった。
 当然捜査本部としては、
「そのあたりをもっと詳しく調べてくれ」
 ということで、
「少し範囲を広げて調べる」
 ということになったのだ。
「範囲を広げる」
 というのは、面積ということではなく。行動範囲という意味であり、そのことは、さすがに、捜査一係の、本部の人間には、ツーカーで分かっていたようであった。
 ただ、しょせんは、
「時代をさかのぼる」
 という捜査方法で、樋口刑事は、頭の中で、
「これは、時代をさかのぼるのではなく、時系列に沿って調べる必要もあるだろう」
 と考え、捜査本部の中の、門倉警部に願い出て、
「独自捜査」
 というものの許可をもらったのだ。
 これには、
「現場の責任者」
 という立場にある、
「桜井警部補」
 も、一緒に願い出たからだった。
 門倉基部と桜井警部補はかつては、名コンビと言われ、ずっと、K警察署で、君臨してきた、いわゆる、
「捜査本部の両輪」
 といわれていただけに、その力は絶大だといってもいいだろう。
 しかも、そもそも、
「時系列での捜査」
 という意見を最初に提案したのが、桜井警部補だったのだ。
 その意見に対し、
「私もまったく同意見です」
 と目を輝かせたのが、樋口刑事であった。
 だから、桜井警部補も自分の考えに自信を持ち、それを樋口刑事に実証させるということを考え、捜査本部長である、門倉警部に願い出たのだった。
「ひょっとすると、門倉警部も同じ発想なのかも知れない」
 と思うほど、桜井警部補の意見は、
「二つ返事」
 で承認されたということであった。
「ただ、捜査本部の規律という意味で、そちらの捜査は極秘で行ってほしい」
 というのが、門倉警部の話であった。
 つまり、
「何かあったら、責任は門倉警部にいく」
 ということであったが、これまでの捜査本部内で、たびたび、極秘捜査というものが行われていたということで、
「樋口刑事は、たまにその任についていた」
 ということであった。
 元々は、
「桜井警部補の、刑事時代の仕事だった」
 というもので、この操作方法は、昔から、
「K警察署の専売特許」
 といってもいいかも知れない。
 そういう意味で、K警察署は、
「はぐれ警察署」
 といえるのではないだろうか?
 そういう意味で、樋口刑事の捜査は、
「上からの指示」
 ということで動きやすかった。
 最初に高校時代からあたるというのは、正解だったようで、さすがの樋口刑事も、
「あの片桐が、高校時代、正義のカリスマ性というものを持っていた」
 ということには驚かされた。
 となると、問題は、
「やつがどこで、持っている正義のカリスマ性というものが、悪に変わってしまったのか?」
 ということである。
 片桐は、高校を卒業すると、東京の大学に進学した。
「経済学部」
 ということで、本人とすれば、
「無理ではないか?」
 と思っていたのに、學校の先生が、
「お前なら大丈夫」
 ということで、半ば強引に試験をうけ、合格したのであった。
 ただ、それが悪かったのか、大学進学後、まわりの学生の悪影響を受けて、
「ほとんど勉強をしない」
 ということで成績は鳴かず飛ばず。ただ。彼には、
「悪知恵」
 というものが身についたようで、それを街の組織が目を付けたということであった。
 実際に、
「自分を制御できない」
 というところまで来ていたという。
 そんな風にしたのは、普段いくスナックだった。
 友達に連れてこられたのだが、そのスナックは、裏で組織とつながっていたということであった。
 そもそも友達自体が、チンピラのようなやつで。夜の世界を知らない片桐が、
「コロッと騙された」
 というのは無理もないこと、
 チンピラにそそのかされる形でスナックに通うようになると、相手も、
「あの手この手」
 で、片桐もまわりを固めていく。
 そういうことにかけては、大学生の青年で、まだまだ田舎者の雰囲気が抜けていない片桐には、
「いちころだった」
 といってもいいだろう。
 しかも、組では、
「オンナ」
 も用意していたようで、
「色仕掛けで蹂躙し、さらには、あまり表に出ないような、軽めの違法薬物によって、市バレていく」
 ということになっていったのだ。
「典型的な転落人生」
作品名:いたちごっこの光と影 作家名:森本晃次