小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

質より量

INDEX|5ページ/15ページ|

次のページ前のページ
 

 と思うようになると、少しずつ、事態を大きく感じるようになってきたということであった。
 だから、
「まさか、殺人事件?」
 と思うようになる前は、
「強盗でも入ったのかな?」
 と思った。
 その前は、
「空き巣か?」
 ということであったが、その一つ一つ、それぞれに、重大なことだといえるのではないだろうか?
 だが、まさか、これが、
「最悪の結果になっている」
 とは思ってもいなかった。
 内容としては、
「母親だけ一人でいた家に、強盗が押し入り、母親に切り付けて、結局は何も取らずに、逃げていった」
 ということであった。
 母親は救急車で地位核の病院に運ばれ、
「重症だ」
 ということであるが、
「命に別状はない」
 ということで、事なきを得たと思っていた。

                 パトロン

 しかし、警察としては、
「しばらくは、絶対安静」
 ということで、取り調べはできないと聞かされて、少し困惑しているようだった。
 しかし、それを、被害者家族に知られるわけにはいかない。
「警察は、被害者のことよりも、事件解決だけを重要視している」
 と思われるのがいやだということであろう。
 確かに、
「面会謝絶状態」
 ということであるが、家にいても、
「被害現状に一人でいる」
 というのも、気持ち悪いので、洋二は、その晩は、
「病院に付き添う」
 ということにしたのであった。
 実際に、家では、
「現場検証が行われていて、少しの間、立ち入り禁止」
 ということになったのだ。
「明日には、おうちに帰れますよ」
 ということを言われたが、洋二とすれば、
「まったく何があったのか?」
 ということで、朝になっても、
「何がどういうことになっているのか?」
 ということで、
「現実を受け入れることはできない」
 と思っていることであろう。
 事情聴取というのも、
「現場にいたわけではない」
 ということで、どちらかというと、家族関係であったり、
「犯人に対しての心当たり」
 ということであった。
 それを聞いた時、
「警察は、強盗犯を、行きずりと考えているわけではなく、身内や母に恨みを持っている人が行った」
 と考えているのだろうと感じた。
 しかし、実際には、今のところは分からない。
「きっと、両面から考えているんだろうな」
 ということであった。
「母親が母子家庭で、夜はスナックに勤めている」
 ということで、最初に考えたのは、
「スナックの客が、母親に恋愛感情を抱き、告白したのを断られたことでの犯行」
 というのも考えられなくもないと思えた。
 しかし、それは、あくまでも、
「子供が感じること」
 ということで、大人は、
「もっと、露骨なことを考えていた」
 というのは、
「母親が務めているスナックには、恋人がいる」
 ということを決めつけているようだった。
 被害者は、
「バツイチ独身」
 なので、相手が独身であれば、
「不倫ということではない」
 といえるが、相手が、
「妻帯者」
 ということであれば、不倫ということになる。
 ということだ。
 別れ話のもつれ」
 というものから、最初は言い争いだけだったが、誤って殺してしまったと犯人が考えたとすれば、
「金目の物を物色し、強盗犯と見せかける」
 ということも考えられなくもない。
 もっとも、
「母が生きている」
 ということで、犯人の目論見は逆になり、実際には、強盗でもないのに、
「強盗容疑を掛けられる」
 ということになるかも知れない。
 刑事は、その推理に関して根拠がないので、
「へたをすると、犯人が、被害者の息の根を止めにくる」
 というところまでは考えていなかったようだ。
「息を吹き返して、証言されれば、俺は、強盗犯」
 ということになるからだ。
 ただ、実際に、
「痴情のもつれ」
 であるという証拠はない。
 とりあえず、
「彼女の務めている店で聞き込みだ」
 ということで、刑事が聞き込みに行ったのだった。
 そこのママさんは、
「母親のことを、働く前から知っている」
 ということで、彼女が、
「息子が塾に行くのでお金が足りない」
 ということで、相談に来た時、
「じゃあ、ここで働けばいい」
 ということで、実際に、そこまで厳しいことは一切言わず、
「彼女のために」
 という意識が強いのか、それだけ、
「彼女を信頼している」
 ということだったのだ。
 というのも、実は、ママさんは洋二のことも知っていた。
 元々、ママさんが店を開く前、同じ会社で勤めていて、
「母親が、結婚を機に会社を辞めた」
 という時期から数年後、
「ママさんも、自分の店を持つ」
 ということで、会社を辞めたのだった。
 彼女には、会社の付き合いで、
「うまくパトロンを掴んだ」
 ということで、店を始めることができたのだが、パトロン以外に、
「遺産相続によるものが大きかった」
 というのが、一番であろう。
「遺産相続に関しては、皆の知るところだ」
 といってもいいが、
「パトロンの存在」
 というのは、それこそ、
「母親を含めた親友といえる人しか知らない」
 ということなのであった。
 実際に、遺産相続でもった店だったが、
「パトロンというのは、お金だけではなく、その人の存在そのものが、大きな力になる」
 ということで、それだけ、ママさんとパトロンとの間の人間関係は密接だったといえるだろう。
 もちろん、
「肉体関係は当然のごとくあっただろう」
 そして、
「駅前のマンションを与えられ、そこで囲われる」
 という形になったのだ。
「昭和の頃からよくある関係」
 といってもいいだろう。
 だから、母親も、
「遅くなった時は、うちに泊まっていってもいいからね」
 といわれていたようだった、
 しかし、実際には、泊まってくることはなかったという。
 確かに、
「息子は食事も摂ってくるし、帰ってくればあとは寝るだけということだから、泊まってもいいんだろうけど、それは、自分としてはしたくない」
 というのであった。
 その理由として、
「朝からお弁当を作る」
 ということであったが、実際には、それだけということではないのであった。
 息子の方とすれば、
「別に一日くらい弁当がなくなって、関係ない」
 と思っていて、むしろ、
「たまには、学食で食べるのも新鮮でいい」
 とばかりに、
「暖かいものが食べたくなるよな」
 ということであった。
 それを母親に、ちょくちょくいっているので、母親も分かっているはずなのだが、逆に母親としては、
「息子がそんな風に思っているのであれば、私も意地になる」
 という気持ちでいたのも、事実であった。
 ただ考え方として、
「他の誰にも、母親としての立場であったり、場所を奪われたくない」
 という気持ちの表れということであろう。
 そのことは、
「母と子の間」
 でしか分からないことであり、警察の捜査には、
「そんなことはまったく関係のないこと」
 ということで、
「どうでもいいことだ」
 と思われていたのだった。
 ママさんへの聴取とすれば、当然のことながら、
「誰か、付き合っている人はいないか?」
作品名:質より量 作家名:森本晃次