質より量
「塾と店の延長線上に、駅がある」
というところに決めていたのだ。
ドライブイン形式のファミレスで、
「最近は、少し減ってきた」
といわれる、
「24時間営業のファミレス」
だった。
実際に、
「駅に近い」
ということであったり、
「国道沿い」
ということで、いつも駐車場は満車だった。
それでも、なぜか中に入ると、席が満席というほど多いわけではない。
というのも、
「近くに住宅街がある」
ということで、
「短い時間だったら」
ということで、ここに停めて、住宅街へ訪問する人もいるようだ。
とはいえ、住宅街にいくのだから、
「短い時間」
というわけにいくわけもない。
それよりも、
「結構たくさんの人が停めている」
ということで、
「これだけいれば、自分一人くらい分からないだろう」
とみんなが思うことで、一種の、
「相乗効果」
ということになるのだろう。
決して、いい傾向というわけではないが、店としても、
「流行っているように見せる」
という一種の、
「サクラ」
というイメージからか、必要以上に、違法駐車ではありながら、何も言わなかったのだ。
とはいえ、これも時間帯によるもので、
「ほとんど客がいない時間帯」
ということであれば、
「あからさま」
と考え、警察に通報するということも結構あったりするようだ。
だから、交番あたりもよく分かっていて、
「私たちも、この時間を重点的に見てみることにしましょう」
という話をしていた。
というのも、
「以前からこのファミレスの駐車場で、問題が起こっている」
ということがあったのだ。
一時期は、深夜の時間帯に、
「車上荒らし」
というものがあったり、
「違法駐車が長いので、調べてみると、廃車にするしかないような車を放置する」
というようなものであった。
どちらにしても、警察としても、放ってはおけないということで、
「交番の見回りを強化する」
ということにしていたのだ。
それを思えば、
「違法駐車というものは、警察に任せておけばいい」
と、いうことになり、
「店は警察に協力する」
ということで、結局、
「普通の違法駐車で、しかも、客の多い時間」
ということであれば、
「別に問題にしない」
ということになったのだ。
へたに問題にしようとしても、
「毎回同じ車とは限らない」
ということで、それこそ、
「自宅の駐車場替わり」
ということでもない限り、
「警察も関わることもできない」
といえるからだった。
その日は、車も相変わらず多く、ちょうど食事をする時間は、満車に近かった気がした。
いつものように、食事を食べていると、その表から一人の男が、文句をいいながら、
「ウエイトレスの女の子」
に、詰め寄っていた。
女の子は、どこか、困惑した様子で、
「少々お待ちください」
ということで、店長を呼びに行ったようだった。
そして、店長が出てくると、二人で、表の駐車場に出ていくのが見えた。
その男は、思ったよりも、背が高い男性だったので、身長が、180?はあるのではないだろうか?
やせ型で、髪型は、おかっぱぽい感じの、どちらかというと、
「坊ちゃんタイプ」
ということで、洋二には、印象深い人だったのだ。
それとなんといっても、
「塾の講師の一人と似ている」
ということから、
「この人の顔は、そう簡単に忘れることはないな」
と思ったのだ。
もちろん、それが、塾の先生ではないことは分かり切っていた。
そもそも、塾の先生は、身長は人並みで、目立つのは、顔と雰囲気だけということだったのだ。
それを思えば、
「坊ちゃんというのは、人に覚えられやすく、目立つものだな」
と感じた。
だから、
「きっとこの場面を見た人は、皆その人の印象を、そう簡単に忘れるということはないだろうな」
ということであった。
表に出ると、どうやら、もう一人の誰かとトラブルになっているようで、気になって表に出てみると、どうやら、
「警察を呼びますか?」
と店の人がいうのを、なぜか、二人とも、
「警察はいいです」
といっているようだった。
一人は、
「警察を呼ばれると困る」
と思ったとしても、もう一人は、
「警察にけりをつけてもらいたい」
と思うだろう。
それなのに、二人とも呼びたくないというのは、どういうことなのかと考えるのであった。
ただ、一つ言えるのは、
「事故処理が必要」
ということではないということだ、
だが、さらに聞いてみると、接触したのは間違いないようで、一人が、
「これは修理代」
ということで、数万円を相手に渡しているのが見えたので、
「保険を使う」
という意思がないのか、それとも、
「警察に連絡されるのがまずい」
というのかということだ。
しかし、人身ではない接触事故ということであれば、民事の問題なので、確かに、
「事故証明」
というものがなくてもいいのであれば、
「別に警察を呼ぶ必要はない」
ということを、誰かに聞いたことがあった。
「免許所を持っているわけではないので、これ以上詳しいことは分からない」
ということで、洋二は、そのまま、店の中に入っていったのであった。
その時の、
「この目撃」
というのが、この後の展開で、重要な意味を持つということになるのであった。
ちょうどそれが、食事が運ばれてきて、食事を始めたという頃のことだったので、ちょうど、
「午後九時すぎくらい」
ということであった。
「食事をしていた」
ということから考えて、その時間だというのは、
「乗った電車が、10時過ぎだった」
ということから逆算して考えたことだということからも、
「間違いない」
と思えるのだった。
ただ、乗った電車が、
「午後10時過ぎ」
ということは、
「普段よりも、30分くらい遅い」
ということを意味しているのであった。
実際に、電車に乗って家の近くまで来た時、
「いつもよりも、30分は遅いな」
と思ったからであった。
だから、家の近くにくるまでは、
「お母さんから何を言われるか分からない」
ということで、いつも遅くなった時のように、
「なんていいわけをしようかな?」
と考えていたのではないだろうか。
後での供述がそうだったのだ。
実際に家の近くまで来てみると、何やら喧騒とした雰囲気が感じられた。
数台のパトカーが来ているということなのか、
「普段は、夜の静寂に包まれた状態の、閑静な住宅街」
であるにも関わらず、パトランプが、クルクル回っていて、
「まるで、殺人事件が起こったかのようだ」
と、最初は他人事だった。
しかし、近づいてみると、警察が入っているのは、
「自分の家」
ではないか。
すぐに、
「お母さん」
と思い、家に入った。
確かに、
「母親の安否が心配」
ということであったが、それ以上に、
「厄介なことに巻き込まれたくない」
というのが本音だったのだ。
だから、
「何かがあった」
ということは分かっていたが、
「最初は、大したことはない」
という発想から、次第に、
「そうではない」



