質より量
そして、その理由というのは、
「犯人を捕まえなければ分からない」
ということから、
「捜査の優先順位」
というものを間違えると、大変なことになるということであろう。
だから、
「本部が出張ってきたのだ」
といってもいいだろう。
そんなことを考えると、
「今回の事件では、どうしても、違和感というものが抜けない」
と考えると、
「違和感から、事件を見る目」
というのも、大切になってくるということではないだろうか?
そんなことを考えると、
「被害者の身元は分かっているだけで、それ以外のことは、ほとんど分かっていない」
というのが、
「初動捜査における状況だ」
といえるだろう。
それにしても、
「町工場に死体を遺棄する」
というのもおかしなことだ。
そもそも、
「死体を動かす」
ということの理由とすれば、
「その場所で犯行が行われた」
ということであれば、容疑者に、
「アリバイがある」
ということを演出するというのが目的ではないだろうか?
あるいは、
「山の中に埋めてしまったり、海に捨てたり」
などということで、
「死体が発見されない」
という方法で、いずれは発見されるということで、
「死亡推定時刻」
であったり、
「本人確認を曖昧にする」
ということから、
「アリバイトリック」
であったり、
「死体損壊トリック」
などというものに利用するということであれば、分からないでもない。
しかし、今回は、工場に遺体をそのまま放置し、
「簡単に、ここで殺害されたわけではない」
ということが分かるようにしたというのは、解せないことである。
となると、
「一番考えられること」
としては、
「死体を遺棄した場所で、犯人が誰かということを暗示させる」
ということである。
死体が、誰かの家の前に遺棄されていれば、
「誰もが、家の住人が犯人だ」
と思うことだろう。
しかし、あからさまに放置されていれば、
「何かおかしい」
という違和感を抱くに違いない。
今回のように、
「あたかも、ただ放置している」
ということであれば、そこにどんな目的や意図があるというのか、それこそが違和感といってもいいだろう。
動機
家に強盗が入ったことで、母親が殺されかけた坂田洋二であったが、最初こそ、
「大変なことになった」
ということであったが、母親も次第に回復しているようで、
「盗まれたものというのも、ほとんど大したものを盗んでいったわけではない」
ということで、とりあえず、
「事なきを得た」
ということであった。
ただ、そうなると、警察からも、
「これは、強盗に見せかけた殺人未遂事件ではないか?」
という疑いもあるということで、こちらも、捜査本部ができて、やはり、
「本部が出張ってきている」
といってもいいだろう。
ただ、この事件、実は、
「被害者が夜勤めているスナックで、怪しい話を聞きこんだ」
ということからであった。
その話は、どうやら、犯行計画に近いものであり、ただ、あくまでも、
「ミステリー小説を書くネタだった」
ということで、話をしていた二人は、
「ミステリー同好会に入っている大学生だった」
というのだ。
さすがに、最初こそ、
「ひそひそ話」
であったが、白熱して、話が佳境を迎えると、結構声が大きくなってきたということだったので、ママが見かねて、
「お客さん、それは、小説か何かのお話ですか?」
と聞いたところ、
「僕たち大学の、ミステリ同好会に所属しているんですよ。今度同人誌に載せる作品を練っていたところだったんですよ」
というのだった。
ただ、その時聞こえてきたワードに気になるところがあった。
一つは、
「町工場」
というのと、
「パトロン」
ということであった。
時代背景は、
「高度成長期に端を発する」
ということで、
「当時は町工場というのがたくさんあり、好景気から、パトロンになったり、愛人を囲う」
などということが結構あったということであった。
「あの頃の社会派小説を書きたいと思ってですね」
といっていた。
「僕の場合は、トリックや謎解きという、本格派の推理小説を書きたいと思っているんですが、こいつは、社会派を考えているんですよ」
といっていて、それがお互いに、切磋琢磨しているようで、
「まったく違った視点ということなんですけど、最後には、同じところに着地する」
ということを、
「自分たち、それぞれに考えていたんだけど、少し話をしてみると、それが意外と奥深いところにあるようで、ミステリーというものを考える中で、お互いの意見交換だったり、発想の共有というのが大切だと思うようになったんです」
と言っているのであった。
ただ、この二人の大学生の先輩に、
「坂田洋二がいる」
ということは、その時は知らなかった。
そう、店のホステスをしている坂田やよいの息子だったのだ。
今は、肝心のやよいが、
「強盗に入られて、重症で入院中」
ということで、事件が起こってから、2,3日は、店を休業ということにしたが、さすがに、ママとしても、
「店を閉めておくわけにはいかない」
ということで、開店することにした、
「臨時の女の子」
ということで、ママさんのパトロンである男性が女の子を調達してくれたことで、店を開けることができるようになったのだった。
それが、今度は、
「パトロンの側で、こっちにかまっていられなくなった」
というのだ。
というのが、実はこの店のパトロンというのが、今回死体が発見されたという町工場の社長だったからである。
「偶然といえば、偶然である」
この事件は最初に、
「店のホステスである坂田やよいが、家で強盗にあったということから始まった」
ということである。
やよいは一命をとりとめたが、実際に、調べが進むうちに、
「本当に、強盗なのだろうか?」
という疑念が出てきた。
それを捜査している間、今度は、やよいの店のパトロンの工場に、
「死体が遺棄される」
という事件が起こったということだ。
それを、本当に、
「偶然だ」
といってもいいのだろうか?
しかも、今度の事件にも、
「違和感」
というものがあり、
「殺されたのは別の場所で、後からここに運ばれた」
ということが、簡単に分かるということであった。
しかし、
「死体を動かすメリット」
として考えられることの中に、
「町工場で死体を遺棄する」
という意味がまったく分からないということで、
「謎だけが残った」
といってもいいだろう。
そうなってくると、
「本当にこの二つは偶然なのだろうか?」
と考えられるようになり、
「どこか、連続性のようなものが考えられる」
ということになるだろう。
それが、今回の事件における謎というものがあるとすれば、
「その動機にあるのかも知れない」
と思ったのは、
「今のところ、どちらの犯罪に関しても、犯人像が浮かんでこないことから考えて、動機も浮かんでこない」
ということから、



