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質より量

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 ということになり、
「秩序もそれによって、自然と守られる」
 ということだっただろう。
 しかし、
「権利」
 というものを、あまりにも全面に出しすぎると、
「個人主義」
 という考え方から、
「秩序」
 というものが、うまくいかないということになる。
 要するに、
「守るべきものの優先順位」
 というものが分からなくなると、主義というものが見えてこないということになるだろう。
「国家があって、家族があって、個人がある」
 どれも大切なものであるが、それを均等に守ろうとすると、無理があるわけで、それぞれに、
「権利、義務」
 というものを与えることで、
「守るべき優先順位」
 というものが、自ずと分かるというものであろう。
 家族間というのは、そういう意味でも難しい。
「個人個人、正確が違う」
 というのと同じで、家族間で、違うのは当たり前、ただ、それを、
「家族だから」
 といって、
「親が子供に押し付ける」
 ということがあっていいのだろうか?
 親としては、
「秩序を教える」
 という教育のつもりなのだろうが、子供が理解もしていないのに、無理やり押し付けることで、
「親や大人に対して反発する」
 ということになると、家族間が、
「取り返しのつかないことになる」
 ということであれば、
「本末転倒だ」
 ということになるのではないだろうか?
 そんな真一も、今年で、23歳になった。
 まだまだ、結婚する年でもなく、彼女がいるわけではないので、
「親の気持ちなど、分からない」
 ということで、成人してからも、結構意見の相違で、衝突していた。
 ただ、中学時代のように、
「親の言いなり」
 というわけではなかった。
 ただ、大学生になったことで、
「大人の意識」
 というものを自覚できるようになり、
「父親に反発しても、大人としての意見で話をしているのだから、こっちも、口では負けていない」
 と思っていたのだ。
 だから、
「口喧嘩」
 というものでは、負けるわけはないとまで思っていて、それこそ、
「親の意見というのは、ただの頑固爺の言い訳だ」
 としか思っていなかったのだ。
 それこそ、
「老いては子に従え」
 とばかりに、感じていたということである。

                 違和感

 父親の死体が発見されたのは、不思議なところからであった。真一の父親が務めている会社は、
「町工場に工場機器を収める商社に勤める営業」
 だったのだ。
 会社はそこまで大きなところではなかったが。さすがにこの時代になると、
「町工場」
 なるものは、どんどん減っていったが、
「板金工場」
 であったり、
「メッキ工場」
 など、ところどころにあるようで、父親の営業は、そんな昔からの取引があるところがほとんどだった。
 そもそも、
「今から、町工場を立ち上げる」
 などというところは少なく、逆に、
「跡取りがいない」
 などという理由で、
「どんどん姿を消していく」
 という時代だったのだ。
 中には、
「合併する」
 ということで、存続するところもあったが、実際には、数はどんどん減ってくるということであった。
 それでも、少ないだけに、
「貴重な存在」
 といってもいい。
 中には、
「結構儲けている」
 というところもあるようで、
「人件費を工場機器導入することで、利益が出た」
 というところもあるので、父親の会社は、それなりに利益を出しているといってもいいだろう。
 特に、真一の住んでいる街は、
「自家用車の稼働率が結構高い」
 ということで、
「車社会の土地柄だ」
 ということから、
「板金工場」
 や、
「自動車修理工場」
 も流行っていた。
 修理はもちろん、車検なども需要があり、この街は、
「自動車産業の街」
 といわれてから久しかったのだ。
 そもそも、
「昭和時代の高度成長期に一気に売り上げを伸ばし、短期間で、世界で有数の、自動車メーカー」
 といわれるようになった会社の本社が、近くにあるということで、
「父親の会社は、その恩恵を被っていた」
 といってもいいだろう。
 父親の死体が発見されたのは、その中でも、父親が担当する中で一番大きな工場の中だったということだ。
 朝になって、いつものように、工場に勤める工員が出社してきた時、
「見慣れない服を着た人が倒れている」
 ということであったが、顔はすぐに確認できなかったが、きている服が、スーツで、ネクタイ姿だったというのは、なるほど、
「見慣れない服装」
 といってもいいだろう。
 近づいてみると、
「中条さんじゃないか?」
 ということで、発見者も、不思議な感覚に襲われたということであった。
 仰向けになって、胸にナイフが刺さっていたということで、
「他殺だ」
 ということは間違いないように思われた。
「見慣れない服装だ」
 と工員が感じたのは、
「普段から、営業で中条さんが来るときは、カッターにネクタイの上に、作業着を着ていた」
 ということであった。
 それだけ、
「工場で働く人に気を遣っている」
 ということもあれば、
「これが、工場の制服だ」
 という意識があるということであろう。
 それだけ、彼が、この業界が長く、ベテランだということになるのだろう。
 しかし、スーツ姿が普段の彼の姿なので、工員が見慣れないのも当たり前、工場長も、社長も、普段から、作業着姿を見慣れているので、
「そこに死体がある」
 ということ以前に、最初に感じたのは、
「服装の違和感だった」
 ということであった。
「違和感」
 というものがあったということであるが、実際に警察が来て、喧騒とした雰囲気が漂ってくると、さすがに、工場内は、
「緊張感に包まれた」
 最初は、
「誰もいない、暗い中に、死体がポツンとあった」
 ということで、恐怖のような気持ち悪さがこみあげてきたが、皆我に返り、
「警察に通報した」
 という時点から、それまで
「凍り付いていた」
 といえる雰囲気が崩壊し、一気に、
「喧騒とした雰囲気になった」
 ということである。
 凍り付いた状況」
 の中においては、臭いも音も、光さえもが、遮断されたような気がした。
「音は、籠って聞こえ、臭いもまったく感じず、明かりはついているのに、光を感じないような気がする」
 ということであったが、
「光を感じないのはなぜなのか?」
 ということだけは、少しして、
「すぐに分かった」
 のであった。
 それがどういうことなのかというと、
「影がないように思えた」
 ということからであった。
 つまり、
「影」
 というのは、
「光があったこそ見えるもの」
 ということで、
「影がない」
 ということは、
「影を作る光がなかった」
 ということで、
「実際に、ハッキリと見えたわけではない」
 といってもいいだろう。
 さらに、
「光がない」
 ということは、
「色がハッキリとしない」
 ということで、本来であれば、
「真っ赤な鮮血」
 のはずなのに、見えているのは、
「どす黒くぬめったもの」
 というイメージ、
「まるで、ガソリンを見ているようだ」
 ということで、
作品名:質より量 作家名:森本晃次