多重推理
最初は、警官、そして、初動捜査の人。そして、その後、刑事ということで、同じことを言っていたとしても、相手からの追及は厳しくなる。
結局、
「分かりません」
であったり、
「さあ、覚えていません」
という曖昧な答えしかできないのだ。
つまり、
「ゼロかそれ以外化?」
でいいのに、
「百か、それ以外か?」
ということで、
「完璧でなければ、あとはいかにごまかすか?」
ということで、このような状況であれば、
「完璧などというのはありえない」
ということで、どのように警察と接すればいいのかが分からなくなる。
しかも、犯罪捜査において、
「第一発見者を疑え」
という、余計な法則のようなものもあるようで、
「第一発見者の話に少しでも、嘘であったり、辻褄が合わないこと」
などがあったりすれば、
「容疑は一気に、自分に向く」
ということになるのかも知れない。
どうしても、警察の聴取となると、そのことが頭をよぎってしまう。
意識して、本当のことを言おうとすればするほど、覚えているはずのことが、思い出せないということになるだろう。
そうなると、自分の態度がどこかぎこちなくなり。それだけで、警察に疑いをもたれるということになりかねない。
しかも、
「警察というと、どうしても、上から目線」
ということで、高圧的な態度で来られる。
つまり、
「悪いことをしているわけではないのに、悪いことをしているかのように、自分で感じてしまう」
ということになり、
「警察に疑われるに十分」
ということで、
「犯人だと思われないまでも、捜査をかく乱している」
と思われることで、警察から、必要以上にマークされることになり、関係のない事件で、
「重要参考人」
などにされてしまうと、たまったものではないといえるだろう。
ただ、今回の事件の発見というものが、
「このまま終わるわけはない」
と感じたのは、何かの、
「虫の知らせ」
というようなものであろうか?
そんなことを感じると、
「事情聴取の時間」
というのも、想像以上に長かったように思えた。
しかし、終わってしまうと、憔悴しきってしまったことで、後からは、
「あっという間だった」
と思うのだった。
そして、結局警察でいろいろ何度も聞かれたが、
「実際に、辻褄が合う回答ができたのか?」
ということが分からない状態だった。
なんといっても、終わって解放された時には、正直、自分がどんな話をしたのかということを、すっかり忘れてしまったのであった。
今回の事件は、刺殺であった。死体を発見した瞬間、
「死んでる」
と思ったのは、胸を刺されて、凶器であるナイフがまだ突き刺さった状態であるにも関わらず、きているワイシャツには、かなり大きな真っ赤に染まった円が描かれていて、べっとりとしみついた血糊が、倒れている身体から、流れ落ちているかのように見えたからであった。
「さっきまで生きていた?」
という思いはあった。
だから、今にも動き出しそうな錯覚を覚えたのだが、無意識にだが、少し落ち着いてから、腕で脈をとってみた時、
「腕が冷たくなっている」
ということと、硬くなった手首からは、脈が感じられない」
と思ったことで、即効で、警察に通報したのであった。
さすがに、夜の公園、最初は誰もいなかったが、自分では無意識だったのだろうが、きっと、
「思わず、叫び声を挙げた」
ということであろう。
だから、近くの家から、人が、数人出てきて、様子を見ていた。
中には、隣接したマンションから、のぞき込んでいる人もいるようで、それを見ると、
「警察への電話通報も、きっと大きな声だったのかも知れない」
と感じた。
きっと、それは、
「一人になりたくない」
という無意識な意識が働いたということで、
「まわりに人が寄ってきた」
というのは、自分としては、
「助かった」
と感じたのだ。
毒殺事件
どこをどう見ても、
「刺殺」
ということは明らかで、
「殺人事件」
ということであった。
なぜなら、
「被害者の胸に刺さっていたナイフには、被害者の指紋しかついていなかったわけで、それは、胸を刺されて苦しんでいる時に、必死に抑え湯とした時についたものだということは、他の場所にナイフの指紋がなく、さらには、誰の指紋もない」
ということが怪しかった。
ただ、指紋だけではハッキリとはしないわけで、
「自殺の可能性」
というのがまったくないとは言えなかった。
被害者は、馬場という男性で、事情聴取の中で、
「自殺をする理由はない」
ということであった。
逆に、調べを進めていくと、被害者である馬場という男は、
「あまり、素行がいい」
という男ではないという。
どちらかというと、チンピラ風だったという話だった。
「友だちを、いろいろ詮索していて、金がいりそうな人に、高利で金を貸す」
というようなことをしてみたり、
「オンナをとっかえひっかえしていて、女に関しては、節操がない」
と言われている。
ただ、
「バックに誰かいる」
という噂はあるようだが、
「ハッキリとはしない」
ということのようであった。
実際に、同僚や、昔の友達などに話を聞きにいくと、
「殺されたのも、無理はない」
というような印象を受けることができた。
というよりも、
「あの人に関わるとろくなことがない」
と感じている人が多いということのようであった。
それだけ、
「恨んでいる人も多いのではないか?」
ということであったが、事情聴取の中では、
「恨んでいる人はいるだろうけど、誰なのかというのは分からない」
という意見がほとんどだった。
「本当に知らない」
という人が多いということであろうが、それだけではなく、
「へたに関わると、こっちが危ない」
ということで、それが、
「立場」
ということなのか、それとも、
「命が危険だ」
ということなのか、そのどちらにしても、
「警察にも関わると危ない」
という思いがあるのかも知れない。
ただ、そうなると、
「犯人に心当たりがある」
ということなのか、
「馬場が殺されるのだから、殺した犯人も、同じような悪党に違いない」
という考えから、
「変に警察にチクって、こっちが逆恨みでもされると、どうしようもない」
と考えているのかも知れない。
そもそも、殺された、
「馬場」
という男に、そういうところがあったようだ。
「あくまでも、すべては、自分の理屈が正義だ」
と思っているようで、
「自分に逆らう連中は、すべて敵認定」
ということで、子供の頃から、
「他人のものは自分のもの。自分のものは自分のもの」
ということをモットーにしていたという。
それこそ、
「発想が、独裁的」
ということで、
「世の中が、自分のために回っている」
とでも思っているのか、
「実際に、権力を握ることで、その理屈を達成しよう」
と思っているのであれば、まだ分からなくもないが、
ただ、
「自分の都合だけで考えている」
ということで。説得力はないが、逆に、



