一つではない真実
「明かすことのできない守秘義務であれば、話すわけにはいかない」
ということだ。
「実際に、殺人事件が起きた」
ということであり、
「行方不明に重大な関係がある」
ということであっても、
「殺人事件や、失踪に直接的に関係がなければ、もし、その秘密が暴露され、守秘義務を課すという人の名誉の問題」
ということになってくると、
「探偵側の守秘義務」
というものへの
「重大な違反」
ということであり、警察も、
「過剰な聞き込み」
ということで、その責任の一端を担うということになるだろう。
だから、
「警察は、その放火殺人において、佐久間探偵がかかわっている」
ということを知らなかったようだ。
だから、
「焼死したのは、家の主人」
ということで確定したようだ。
ただ、一つ気になったのは、
「放火殺人」
ということで、確かに家は丸焼けになっていたが、
「大火災」
というほどのひどいものではなかった。
実際に、近所の住宅に被害があったわけではなく、そのわりには、
「死体の燃え方が、異常なくらいにひどい」
ということであった。
「まるで、身元を分からなくさせるためにやった」
と言わんばかりであった。
「完全にガソリンを撒いての犯行なので、最初から準備をしていた」
ということであろう。
つまりは、
「完全な計画的犯行」
ということであり、
「被害者の身元を隠す」
というのが、一番の目的なのかどうかは分からないが、少なくとも、
「作為があって、焼死を演出し、計画的な犯罪を成し遂げた」
ということになるだろう。
当時の捜査員の中には、推理を働かせるのが好きな人もいて、
「策を弄する人間は、一つの盲点から、事件が露呈することになる」
と思っていたのだ。
だから、推理をするというのは、
「犯人側から考えた時、どのような行動に出るか?」
ということを推理するのであって、
「状況証拠」
というのは、
「あくまでも、立証でしかない」
とまで思っていた。
彼は、佐久間探偵と気が合っていて、時々、事件がお互いに落ち着いた時、
「よく一緒に飲みに行ったものだ」
ということである。
彼は、刑事課でも、当時は若手の方で、20年前の、
「放火殺人事件」
というものがあった時、
「年齢は、20歳代」
だったのだ。
だから、刑事としては、まだまだで、先輩刑事から、
「顎で使われていた」
といってもいい、
それでも、彼の推理が実際に、当たったということもあったので、彼が警部補に昇進するのも、ノンキャリでは、早い方だった。
その頃になると、すっかり貫禄がついていて、秋元警部補の名前は、他の署にも伝わっていたのだった。
しかし、当時は、まだまだ新米刑事の一人、まともな捜査もさせてもらえなかった。
だが、ある事件をきっかけに、っ佐久間探偵の、
「一目置かれるところ」
となった。
当時の秋元刑事は、
「放火殺人事件」
の時も、下っ端として、捜査本部の中に入っていた。
だから、助手の性格も分かっていたし、
「助手は何かを隠している」
ということも分かっていた。
だが、
「探偵だから、守秘義務なんだろうな」
ということは分かっていて、しかも、
「まだまだ下っ端」
ということで、
「上の捜査方針に意見する」
などということができるわけがない。
なんといっても、警察というのは、
「階級制」
ということでの
「縦割り社会」
なので、逆らうことは許されない。
しかも、
「捜査本部の決定」
というのは絶対で、実際に、捜査方針を決める人間であっても、
「会議に諮らず、勝手に、方針を変えて捜査する」
ということも許されないといってもいいだろう。
「実際に、放火殺人という今回の事件は、謎と思えるところが結構あった」
と思っていた。
前述のように、
「火事の規模に対して、死体がやけに損失している」
ということがまず一つ。
さすがにここまで焼けてしまっていると、
「DNA鑑定というものも、完全とはいえない」
といえるであろう。
だから、捜査会議の中でも、
「誰の死体か分からないようにするため」
ということが考えられたが、
「今回の関係者で、行方不明者といえば、家の主人しかいない」
ということと、
「被害者の奥さん」
が、
「うちの亭主です」
といったことから、
「被害者は、たぶん、旦那だろう」
ということになった。
しかし、ハッキリとはしないことから、とりあえず旦那は、
「行方不明者扱い」
ということにしておいた。
だから、もし、7年経って、ご主人が現れないと、失踪宣告を受け、
「死亡」
ということになるだろう。
そうなると、遺産相続ということになるのだろうが、実際に、調べてみると、
「相続できるだけの遺産はない」
ということであり、さらに調査すると、
「どうやら、借金があるようだ」
ということで、その時点で、
「奥さんによる、遺産相続」
を狙った犯罪ではないのであった。
生命保険も、別に、
「保険金詐欺」
というのを疑う金額が掛かっていたわけではない。
そもそも、
「借金があるのだから、そんな保険など掛けれるわけもない、それでも、最低に近いくらいに掛けていたのは、奥さんに、借金があるのを気づかれないようにしたい」
という思いからだろう。
そう考えれば、旦那が、
「探偵を雇ってまでも、浮気調査をしよう」
と思ったのも分からないでもない。
「浮気をしている」
ということを、考えれば、
「このまま放っておいて、普通に離婚ということになるよりも、嫁さんの不倫をネタに、損害賠償をもらって、少しでも借金に充てよう」
と思ったのかも知れない。
そのためには、
「探偵に対しても、自分が借金をしている」
ということをバレないようにしないといけない。
彼が考えたのは、
「守秘義務があるとはいえ、私立の探偵なのだから、海千山千もいる」
と考えると、へたをすれば、
「借金があるために、慰謝料をふんだくろう」
と考えていることがバレて、それを、
「奥さんにばらす」
などといって、脅迫を受けるということになるかも知れない。
「それは非常にまずい」
と、依頼人は考えるだろう。
もっとも、だからこそ、
「探偵というのは、依頼人を裏切ると、生きていけない」
ということで、
「よほどの金銭であったり、見返りがないと、依頼人を裏切る」
というのはリスクが大きい。
だから、
「探偵や法曹界の守秘義務」
というのは、本当に厳しいものなのだということになるだろう。
もっとも、
「一般市民や警察が、どこまで探偵における守秘義務の重さ」
というものを分かっているか?
ということは分からないだろう。
実際には、
「依頼人を裏切って、脅迫まがいのことをしている」
という悪徳探偵もいるかも知れない。
実際に、刑事ドラマなどではあったりするが、それも、
「実際にあるかも知れない」
ということでそれこそ、
「火のないところに煙が立たない」
ということになるだろう。
これも、
「放火殺人」
という
「笑えない犯罪」



