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一つしかない真実

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「大っぴらに話せない」
 ということで、
「同僚や、後輩に、まるえ愚痴をこぼすかのように話していた」
 ということであった。

                 車への疑問

 だから、聞き込みを行った同僚や後輩からは、
「沢崎さんは、昨日は早出はしていないと思いますよ」
 ということであった。
 数名聞いて、その皆が、
「早出をしていない」
 というのだから、それ以上疑う必要もないというものだ。
 となると、
「なぜ、あんなに早い時間、あのあたりをウロウロしていたのだ?」
 ということになる。
 しかも、ひき逃げ犯というのは、
「ブレーキを踏んだわけでもなく、猛スピードで当たってきた」
 ということなのだから、
「これは、事故ではなく、ひき逃げに見せかけた殺人ではないか?」
 という考えも出てくるわけである。
 そうなると、刑事課の仕事ということで、
「事故と事件の両面から捜査する」
 ということになり、これが、
「事件だ」
 ということになれば、
「捜査本部が置かれる」
 ということになるだろう。
 今のところ、状況的に考えて、
「そんなに見晴らしの悪いところではない」
 ということから、
「事件の可能性が高い」
 ということであった。
「最初はひき逃げ事件」
 と思われたものが、
「実は、ひき逃げに見せかけた殺人事件」
 ということであれば、車の行方はもちろんのこと、
「被害者の身辺調査」
 というのが重要になってくる。
 殺人事件ということであれば、当然、
「殺害動機」
 というものがあるわけで、被害者に、
「殺されるだけの何かがある」
 というのか、それとも、
「犯人に、いかな殺そうとするだけの動機があるのか?」
 ということになるのだろう。
 そして、被害者の住居が、
「K市にある」
 ということで、当然、住まい付近での聞き込みも行われることになるだろう。
 そんな中で、今回引っかかったのが、
「沢崎という男が住んでいる賃貸マンションに、今回の出会いがしらの事故で入院した男がいる」
 ということであった。
 もちろん、
「ただ、同じマンション」
 というだけでのことで、
「殺人事件に関係がある」
 とは言い切れないだろう。
 ただ、今回の事件で一つ気になったのが、K警察署の、清水刑事が、抱いた疑念というものであった。
 それは、
「そもそも、同じ日の、若干時間が違っているとはいえ、交通事故が重なった」
 ということであった。
 もちろん、限りなく偶然としか思えないのであるが、清水刑事が気になったというのは、
「ドライブレコーダーが壊れていた」
 ということであった。
「いくら出会いがしらの事故で、しかもスピードを出していたとはいえ、車を廃車にしないといけないほどひどく壊れているわけではない」
 ということであるのに、
「再現不可能」
 といわれるほどの事故だったというのが気になったのである。
 なるほど、
「ありえない」
 ということではない。
 しかし、再現不可能という事故にしては、
「入院を余儀なくされたとはいえ、命に危険があるほどのけがをしているわけではない」
 さらに、
「後から調べたところ、運転手がその峠を通るのが慣れている」
 というわけではないようで、もっといえば、彼の車の中から、
「バイパスの通行券の半券が、何枚も見つかっている」
 ということから、朝の車もそんなに多くない時間に、わざわざ峠を走る必要もないというもので、そもそも、
「急いでいるのであれば、わざわざ峠を通らずとも、バイパスを通ればいい」
 ということになる。
 そういう意味で、
「どこか、あの出会いがしらの事故には矛盾がある」
 と清水刑事は考えたのだ。
 これが、
「K警察署」
 の方とすれば、最初から、
「これは出会いがしらの事故だ」
 と思っているからこそ、
「疑うということをしない」
 というのだ。
 しかし、
「H警察署」
 とすれば、
「自分たちは、ひき逃げを使った殺人事件の捜査をしている」
 という観点から見ているので、
「ちょっとした矛盾であっても、見逃さない」
 という目で見ていることから、この矛盾は、大きな矛盾として映ったのだ。
 だから、
「K警察署の刑事が気づいた」
 というのも当たり前というもので、それに気づくとすれば、
「清水刑事ではないだろうか?」
 というのも、
「K警察」
 とすれば、分かり切っているといってもよかった。
「清水刑事は、最近、売り出し中」
 ということもあり、実は、
「H警察署内」
 にも、
「清水刑事の活躍」
 というものを知っている人も結構いて、ひそかに、
「敬意を表している」
 という人もいたりした。
 ただ、警察署というのは、どうしても、
「横のつながり」
 ということで、
「縄張り意識」
 というものが強く、特に、
「隣の署」
 ということになると、ライバル視している人がどうしても多い。
 ただ、それも若い刑事はそこまで考えているわけではなく、
「そんな悪しき伝統なんてなくなればいい」
 と思っている人も結構いることだろう。
 それを考えると、
「清水刑事の考え方を聞いてみたいものだ」
 と思っている若手も少なくはないだろう。
 清水刑事は、今回の事件で、
「ドライブレコーダーが壊れている」
 ということを気にしていた。
 そして、実際に、ひき逃げをした車をとらえた防犯カメラにもハッキリと映っていないというのは、
「犯人が、わざと、できるだけ確認されにくいという時間や、タイミングを研究していて、それを実践した」
 というところまで考えていた。
「もし、そうだ」
 ということになると、
「この事件は、かなりの知能犯の犯罪ではないだろうか?」
 とも考えていたのだった。
 今回の事件において、
「出会いがしらの事故」
 というものに、
「ちょっとした矛盾」
 というものが、大きな矛盾をはらんでいると分かったのも、当たり前といえば、当たり前のことだったのだろう。
 ただ、そうなると、次に考えることとして、
「なぜ、わざわざ、峠を通ったのか?」
 ということになると、この事故も、
「実際に計画されたものではないか?」
 という考えである。
 そして、もう一つ考えられることとして、
「出会いがしらが本当に、偶然の事故」
 ということであり、
「H警察署ないでの、ひき逃げ殺人事件と関係がない」
 ということであれば、余計に、
「どうして、あの峠を通らなければいけなかったのか?」
 ということが深い意味を持っているのではないか?
 と考えられる。
 それを考えた時、清水刑事は、一つの仮説を立ててみた。
「バイパスであってはいけない、そして、峠越えでないといけない」
 ということを考えた時、
「峠越えのあの道のどこかに、何か用があったのではないか?」
 ということであった。
 ただ、それは、あまりにも、漠然とした考えで、それを証明するものは何もないということで、まだ、胸にしまっていることであった。
 そもそも、この時点では、
「あれは、ただのひき逃げではなく、殺人事件だ」
 という考えは、
「ただの仮説でしかない」
作品名:一つしかない真実 作家名:森本晃次