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笑みの中の恐怖

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 ということであれば、心境は少なくとも、複雑ではないかと考えると、渡辺の行動に、皆が不思議がるのも無理はない。
 しかし、実際には、
「職がない」
 という、
「もっとリアルな理由」
 ということに気づかないのは、
「警察を、若い時に辞める場合は、完全に理想に、心折れた」
 という人が多いのではないか?
 と考えると、
「まったく違った仕事を選ぶはずだ」
 と思うと考えるのは、それだけ、
「警察に残っている人尾のほとんどが、理想に燃えている」
 ということになるのだろう。
 逆に、
「理想など、とっくの昔に忘れた」
 ということで、
「安定を中心に考える人」
 ということであれば、結果、
「理不尽なことでも、我慢すればいい」
 と考えてしまうという、
「受け身体質」
 というものになってしまっているということになるのだろう。
 今回、渡辺が、第一発見者になったことで、
「そういえば、渡辺巡査っていたよな」
 と、彼を思い出す人もいた。
 今から思えば、彼は、事件が起これば、いつも必ず、すぐに現場に駆けつけていた。それだけ、
「変死や、事件が多い」
 という地区を管轄していた交番に勤務していたということであろう。
 とはいえ、
「そんなに、毎回毎回、一番に駆けつける」
 というのは、
「それだけ、日ごろから、事件に対しての体制を持ち続けている」
 ということになるだろう。
 それだけ、
「優先順位のつけ方が上手だ」
 ということになるわけで、
「事務仕事であれば、放っておいてでも、現場に駆け付ける」
 ということを、最優先としていたはずだろうからである。
 そういう意味では。
「緊急性を要する山岳警備隊という仕事は、彼にとっては、一種の天職といってもいいかも知れない」
 ということになるだろう。
 実際に、急いで駆けつけたことで、
「事件の重要な手掛かりを見つけた」
 ということも結構あった。
 最初は、
「ただの偶然だ」
 と言われていたが、
「2度3度が、5,6回」
 ということになると、
「偶然では済まされない」
 ということになるというのも、当たり前といってもいいだろう。
 確かに、警察というところにいれば、
「いつでも緊急性を要することで、精神的にも、絶えず緊張感を持ち続ける必要がある」
 ということになる。
 それに耐えられずに、辞めていくという人もいれば、
「次第に慣れてくる」
 という人もいる。
「慣れ切ってしまうというのも、あまりいい傾向うでもないが」
 という人もいるが、さすがに、
「精神を病んでまで、続けられる仕事ではない」
 ということであろう。
「警察を辞めた」
 ということに関しては、その人それぞれに、
「思うところ」
 というのがあり、
「人の数だけ、理由が存在している」
 といってもいいだろう。
 それを考えると、渡辺氏は、
「緊張感に押しつぶされた」
 ということではないような気がする。
 それよりも、まだ、
「警察組織というものが嫌になった」
 という方が、
「理由として信憑性がある」
 と考えられるような気がするのであった。
 渡辺氏が、山岳警備隊で、通常勤務を初めてから、まだ、数か月というところであった。
 実際に、
「山の事故」
 であったり、
「事件」
 というものは、
「想像以上に多い」
 といってもいいだろう。
 それを考えると、
「まだ、数か月しか経っていないのに、すでに、第一発見者になるとは」
 という表現は、適切ではないといえるかも知れない。
 この事件の
「初見」
 ということでは、
「事故の可能性が高い」
 といえるだろう。
「争った跡がない」
 ということと、
「遺書がない」
 ということからであるが、
「外傷がない」
 ということで、刺殺や絞殺でもない。
 となると、
「毒物による殺人」
 ということも考えられるが、苦しんだ跡もないことから考えると、
「毒物ではない」
 ということなのかも知れない。
 ただ、明らかな死因が分かっていないということと、
「山の中で発見された」
 ということで、
「変死体」
 として、司法解剖に回されることになった。
 そこで、ハッキリしたことは分かるだろう。
 ちなみに、初動における鑑識の判断としては、
「死後、10時間くらい」
 ということで、
「昨夜の日が暮れてから以降」
 ということであろうと考えられる。
「一人で入ったとしても、こんな寂しいところに何しに?」
 ということであった。
 それこそ、
「誰かと待ち合わせをしたり、呼び出される場所」
 ということでもない。
 なんといっても、
「目印になるもの」
 というものが何もないからである。
 待ち合わせや呼び出しであれば、
「どこかの神社の境内」
 とか、
「目印になり、あまり人に見られない」
 ということで考えられることであろう。
 しかし、それも、
「刑事ドラマの見過ぎ」
 ということかも知れないし、
「今の時代であれば、いたるところに防犯カメラが設置してあるので、人に見られないために待ち合わせ場所を考えるということでは、実質的ではないかも知れない」
 つまりは、
「誰にも見られないということは不可能だ」
 ということを前提に考えなければいけない。
 何かの犯罪を行うのであれば、何かできるとすれば、
「時間稼ぎに利用する」
 ということくらいしかないだろう。
 それにしても、その方法というものは、よほど考えないと、そう簡単に分かるというものではない。

                 行方不明

 昔の昭和の時代に比べれば、
「計画犯罪をそう簡単に行えるだけの環境にはない」
 ということで、本来なら、
「事件が減ってもいい」
 と考えられるし、
「犯罪が減らないのであれば、検挙率が上がる」
 といってもいいだろう。
 そのどちらにも、目立ったものは見えてこないのである。
 逆にいえば、
「検挙率が上がれば、犯罪の抑止になるだろうから、それこそ、犯罪が減っていく要因になる」
 ということで、
「正のスパイラル」
 というものが起こってしかるべきであろう。
 それを、警察は目指しているのだろうが、なかなか、そううまくいかないというのは、それだけ、
「警察の見立てが甘い」
 ということなのか、
「犯罪というものは、捕まらないということが最優先ではなく、犯罪を完遂するということが最優先である」
 という当たり前のことを、
「本当に分かっていない」
 ということなのではないだろうか?
 それを考えると、
「犯罪というものが、それだけ理解に苦しむものだ」
 ということなのか、それとも、
「警察の考えが甘い」
 ということなのか、
「どちらにしても、その二つは、交わることのない平行線というものを永遠に描いていくものだ」
 ということになるのではないだろうか?
 そんなことを考えていると。
「警察というものから離れてしまった渡辺に、外部から、警察を批判すっるということはできるわけはない」
 と思えた。
 しかし、
「元警察官だからこそ分かること」
 というのは、あるはずだといえるのではないだろうか?
 若手の刑事の中には、
作品名:笑みの中の恐怖 作家名:森本晃次