笑みの中の恐怖
が犯人だということになれば、すぐに疑われるだろうし、
「調べれば、分かる」
ということになる。
当然、防犯カメラなどもあるだろう。簡単に盗み出せるわけはないし、さらには、
「盗み出したとしても、いの一番に疑われるわけなので、これほどの、リスクの高いことはない」
といえるだろう。
「警察というものが、バカではない」
と考えれば、
「毒を持って、自殺に見せかける」
ということはリスクが大きすぎるといえるだろう。
ただ、それでも、
「サスペンスドラマ」
などでは、
「自殺に見せかけた殺人」
というのは結構ある。
というのは、
「難しいだけに、トリックを駆使することで、一つの物語になる」
ということから、
「小説」
であったり、
「ドラマ」
というものにするには、
「これ以上の恰好な題材はないだろう」
ということである。
そういう意味では、
「実際に、警察に届けられた、変死体事件」
というもので、
「自殺として処理されたものの中に、どれだけの、自殺を装った殺人というものがあった」
といっていいだろうか?
実際には、考えただけで、これだけのリスクがあるということなので、
「ほとんどないだろう」
というのが正解なのだろうが、実際に、
「自殺」
ということで処理されてしまったのだから、どうしようもないということであろう。
警察の捜査というものは、どうしても、
「刑事ドラマ」
や、
「サスペンスドラマ」
などでしか分からない。
そういう意味では、
「警察の実際の捜査」
というものを、もっと、ドキュメンタリータッチにして、特番を組めば、
「警察というものが、もっと庶民に親しまれる」
ということになるだろう。
もちろん、
「そんなドキュメンタリー」
というものを作ってしまうと、
「警察の捜査」
というものの今後に、
「支障をきたす」
と考えると、
「警察というのは、どうしても、秘密主義的なところが残る」
ということで、
「それも仕方がない」
ということなのだろうが、結局は、
「疑惑という闇を残す」
ということで、庶民に対しては、不利なのではないか?
と思うのだ。
もっとも、これが、
「大日本帝国」
という時代であれば、
「軍」
「警察」
「政府」
というのは、それぞれに独自性というものがあり、これが、公になると、
「国家の存続が危うくなってしまう」
ということで、
「特高警察」
であったり、
「治安維持法」
などという、今の時代ではありえないようなことが、平気で行われていたといってもいいだろう。
しかも、それを、
「政府」
であったり、
「軍」
というものが、組織ぐるみで絡んでいるということであれば、
「どうしようもない」
といってもいいだろう。
「しかし、それは、大日本帝国というものだけではなく、あの時代の諸外国は、それぞれに、緊張感が張り詰めていたことで、一触卒初だった」
ということから起こったのが、
「二度にわたる世界大戦」
というものだったのだ。
「時代が時代だった」
と言われるが、
「日本は、戦後、占領国によって押し付けられた民主主義を急速に進めた」
ということのために、
「諸外国にはない」
と言われる、民主化というものが、独自に発展してきたといってもいいだろう。
だから、日本における民主主義というものは、
「独自に発展してきた」
ということであり、そもそも、これが、
「基本的な民主主義」
というわけではないということに、日本人のほとんどは気づいていないのであった。
「民主主義というのは、自由というものを担保にして、平等を犠牲にする考え方である」
というものだ。
本来は、
「自由と平等は、相立ち並ぶものではない」
ということなのに、それを両方、うまくいかせようというのであれば、問題は、
「バランス」
ということになるというものだ。
しかし、そのバランスというものが、うまくいかないどころか、
「この考え方を分かっていない」
ということから、問題が大きくなっていることに、誰も気づいていないということである。
発見された死体の身元は、すぐに分かった。遺留品の中に、パスケースがあったからで、名前を、
「榎田」
と言った。
彼は、パスケースを持っていたことから、会社には、電車での通勤のようだった。
もっとも、車で通勤しようと思うと、都心部の雑居ビルに会社を構えていることもあり、会社近くの月極駐車場にでも止めないといけない状況だろう。
会社は、交通費として、ガソリン代くらいは払ってくれるだろうが、駐車場代まで持ってくれるわけもない。当然、都心部ということで、その費用もバカにならない。毎日、ラッシュの中をストレスと抱えて通勤してくるというのも、結構きついだろう。
よほど、車の運転が好きだという人でもない限り、毎日の車通勤は、苦痛でしかないだろう。
特に最近の都心部は、老朽化に伴う建て替えで、いくつかの商業施設が入ったビルが、建て替えを行っている。
それも、
「一度潰して、新たに建て替える」
という、
「全面修復」
ということで、町全体が、歯抜け状態となっているといってもいいだろう。
町全体が、大きく変わるその前兆と言ったところである。
パスケースの中には、本人の名刺も入っていて。その内容から、
「都心部の雑居ビルに事務所を構えている会社」
ということであった。
聞き覚えのある商事会社なので、全国的にも有名商社の、支店というところであろう。
肩書は、
「経理課長」
となっている。
とりあえず、身元を確認してもらうために、連絡をする必要があるということで、会社と、家には連絡を入れることにした。
まず、会社に連絡を入れることが先決で、会社側もびっくりしていたが、何やら、
「そこまでビックリしている」
という感覚はなかったのだ。
何やら形式的にも聞こえ、それが、警察としては、不思議な気がしてしかたがなかった。
家に連絡を入れてみると、ちょうど留守なのか、連絡がつかなかった。その旨を、上司に伝えたところで、まずは、現場検証であった。
現場は、登山道の入り口にあたるところで、実際には、少し入り込んだところにはなるが、
「そう何日も見つからない」
というところではないという。
特に、
「山岳警備隊」
の人たちが、定期的に見回っているので、彼らが見回れば、発見できないことはないということで、今回も付けたのも、今日が、
「その定期的な日」
ということだったということなのであった。
山岳警備隊の渡辺というと、所轄でも、少しは知られていた。
「警官を辞めて、なぜ、山岳警備隊に?」
と考えていて、
「警察の方が安定している」
と思っている人が多く、なんといっても、
「警察に入ってきた時の気持ちを考えれば、道半ばで辞めるのであれば、まったく違う仕事に就く」
ということになると考えたからだ。
「熟練の刑事」
などであれば、分からなくもないが、
「まだ20代で警察を辞める」



