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笑みの中の恐怖

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「死体の発見を遅らせることで、死亡推定時刻を曖昧にする」
 ということであるが、後者の場合は、当てはまらない。
「アリバイ作り」
 ということであれば、少なくとも、死亡推定時刻はハッキリしていて、
「その時間のアリバイが完璧」
 ということなので、
「死亡推定時刻」
 というものが曖昧であるならば、
「死亡推定時刻を確定させるための偽装工作」
 ということで、誰かが被害者に変装するか何かして、
「その時間、被害者は生きていた」
 という、
「二重三重」
 の、トリックを組み合わせる必要があるということであろう。
 今回は、そこまで考えられてはいない。
 そもそも、
「あまり、策を弄して、やりすぎてしまうと、ぼろが出やすい」
 とも言われている。
 それを考えると、
「今回の事件は、どこか単純に見えるが、何かの意図が働いているのは間違いない」
 というのが、桜井警部補の、
「刑事の勘」
 であった。
 今回の事件は、
「解剖によって分かったこと」
 あるいは、
「奥さんの失踪」
 ということで、普通であれば、奥さんに疑惑が向くということになるのであろうが、どうもおかしな気がするのだ。
 奥さんを捜索しても、なかなか見つからない。
 とはいっても、事件が起こってすぐくらいは、いろいろな展開が見えることで、
「展開が見えない」
 という状況になるというものであるが、ある程度、
「1か月がめどか、数か月になるか?」
 その事件性によって変わってくるが、実際には、
「時間だけがいたずらに過ぎる」
 という時期がある。
 これは、
「事件の捜査」
 というものに限らず、
「誰にでもある、人生の岐路」
 といってもいいだろう。
 そこに、
「事象に対しての慣れ」
 というようなものもあるかも知れないし、最初に、集中して事に当たるということが、余計に途中からの膠着状態というものを、予見するということにもなるだろう。
 いわゆる、
「堂々巡り」
 というものであったり、
「イタチごっこ」
 というものを考えさせられるということになったりする。
 この間に、事件の進展というものが見られないと、真剣に、
「お宮入り」
 ということが現実味を帯びてくる。
 特に、警察のように、
「毎回事件を追っている」
 ということになると、そのパターンが分かり切ってしまっているといってもいいだろう。
「今度の事件も、いよいよか」
 と考え始めれば、頭の中で、
「この事件も、すでに過去のこと」
 という頭になりかねないのは、それだけ、
「捜査がマンネリ化している」
 といってもいいからであろう。
 実は、犯人の狙いはそこにあった。
 そのためには、
「ある程度のところで、奥さんの死体が発見されなければいけないが、そのためには、タイミングがある」
 ということであった。
 なぜなら、
「奥さんが殺された時期」
 というものによって事件の方向性が明らかに変わってくるからだ。
 というのは、今の警察の考え方として、
「旦那を殺して、奥さんが逃げている」
 というのが、一番考えられることである。
 だから、
「渡辺と奥さんは関係があった」
 ということであっても、その後で、
「死んだ榎田氏も、渡辺氏のことはよく知っていて、今では家族ぐるみ」
 ということだったのだ。
 そもそも、この事件の犯人としては、
「奥さんとの関係を、旦那に知られ、旦那を生かしてはおけなくなった」
 ということであるが、
「奥さんに生きていられれば、奥さんの口から事件が露呈しないとも限らない」
 といえる。
 だから、シナリオとして、
「奥さんが、団を殺して逃げている」
 ということにするしかなかった。
 ただ、まずは、
「奥さんの口を先に封じる必要がある」
 ということで、
「失踪した奥さんは、殺されていて。しかも、それは、旦那よりも前に殺される必要があった」
 ということであった。
「奥さんは、あまりにも知りすぎている」
 というのが、犯人の考えで、実際に、
「犯人が死んでほしかったのは、奥さんである」
 ということであった。
「夫婦のどちらを殺すにしても、もう一人に生きていられれば、自分が危なくなってしまう」
 ということで、この計画を立てたのだ。
「旦那の死体を移動させた」
 ということの真相としては、
「旦那を殺したその場所で、奥さんを殺した」
 ということがあるからで、実はもう一つあったのは、
「第一発見者になるためには、山で死んでいるところを発見する方が自然である」
 ということからであった。
 なるほど、
「第一発見者を疑え」
 とは言われるが、それはあくまでも、小説などでの話。
 普通に考えれば、
「第一発見者にわざと犯人がなって、表に出てくる」
 というのは、リスクがありすぎるということであり、関係性を知られたくないのであれば、余計に、犯人は蚊帳の外にいるべきだということになるだろう。
 しかし、今回は、
「あえて、第一発見者だ」
 ということになった。
 それは、
「調べれば、被害者たちと関係があった」
 ということが分かるからだ。
 しかも、渡辺は、警察を辞めてから、なかなか職に就けなかった頃の生活費が、どこから出ていたのか?
 ということもあった。
 どうやら、奥さんに対して、
「過去の事件のことを、近所に触れ回ろうか?」
 などといって、じわじわ責め立てていたようだ。
 しかも、このことは、旦那も知らないということで、
「このことは、今の段階で知っているのは、僕と奥さんだけですからね」
 といえば、これほど奥さんに対して刺さる言葉はなかった。
 元々、渡辺は従順な性格で、奥さんからすれば、性的なことであれば、
「自分が主であり、渡辺が奴隷」
 といういわゆる、
「SM」
 という、
「異常性癖に溺れていた」
 ということである。
 それがいつの間にか、
「立場が逆転」
 これは、お互いに相手のことを真剣に見ていれば、
「自分が相手の立場になった時」
 ということも分かるという、いわゆる、
「表裏の関係」
 というのもありであった。
 それこそが、
「SMの見解」
 ということで、すっかり、奥さんは、
「渡辺の奴隷」
 となっていた。
 特に旦那は、
「絵に描いたような、ノーマルな男」
 いや、これが普通なのだが、すでに普通ではなくなってしまった奥さんは、
「渡辺のためなら死んでもいい」
 とまで溺れてしまっていたようだ。
 ここまでくれば、渡辺は犯行がやりやすかったことだろう。
 ただ、渡辺は絶えず、奥さんを怖いと感じていた。
 どこまでも、相手を奴隷として尽くさせているのだが、
「欲望には果てがない」
 ということで、一度疑うと、果てしない。
 それを、
「猜疑心」
 というもので、その猜疑心というものが、渡辺の中で絶えず離れなかった。
 これが、事件を明らかにさせる、
「唯一のカギ」
 ということであり、それが、桜井警部補の、
「刑事の勘」
 というものと、びったり符合したということであろう。
 渡辺は、最後には、桜井警部補の考えが、自分に至ることを悟ると、
「潔く」
 自らの命を断った。
作品名:笑みの中の恐怖 作家名:森本晃次