三すくみの正体
「まあいいや、男子校でも、知り合う機会くらいはいくらでもある」
と思っていた。
実際、
「俺はモテないとは思わない」
という、
「おごりのようなものがあった」
というのは否めない。
中学時代は、それなりに、女の子が結構まわりにいたからそう思うのであって、ただそれは、
「沢村君なら安心」
という意味だった。
沢村は引っ込み思案で、他の友達のように、
「俺が俺が」
といって、前に積極的に出る方ではない。
そういう男性を好きになる女性も一定数いて、逆に、
「安心感のある男に近づく女性も一定数いる」
というだけで、
「別にモテているわけではない」
ということに気づいていなかったのだ。
だから、
「高校生になれば、モテるだろう」
とタカをくくっていたが、実際に、知り合うことがなければ、寄ってくるわけもないわけだ。
そのことを知ったのは、大学に入ってからで、
「女の子と知り合う」
という機会は爆発的に増えたが、
「彼女になってくれる」
という女性は皆無だったのだ。
だからといって。
「俺の彼女になれ」
などと、引っ込み思案の沢村が、嘘でも感じるなどということがあるわけはない。
それを考えると、
「俺にとって、彼女なんていらないんだ」
と思うようになっていたのだ。
だから、沢村の
「童貞喪失」
というのは、
「風俗」
だったのだ。
よく、昔であれば、
「大学の先輩が、仲間に童貞がいれば、俺が卒業させてやるといって、風俗に連れていってくれる」
という話を聞いたことがある。
実際に、
「筆おろしの上手な風俗嬢」
というのもいて、それが、
「彼女の売り」
ということで、指名を取っているような女性である。
今の時代に、そんな昔の伝統が残っているかどうか分からないが、話としては、
「昭和ロマンというものを感じさせられる」
と思えることだろう。
風俗も、
「今と昔とではかなり違っている」
といってもいい。
「風俗嬢が、身近に感じられる」
というのが、ありがたいといってもいいだろう。
しかし、どうしても、風俗というと、いまだに
「偏見の目」
で見ている人もいるだろう。
「風俗嬢で、怖いこと」
というのは、いくつかあるだろうが、そのうちの一つとして、
「身バレ」
というものが考えられる。
この身バレというのは、最近の風俗嬢の特徴というものからいえる場合がある。
というのは、
「最近の風俗嬢」
というのは、
「風俗専門」
ということで仕事をしているというよりも、
「昼職」
というものを持っていて、
「夜などに、風俗で働く」
という女の子だ。
中には、
「昼間は女子大生」
という女の子も結構いる。
これは、ある意味、
「日本ならでは」
という理由があるからだ。
というのは、
「確かに中には、女の子として、こういう仕事を好きでしている」
という人も増えてきているが、それ以上に多いパターンとして、
「奨学金のため」
ということである。
高校時代、
「家庭が子供を大学に行かせるだけの金がない」
ということで、
「奨学金に頼って大学にいく」
という女の子が結構いるだろう。
他の国では、
「奨学金は返さなくてもいい」
ということであるが、日本の場合は、
「返却は必須」
ということになっている。
だから、
「大学時代に、奨学金を借りながら、返していく」
ということで、そのために、
「風俗で働く」
というけなげな子が多いというわけだ。
だから、
「風俗嬢に、女子大生が多い」
というのも当たり前のことで、少し前であれば、
「女子大生の風俗嬢」
というだけで、男はドキドキしていたが、最近では、そんなこともない。
それこそ、
「昔ではないことだ」
といえるだろう。
脅迫
「風俗嬢になったきっかけ」
ということで、こういう、
「奨学金返済のため」
というけなげな理由であったり、
「実際に、セックスが好き」
というダイレクトな理由の女の子、または、
「普段は、気が弱くて男の子と話もできない」
という女の子が、
「カミングアウトした」
ということで、風俗嬢になったという子も少なくはないだろう。
どちらにしても、
「男が、癒しを求めてやってくる」
という人が多いわけなので、
「癒しを与えたい」
と感じている人がいれば、それぞれに、
「利害が一致した」
ということで、
「疑似恋愛」
ということであっても、客としては、
「時間をお金で買う」
と考えれば、風俗に行きたいと感じるのも、無理もないことではないだろうか?
沢村も、
「癒しがもらえる」
ということと、
「ついでに、性処理をしてもらえる」
ということで、
「彼女ができない」
というのではなく、
「風俗嬢がいてくれれば、それだけで満足だ」
と思っていたのだ。
学生時代に、
「彼女がほしい」
と思ったのは、
「セックスの相手」
という気持ちがなかったのか?
といえば、嘘になるが、それよりも、
「彼女のいないやつに、うらやましい見られることが、至高の悦びだった」
というのが強かった。
そちらの方が、
「セックスという行為」
よりも強かったのだろう。
しかし、それでも、
「セックスの相手がほしかった」
と思うのは、
「その時まだ自分が童貞だった」
と感じるからに違いない。
だから、
「実際に童貞喪失」
というものをした時、年齢的に20歳になっていたということもあってか、
「先輩に頼る」
ということはしなかった。
もっとも、すでに、18歳くらいの頃から、
「二十歳になっても、童貞だったら、二十歳になってから、早いうちに、風俗で童貞を喪失する」
と決めていたのだった。
そもそも、
「風俗というものに、いやな気持ちを抱いている」
というわけではなかった。
中学時代までは、風俗というとどうしても、
「お金をもらって、身体を売る」
ということで、どこか、
「汚らしい商売だ」
と思っていた。
それは、きっと、昭和の昔のドラマなどを見て。
「裏でやくざとつながっている」
ということであったり、
「暴力団の資金源」
であったり、
「薬物売買の隠れ蓑」
というような印象があったからだ。
ただ、時代は
「平成から令和」
確かに、別の意味で、
「怪しい」
と言われるところがあった。
特に、
「ホストクラブ」
というものとのつながりを考えると、
「少し怖い」
というところもある。
これも、今のドラマの受け売りでしかないので、
「本当の事実なのかどうか?」
というのは分からないが、よくドラマや映画にされるパターンとして、
「ホスト通い」
をする女性が、ホストに乗せられて、
「一晩で数十万を使ってしまう」
しかし、お金があるうちはいいが、貯金を使い果たしても、ホストから、
「掛けでいい」
と言われ、借金をしてでも通い続けると、
「ホストから、脅されて金を要求されるようになる」
ということだ。



