三すくみの正体
「風俗遊びをするための言い訳では?」
という思いがあったのも事実で、
「風俗というものに対して、どこか偏見を持ってはいたが、それ以上に、期待をしていた」
といってもいいだろう。
「別に素人が相手だろうと、風俗嬢が相手だろうと同じではないか?」
と思うようになっていたのだ。
それでも、
「好きな人と最初はやりたい」
という気持ちが強かったのは当たり前のことだ。
だが、
「そんなに童貞ではなくなるということが、重要なことなのか?」
とも考えるようになっていた。
逆に言えば、
「好きになった人とセックスをする」
というのが、一つの流れだとすれば、その感動は、
「誰かに言わなければ、ただの自己満足で終わってしまう」
と思うだろう。
何も、
「自己満足が悪い」
といっているわけではない。
しかし、
「誰にも言わなければ、それは自己満足でしかない」
という思いが、
「自分の中でのジレンマだ」
と考えると、
「自己満足は、どこまで言っても、自己満足でしかない」
と考えると、
「何も、自己満足にこだわるのか、それとも、まわりを意識する必要などないと思うのか?」
ということを考えると、
「風俗だろうが、好きになった相手であろうが、童貞喪失ということに関しては、あまり関係のないこと」
とも思えるのだった。
もし、それを、
「必要以上に意識する」
というのは、
「セックスというのが、恥ずかしいこと」
ということであり、
「あまりまわりに話すことではない」
という一種の、
「モラル」
のようなものが邪魔することで、
「偏見というものが生まれてくる」
ということになるのだろう。
だから、今の風俗のように、
「セックスが好きだから、風俗嬢になった」
という女の子がいてくれる方が、
「癒しをもらいにいく男側」
としても、
「せっかくくれた癒しを、こちらも与えて挙げられればうれしい」
と感じることだろう。
それが、お互いに
「癒しあえる仲」
ということで、確かに、
「お金でつながった疑似恋愛」
ということかも知れないが、逆に、あまり対等になりすぎると、
「相手を束縛したくなる」
などということから、
「嫉妬」
であったり、
「猜疑心」
という、
「恋愛感情における、負の遺産」
というものが表に出てきて、
「ストーカー」
のようになってしまったりと、
「エスカレートしてしまう」
ということから、結果として、
「犯罪性を帯びる」
ことにもなりかねない。
あくまでも、
「お金と時間で契約された疑似恋愛だ」
ということであれば、
「必要以上の感情」
というものが生まれることはない。
逆に、いわゆる、
「自由恋愛」
の方が恐ろしく、実際に、
「警察の生活安全課」
に寄せられる相談というのが、結構増えていて、本当に、
「ストーカー殺人」
などというのが起こっている。
最近、
「風俗嬢がストーカーに殺された」
ということで、ニュースになったが、逆に、
「今までなかった」
ということの裏返しであり、
「契約が守られていた」
ということになるのか、それとも、
「風俗業界は別世界」
という意識があるのかのどちらかであろう。
別世界ということであれば、それはそれで問題ないといってもいいだろう。
だからこそ、
「風俗というものは、ある意味、必要悪なのかも知れない」
と言われるのではないだろうか?
「お金を払えば、性処理をしてくれる」
ということで、
「こういう業界があるから、実際の
「ストーカー犯罪」
であったり、
「痴漢」
などという性犯罪が、
「抑止されている」
ともいえるだろう。
しかし、逆にいえば、
「煽っている」
ともいえるわけで、それは、統計を取ったとしても、
「実際に、どれだけ信憑性のあるものなのか?」
というのは分からないだろう。
そんな中において、沢村は、最初に童貞を失った時のことを、
「最近思い出すようになった」
のであった。
「ひょっとすれば、今回の冤罪を予期していたのかも知れない」:
とも思えることで、
「脅迫される」
ということから、胸騒ぎがあったということであれば、
「これ以上皮肉なことはない」
といってもいいだろう。
デジャブ
二十歳の誕生日、それまでアルバイトをして、お金をためていた。
最近のソープは、昔のように、高額のお店ばかりではなく、
「1, 2万でもいける」
という、
「格安店」
であったり、
「大衆店」
というのもある。
しかも、早朝営業というのもあり、
「人が混まない時間、誰にも会うこともなく、気まずくない時間に行くことができる」
ということでもあった。
もっとも、
「堂々といく」
と思っているので、誰とも会わないということに関しては、さほど気になることではないのだが、どちらかというと、
「待ち時間が少ない」
ということであったり、
「口明けの時間に入れる」
ということで、
「その日の最初に相手をしてもらえる」
というのがありがたかった。
ちょうど、寒い時期だったので、早朝一番という、午前六時というのは、実にありがたかった。
電車も始発で、ほとんど人が乗っていない。
まだまだ夜で、空が漆黒の闇に包まれている状態で、歩いていると、
「眠らない街」
と言われているはずの街が、
「一日のうちで、唯一眠っている時間がある」
というのが、
「この時間なのだ」
ということを実感していた。
もちろん、予約を入れていたので、店の自動ドアを開くと、スタッフが受付に座っていた。
さすがに、おどおどとした態度に、スタッフも、
「この客は、風俗自体が初めてだ」
ということに気づいたのだろう。
「お客様は、初めてでいらっしゃいますか?」
と聞いてきた。
普段であれば、図星をつかれると、緊張がさらに増すものだが、その時は、逆に、
「安心した」
という気持ちにさせられたのだ。
というのも、
「最初から、初めてだ」
と思ってくれていた方が、
相手が気を遣ってくれる」
というもので、
「こういう初めてのところに行ったときは、遠慮せずに、自分から初めてだということをいう方がいい」
という人がいた。
「カミングアウトのようなものかな?」
と聞くと。
「ちょっと違っているけど、似たようなものかな?」
といっていたのを思い出した。
「なるほど、確かにカミングアウトだと思えば思えなくもないが、それ以上の何かを感じられる気がする」
と感じたものだ。
というのは、その時スタッフが、
「にっこりと笑った」
のである。
もし、これが、偏見を持っているものだとすれば、
「唇がゆがんだように見える」
というもので、その正体は、
「相手が完全にこちらを下に見ている」
ということであろう。
つまりは、
「この男は、どのようにでも、料理ができる」
ということだからだ。
ただ、これは、あくまでも、
「スタッフに対して」
ということであり、対面した女の子に対しては、
「どうにでもして」
といってもいいくらい、



