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腐食の後悔

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「そもそも、煽るために、不気味さを演出することで、迷っている間に、その演出の効果がなくなってしまう」
 ということからであろう。
「煽り」
 というのは、ある程度までは効果があるのだろうが、ある一定の状況を超えてしまうと、
「騙された」
 という意識が強くなるということから、
「まったくの、逆効果になる」
 といってもいいだろう。
 そんな状態において、
「煽り」
 というのが、どういう影響を与えるのか?
 ということを考えるのは、必要なことであろう。

                 ラブホでの殺人

「ダイニングエンタープライズ」
 の、
「不正献金」
 という事件が発覚したのは、
「タイミング的には、ちょうどいいタイミングだった」
 といってもいいかも知れない。
 ただ、
「結局はバレた」
 というわけなので、本来であれば、
「吉岡専務としては、へまをやった」
 と言われるかも知れないが、実際には、
「バレない方がおかしい」
 というくらいに、大っぴらなことをやっていた。
 それは、そもそも、まだ吉岡専務がかかわる前のことで、
「私が最初から関わっていれば、こんなひどいことにはならなかったはずなのに」
 と自他ともにそう言い切れるだろう。
 しかし、実際に発生してしまったことは仕方がない。
 何とか隠蔽しようということもできなくはないが、
「へたに隠蔽しようとすると、却ってややこしいことになる」
 という話もあれば、
「吉岡もそう思っていた」
 ということである。
 だから、
「ある程度まで、隠しきれるところまでは隠蔽するが、ダメだと思った時は方向転換することで、どこまで引っ張ればいいのか?」
 ということが問題となるのだった。
 そういう意味で、
「落としどころ」
 ということで、どこまで引っ張ればいいのかということになるが、それも、
「一番被害が少ない」
 という場面であるとは限らないと感じていた。
「すべてを丸く収める」
 ということなどできるはずがない。
 全体的に見て。
「一番被害が少ないところ」
 と考えるのは、確かに間違いではないが、
「復興する際に、必要なところが、まったく壊滅してしまっていれば、いくら、被害が少ないとはいえ。元に戻すための労力であったり、費用は、ハンパではない」
 といってもいいだろう。
 それを考えると、
「安い考え」
 というのは、命取りになるだろう。
 そういう意味で、
「吉岡という男の判断力や、目の付け所は十分に備わっている」
 ということで、
「吉岡のいうことに従う」
 というのが、一番だというのは、
「会社全体の意見」
 ということであった。
 だから、吉岡のやり方は、
「ほとんど、完璧」
 ということであった。
 ただ、
「まったくの血を流さない」
 ということは不可能であり、
「誰かが犠牲になる必要がある」
 ということで、体のいい言い方をすれば、
「誰かを生贄にして、その人に責任を押し付ける」
 という方法は、どうしても仕方がないということである。
 しかし、それはあくまでも、
「会社のため」
 ということで、
「会社の損害を少しでも減らす」
 ということを目的にしているので、
「それ以外のところには、まったく気を配っていない」
 といっても過言ではない。
 それによって、いかなることが起ころうとも、会社は、
「吉岡を信じるしかない」
 ということになる。
 実際に、
「誰を生贄にするか?」
 ということも決定し、
「なるべく、その人には、報いてやれる」
 ということにしておかないと、
「何が起こるか分からない」
 ということは分かっている。
「へたをすれば、逆恨みされる」
 ということだってあるわけで、
「何とか報いる」
 ということで、とりあえずは、
「子会社への出向」
 という形にしたのである。
 これは、
「刑事事件」
 ということでもなく、特捜としても、
「どうせ、それくらいのことはやるだろう」
 ということが分かっているので、吉岡としても、
「それくらい、特捜でも分かっているだろうから、それだったら、ご期待に沿えないとな」
 ということであった。
 つまり、
「相手が考えていることをそのまま行うというのは、相手が書いた筋書きに乗っている」
 ということで、それ以上になにかあったとしても、相手も、それ以上のことを詮索したりはしないだろう。
 と考えるに違いない。
 それこそ、
「狐とタヌキの化かしあい」
 といってもいいだろう。
 お互いに、騙しあいをしながら、相手が、こっちの想定通りに動いていれば、
「安心する」
 というのか、
「間違っていない」
 と思うことで、
「相手を何ら疑う必要もない」
 と考えることが分かっている。
「さすが、警察は公務員なだけあるな」
 と考えさせられる。
「よほど、頭の切れる刑事でもいないと、こっちの思いのままだ」
 とまで、吉岡は考えたりしていた。
 確かに、吉岡という男は、
「「頭が切れる」
 ということと。
「その場の判断力に長けている」
 ということでは、誰も右に出る者はいないだろう。
 そういう意味では、この男以外に、この仕事はできない。
 しかも、
「裏の顔」
 も、持っているということで、
「駒も豊富だ」
 ということになる。
 そういう意味で、吉岡ほどの適任者はおらず、吉岡以外には考えられない。
 だとすれば、
「吉岡にできないのであれば、他の誰にできるはずもない」
 とまで言えるのだ。
 だから、
「吉岡でダメなら、諦めるしかない」
 あるいは、
「吉岡と心中するしかない」
 というくらいに、腹をくくらないといけないのであった。
 今回の場合は、
「確かに吉岡の方法は、この場合において、最良の方法であった。たいていであれば。これで解決ということになるだろう」
 と思われたが、吉岡と言えども、その相手の男の性格の、奥深く、潜在している部分にまで目がいかなかったといえるだろう。
 ターゲットを決めた時、もちろん、その男の性格については、調べるくらいのことはしている。
 同僚などの話を聞いたりして、情報は集めていた。
 実際に、
「どんな人間か?」
 ということも観察していたので、
「見た目は静かなタイプの人間で、決して争いを起こすようには見えなかった」
 要するに、
「目立つようなことは決してしない」
 というタイプだといえるだろう。
 だから、吉岡も、
「この男なら大丈夫だ」
 と思ったのだ。
 実際に、まわりの人に聞いても、
「そうだな。あいつは、人がいいというのか、気が付けばいつも自分が悪者になっているということが多くて、見た目がかわいそうに思うんだけど、それが、あいつの運命なのかって思うと、気の毒だとは思っても、かわいそうだとは思えないかな?」
 ということであった。
 つまりは、
「本人も、そんなものだと思っているのかも知れないな」
 と思えば、
「これほどの適任はいないのではないか?」
 と思うのだった。
 彼の名前は、
「西郷」
 という課長であった。
 管理本部の、経理課長をしていたが、
「うだつが上がらない」
作品名:腐食の後悔 作家名:森本晃次