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腐食の後悔

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 と思っているようだった。
 これも、専務のやり方というものであった。
 この専務は、名前を、
「吉岡」
 といい、今年、47歳になるが、彼が、
「裏稼業に興味を持ったのは、ちょうど、バブル崩壊前後」
 くらいだったようだ。
 当時は、彼が会社に入った頃というと、
「バブル崩壊」
 というような時代で、
「就職難」
 などという言葉が、
「生易しい」
 と呼ばれるくらいの時代であり、
「本当に、就職氷河期」
 という頃であった。
 若い頃はそれこそ、日雇いバイトのようなもので食いつなぎ、途中から、派遣会社に登録し、派遣社員として働いていたものだった。
 そんな時、ひょんなことから、
「派遣会社の裏」
 というのを知るきっかけがあった。
 もっとも、それを知ったところで、
「自分が何とかできる」
 というわけではない。
 もし、それこそ、裏ルートを使って、マスゴミに売るということでもしないと、
「自分の命が危ない」
 ということくらいは分かっていた。
 そういう意味で、必要なのは、
「裏ルート」
 というものと、裏の人間に信頼される
「実力」
 というものである。
 そもそも、
「裏ルート」
 を確保できていれば、それこそが、
「信用につながり」
 実質的な
「実力」
 ということになるだろう。
 つまり、
「実力というのが、表に出ているものであり、信用は。それを文字通り裏付けるというべき、裏の力」
 ということになるのだろう。
 それを考えると、
「社会で生きていくための手っ取り早い方法は、裏を握ることだ」
 ということに、吉岡は気が付いたのだ。
 だから、派遣社員で働きながら、自分なりの、裏ルートを知ることで、裏とつながり、その中で、
「この人は」
 と思える人に対して。必死にしがみつくことをすることで、その人からの信頼を得ることができれば、成功したといってもいいだろう。
 つまり、
「誰か一人の人間を自分のスポンサーや、フィクサーにしてしまえば、いずれは、そのルートからも、自分のルートが出来上がり。それこそ、後継者でありながら、後継者以上の実力を備えた力となり、君臨することができるのだ」
 しかし、その時に、
「目立った行動」
 というのは厳禁である。
 それこそ、
「影に徹する」
 ということが必要なのだ。
 それこそ、
「忍びの棟梁」
 とでもいうべきか、
「裏に徹すれば、裏にしか見えないことが見えてくる」
 というもので、
「裏に徹する」
 と感じた瞬間から、欲というものがなくなり、
「裏に徹する」
 ということだけが、
「己の欲」
 ということになるであろう。
 それが、
「吉岡」
 という人間の考え方であり、そういう意味で、
「経営コンサルタント会社」
 としての、
「ダイニングエンタープライズ」
 という会社の
「完全なる影の会社」
 というものができたというのは、
「吉岡専務でなければ、成し遂げられないことだ」
 といってもいいだろう。
 そういう意味で、
「影の会社」
 というのは、吉岡にとっては、あくまでも、
「隠れ蓑」
 といってもよく、役職であったり、金というものでさえ、
「利用できるもの」
 ということで、
「世間一般」
 の人がいうところの、
「欲得」
 というものとは、
「種類が違う」
 といってもいいだろう。
「実際に、影の会社」
 ということで作り上げた、
「オシ・コーポレーション」
 というのであるが、この名前は、会社が
「忍び」
 を模しているということで、
「忍びという言葉の別の呼び方としてのオシ」
 というものからつけたものだった。
 もちろん、他の人は。
「妙な名前だな」
 とは感じながらも、その名前の由来については、誰も、言及しようとは思わなかった。
 本当は、
「柳生か、服部、さらには、風魔」
 あたりも考えたというがl、
「これではあんまりわざとらしい」
 ということで、
「オシ」
 ということにしたのだという。
 とにかく、吉岡という男は、
「子供の頃から、何事にも徹した考えを持っていて、こうと思えば、考えを変えることはしない」
 という男だったという。
「頑固というのは、少し違っていて。目的達成という意味で、妥協をすることなど、決してしない」
 というタイプの男なのである。
 そんな
「オシ・コーポレーション」
 は、まだ、
「ダイニング・エンタープライズ」
 が損座していた頃から、その存在はあった。
 とは言っても、
「社員の頭数がそろっているだけで、登記だけはされている
 という、一種の、
「幽霊会社」
 であった。
 当然事務所を借りる必要があったのだが、それは、
「ダイニング・エンタープライズ」
 が、経営不振のために、閉鎖した一営業所に、
「少ししてから入った」
 ということであった。
 すぐに入ってしまうと。いくら、
「影の会社」
 ということで、かかわりがないと思われているとしても、安心はできない。
 それを思えば。
「この会社は、ダミー会社だ」
 というくらいに思わせておくことの方が、却っていいと考えたのだ。
「隠そうとすれば、かえってぼろが出る」
 というのが、普段から、
「影に徹する」
 ということをモットーにしている、吉岡らしいと言われるゆえんであった。
 だから、
「ホシ・コーポレーション」
 という会社の設立の際、特捜をごまかすことができたというものであった。
 とにかく、この、
「吉岡専務」
 という男の手腕は、かなりのものであり、
「ダイニングエンタープライズの社長」
 というのも、一目置いていたといってもいいだろう。
 しかし、
「さすがに、経営コンサルタント経営者である社長だけのことはある」
 ということで、彼は
「吉岡に対して。信頼はしていたが、全面的に信用していた」
 というわけではない。
 むしろ、
「怪しからずの人間だ」
 と思っていたようだ。
 もっとも、それくらいでないと、
「経営コンサルタントの経営はできない」
 というものであったが、実際に、吉岡も、
「自分は信用されていない」
 ということを分かっていた。
 だからこそ、
「利用しやすい」
 と思っていたのだろうし、この考えが、
「お互いに、うまく歯車を動かせる秘訣なのだろう」
 と、お互いに思っていたのだ。
 それがあるから、二人の間に、今回のような、
「オシ・コーポレーション設立」
 という作戦が成り立ったのだし、お互いに何も言わずとも、
「ツーカーの仲」
 ということになるのだろう。
 どちらも、
「海千山千」
 お互いに警戒はしあっているが、攻撃的ではない。
 それが、お互いにうまくいく秘訣ということで、
「熟知した仲だ」
 ということになるだろう。
 ただ、
「特捜が捜査に入る」
 という話は、さすがに最初は、
「寝耳に水」
 ということで、社長も、吉岡専務も。ビックリしたようだ。
 ただ、すぐに吉岡は冷静さを取り戻すと、
「そもそも、こういう時のために、今まで、影に徹してきた」
 ということを考えると、
「ますますやる気になった」
 ということd、
「これこそ、俺の真骨頂だ」
 と考えたことである。
作品名:腐食の後悔 作家名:森本晃次