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昭和からの因果応報

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「そうですか。わかりました。お忙しいところ、誠に申し訳ありません」
 といって引き上げようと、役所の入り口を出て、車が置いてある駐車場に向かっていたその時、後ろから一人の職員がやってきて、
「刑事さん」
 と声を掛けてきたのであった。
 今にも車の扉を開けて、乗り込もうとしていた時だったので、びっくりして振り向くと、
「どうしたんですか?」
 と言いながら、一度開けた扉を閉めたのだった。
「さっきお尋ねだったのは、刑部さんのことですよね?」
 というので、
「ええ、そうですが、刑部さんは、連絡をしてこなかったという主任さんの話でしたけど?」
 というと、掛けてきた職員は、少し罰が悪そうな表情になり、
「ええ、大っぴらには、そういうことになっています。でも、実は、刑部さんの相談を受け付けたんですよ。それを受け付けたのは自分ですが」
 という。
「でも、主任さんは受け付けていないと言われましたよ」
 と刑事がいうと、
「それは、あくまでも、受理していないというだけのことで、相談自体には来られていたんですよ」
 というのだ。
「なるほど、書類だけを見れば受け付けていないのだから、自分が対応していないと分かるはずもないですよね」
 と刑事が言った。
「ええ、そうなんです」
「でも、相談に来られた事実があるのであれば、少なくとも、対応したのであれば備忘録という形で残っていても不思議はないんですが」
 というと、
「これは、警察の方であれば分かると思うんですが、対応予定のないものまで受け付けると、実際に対応済みの確率が下がってしまうじゃないですか。つまりは、処理率が低いということで、問題になるのを恐れていて、受付だけなら、証拠を残らないようにしているんですよね」
 ということであった。
「なるほど」
 と刑事は言ったが、それこそ警察における、
「検挙率の問題」
 というのと同じことではないだろうか?
 それを考えると、
「警察というものが、組織的に、ごまかしというものをしているのか?」
 ということになると感じるのであった。
 市役所の職員の言い方にも、どこか、
「剣がある」
 という表現になっている。
「自分たちも似たようなことをしている」
 という意識があるからか、
「自分たちと同じである警察という組織を嫌うことで、まるで、反面教師であるかのように考える」
 ということになるのであろう。
 しかし、
「署員一人がいくら抗ったところで、組織として動いているものがどうなるものでもない」
 なんといっても、
「警察という組織は、どうにもならないしがらみ」
 というものがあり、
「自分がやりたいと思うことをしたいと思えば、出世するしかない」
 ということであるが、それも、
「一部のキャリア組」
 に対して言えることであり、キャリア組というのは、
「現場を知らない」
 ということで、結果、
「本当にい市民のための警察にするには、元々の現場からのたたき上げが、キャリア組並みの出世ができないと無理だ」
 ということを考えると、
「警察組織というものを根本から変えない限りは、どうしようもない」
 ということになる。
 それこそ、
「最近の刑事ドラマ」
 などで人気シリーズになる題材だといってもいいだろう。
 警察というものを通して、
「社会の理不尽さ」
 であったり、
「勧善懲悪」
 というものを、
「いかに貫くことが難しいか?」
 ということであったり、さらには、
「最近においての、コンプライアンス違反」
 であったり、
「組織的な力」
 というものを
「いかに重んじるか?」
 という、ある意味、
「矛盾した内容というものを含んでいる」
 という内容のドラマが受けたりするのであった。
 特に最近は、警察に限ったことではなく、ドラマを作る中において、
「その矛盾」
 というものを解明したり、浮き彫りにすることで、
「視聴者の関心を深める」
 という番組が多かったりする。
 表現はいささか違うが、
「ギャップ萌え」
 というものと近いところがあるかも知れない。
「ドラマなどは確かに、テーマとなる課題のようなものがあり、それに対して、普通に考えられる内容での解決ではなく、意表を突く解決というのも、視聴率を稼負ことになる」
 といえるだろう。
 昭和の頃は、どちらかというと、
「熱血青春物語」
 であったり、
「学園もの」
「スポーツ根性もの」
 ということで、そのほとんどが、同じパターンであることが喜ばれた。
 特に、人間の心理として、
「絶対的な感情」
 というもので、
「勧善懲悪」
 であったり、
「日本人の特徴として言われる」
 ということの中で、
「判官びいき」
 なるものがあるというものだ。
 要するに、
「弱いものの見方」
 という考え方である。
 それだけ、まっすぐな考え方が受けたといってもいい。
 しかし、それは、時代が、
「高度成長」
 というものから、
「バブル経済」
 という好景気に浮かれ、
「頑張れば頑張っただけ成果」
 というものが生まれ、
「努力は裏切らない」
 と言われた時代だったからだ。
 しかし、
「バブルの崩壊」
 というものから、
「絶対」
 と言われていた、たとえば、
「銀行は破綻しない」
 と言われたことに言及するように、
「それが嘘だった」
 ということになれば、
「何を信じていいか分からない」
 と感じ、それこそ、

「勧善懲悪」
 であったり、
「判官びいき」
 という感情も、
「まるで、絵に描いた餅のようだ」
 ということになるだろう。
 だから、余計に、
「コンプライアンス違反」
 というものや、
「ハラスメント」
 というものに眼を向けたドラマが流行るようになり、
「刑事ドラマ」
「医療系のドラマ」
 などというのが、ずっと変わらずの人気シリーズということになるのだろう。
 自治体に登録はないようだったが、よく聞いてみると、
「その人でしたら、最初こちらで受付をして、対応する予定だったんですが、親戚の人がいうので、こちらも登録することなく、たぶん、入院しているはずだと思いますよ?」
 と言われ、
「どこの病院ですかね?」
 と聞くと、
「県立病院ということでしたね」
 というので、。
「痴呆症か何かですかね?」」
 と聞いてみると、
「いえいえ、そういうことではないようで、ただ、精神疾患が元々おありになるということでしたので、ひょっとすると、病院へは過去にも入院したことがあるのかも知れませんね」
 というのであった。
 それにしても、確かに
「奇声を挙げた」
 ということだったので、病院への過去の入院歴があったとしても不思議ではない。
「むしろ、入退院を繰り返していたのではないか?」
 と、捜査員は感じた。
「彼とすれば、最近、精神疾患に陥る人が増えているということは分かっている」
 と思っている。
 実際に、身内にも、
「精神疾患」
 といえる人がいたりする。
 その人の病名とすれば、
「双極性障害だ」
 というのだ。
 しかし、精神疾患というのは、一つだけということはあまりない。
 むしろ、
「いくつかの合併症を患っている」
 といってもいいだろう。
作品名:昭和からの因果応報 作家名:森本晃次