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表裏のスパイラル

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「誰でもいいから、金を出しそうな人を脅迫して、金を取る」
 ということを考えるのだ。
 そういう意味では、
「復讐が動機」
 というよりも、切羽詰まっているということで、犯罪計画も、かなり、がさつなものだといえるのではないだろうか?
 へたをすれば、
「穴だらけの計画」
 ということになるかも知れない。
 ただ、逆に、
「切羽詰まっているだけに、頭の回転と犯罪計画を練るスピードの歯車が合う」
 ということになれば、思いもよらないところで、
「完全犯罪」
 というものが成立するような計画が出来上がるかも知れない。
 しかし、
「脚本としては、完璧かも知れないが、俳優であったり、監督としては、三流だったりする」
 と考えると、
「完全犯罪」
 というのは、なかなか難しいといえるだろう。
 さらに、
「営利誘拐において、一番逮捕される可能性が高い」
 と言われるのは、
「身代金の受け渡しの瞬間」
 ということだ。
 犯人とすれば、受け渡しを、細かく指定するはずだ。
「身代金の額や、その用意の仕方」
 ということである。
 例えば、
「五千万円であれば、すべてを千円札にして、カバンをいくつかに分ける」
 ということで、
「受け渡しを数か所指定してくる」
 というやり方をする場合である。
「一か所でも成功すればいい:
 と思っているのかも知れないが、逆にいえば、
「それだけ、犯人が逮捕される可能性は高い」
 ということになるだろう。
 ただ、これも、身代金を受け取る人間が、
「事件には関係ない」
 という、
「何も知らない人間」
 ということであれば、犯人が身代金を受け取る段取りさえ間違わなければ、何とかなると犯人側が考えていたりするかも知れない。
 ただ、身代金受け渡しの場面に、
「まともに犯人が現れる」
 というのは、それこそ、
「受け渡しの場面が一番逮捕される可能性がある」
 ということで、犯人も用心しているに違いない。
 ただ、この犯罪の特殊性は、ここにあるわけではない。
「犯人の目的」
 というものと、
「警察や被害者側の目的」
 というものが違っているということだ。
 というのは、
「犯人の目的」
 というものが、文字通り、
「身代金」
 ということであれば、
「お金を受け取る」
 ということがその目的であり、逆に、
「復讐」
 ということであれば、
「最終的な目的は分からないが、少なくとも、被害者が、気が狂いそうなくらいに苦しんでいるという姿を見る」
 というのが目的なのだ。
 しかし、犯人の目的が何であれ、警察や被害者の目的は、
「お金」
 でも、
「苦しめられない」
 ということでもない。
「誘拐された子供が無事に戻ってくる」
 ということであった。
 だからこそ、被害者は、
「身代金を渡してでもいい」
 と思うことだろう。
 そうなると、問題は、
「身代金を渡したからといって、子供が無事に帰ってくる」
 という保証などどこにもないからだ。
 もし、犯人側が、
「ドジを踏む」
 ということになり、子供に顔を見られたということであれば、
「生かして帰すわけにはいかない」
 ということになるだろう。
 そうなれば、
「誘拐目的」
 というものが、
「殺人事件に発展する可能性も高い」
 といえるに違いない。
 なんといっても、昔の誘拐で、電話を使うというのは、今の、
「携帯電話」
 であったり、
「スマホ」
 などが全盛の時代では、考えにくいことであろう。
 昔であれば、せめて、
「車の中に、電話がついている」
 というくらいで、電話は、
「固定電話しかない」
 といってもいいだろう。
 となれば、脅迫電話が掛かってきた瞬間、いくら犯人が、
「警察に連絡すれば、人質の命はない」
 と言ったところで、警察に連絡される可能性は高いと考えることだろう。
 なんといっても、いくら金持ちでも、家の固定電話で、
「逆探知」
 というものができるわけはないということである。
 警察にだけ、
「逆探知の機械」
 というものがあり、このような、
「営利誘拐」
 という事件のために使うということが許されているということだ。
 そして、その
「逆探知」
 というやり方であるが、昭和の頃であれば、かなり、仰々しいものであった。
 被害者の固定電話に、逆探知のための回線をつなぎ、それを、表に駐車したワゴン車の中で中継し、警察の中にあったのか、それとも、当時の、
「電電公社」
 の中にあった
「逆探知のための装置」
 というものを、警察が緊急で使い、逆探知を行うということになるのだ。
 逆探知を行う場合、まず、電話が掛かってきた時、警察側で準備を行うため、電話に出るタイミングは、捜査員が指示することになる。
 そして、被害者が電話に出ると、普通に話をさせながら、逆探知を行う施設に対して、
「逆探知をお願いします」
 ということで依頼することになるのだ。
 しかし、今のような、
「GPS機能」
 などがあるわけではない。
 今の
「GPS」
 というのは、
「人工衛星による探知」
 によって、瞬時にして探知できる仕掛けになっているが、昭和の頃というと、まだまだ人工衛星の数も少なく、
「衛星を使っての位置情報を得る」
 などという発想はまったくなかった。
 それこそ、
「近未来のできごと」
 といってもいいだろう。
 それこそ、
「コンピュータ」
 というものが、
「近未来のアイテムだ」
 と言われていた時代だったからである。
 だから、警察が、
「逆探知をお願いします」
 といって依頼してから、警察が逆探知に成功するまでに、かなりの時間が掛かる。
 だから、刑事は被害者に、
「電話が掛かってくれば、できるだけ話を引き延ばしてください」
 というのだ。
 実際に、犯人も警察が入って、逆探知くらいのことは計算に入っているだろう。
 だから、
「逆探知をされても、捕まることはない」
 というように、何も、バカ正直に、自分の家から電話を掛けるようなへまはやらないだろう。
 今ではだいぶ少なくなってきたが、昔であれば、かなりいろいろなところにあった、
「公衆電話」
 からかけるということが頻繁だったに違いない。
 そうなれば、逆探知に成功したとしても、
「〇〇町二丁目の公衆電話」
 という情報しか得られない。
 そうなると、警察とすれば、
「どうせ今から駆けつけても、犯人はどこかに消えてしまっているに違いない」
 と考えると、
「逆探知」
 というのは、あまり意味がないといえるのではないだろうか?
 そうなると、捜査とすれば、
「電話があった時間、誰が電話をかけていたのか?」
 ということの聞き込みくらいしかない。
 当然、誰かが見ていたとしても、その直後でなければ、その証言に信憑性はないだろう。
 時間が経てば経つほど、証言は曖昧ということになり、へたをすれば、
「その証言に振り回される」
 ということになるに違いない。
 それを考えると、
「昔の営利誘拐」
 というのは、
「成功するしない」
 というのは分からないが、少なくとも、
「犯人を逮捕する」
 ということは難しいのではないか?
 つまりは、
作品名:表裏のスパイラル 作家名:森本晃次