表裏のスパイラル
ということになり、
「一発で、一つの国が壊滅する」
という兵器を、それぞれで撃ち合えば、それこそ、世界は滅亡するということになるのだ。
当時の世界では、
「超大国」
という2大大国が核兵器を所有していて、
「核開発競争」
というものを行っていた。
それも、
「核の抑止力」
ということを信じていたからである。
「持っているだけで、平和が守れる」
という、いわゆる。
「神話」
と呼ばれるたぐいであり、
「こっちが打てば、確実に相手を滅亡させることができるが、逆に相手も打ってくるわけで、結局、どちらも滅亡する」
ということになる。
しかも、
「二次災害」
ということで、
「放射能汚染」
という問題があり。
「空気が核にて汚染されることで、地球上で、人が住めるところがなくなる」
ということになるだろう。
まさに、
「核爆弾で即死しても地獄。生き残って、地上で息絶えるのを待つばかりというのも、地獄」
ということになるのだ。
だから、核兵器が開発された時、
「これで、戦略的な戦争はなくなった」
と言った人がいたが、あくまでも、
「抑止力」
ということで、
「持っているだけで、使わなければいい」
という、
「核の抑止力」
という言葉が、
「平和」
というものの代名詞であるとばかりに言われる時代になったのであった。
ただ、
「それは間違いだった」
と言われる時代が来た。
というのは、
「核の抑止力」
というのは、実に薄い氷の上で保たれているだけのもので、ちょっとした誤解や行き違いによって、いつ戦争が起こるか分からない。
という、
「薄氷を踏む」
という状態であることに気づいたのだ。
しかし、実際に、
「核の抑止力」
というものを信じていた時代。
「少しでも、相手よりも破壊力のある兵器を開発する」
ということで、世界的な優位に立つと考え、
「政治的なカードに使う」
と考えたことで、
「無限の、核開発スパイラル」
というものが起こったのであった。
それは、完全に
「負のスパイラル」
ということであり、たぶん、その
「核の抑止力」
という言葉を神話として信じた人からすれば、
「負のスパイラル」
という言葉が、
「核戦争では起こりえない」
という、それこそ、
「お花畑的な発想」
ということになったのであろう。
確かに、
「討ってしまえば終わり」
ということは分かっているのに、どこに、
「核の抑止力」
というものを信じることができるというのか。
そもそも、核開発で戦争を抑えるということができるのであれば、最初から、
「戦争という手段ではない方法で、国際紛争を解決する」
ということを考え、実際に、その方法が考えられているはずである。
当然、
「戦争など誰がやりたいというのか?」
ということで、
「外交努力」
というものに力を注ぐことになるだろう。
しかし、
「それぞれの国が、それぞれに自由で平等である」
ということであれば、
「争いなど起こるはずがない」
といえるのだ。
「地理的な状況」
などから、自然発生的に、差別が生じ、不公平ということになる。
といえるだろう。
それを解消しようとすると、どうしても、
「紛争」
というものが不可欠になり、それが、太古から、まわりの国に派生するということで、
「侵略戦争」
というものが起こってきたのだ。
そんな時代だから、
「戦勝国」
というものが、
「敗戦国の住民」
を、奴隷にするということが平気で行われるということだ。
ただ、この、
「核の抑止力」
というものも、三すくみのように、
「三つの力の均衡」
といえなくもないのではないか。
力の均衡というものは、それぞれの国家と結びつく形で、
「核兵器」
という均衡を誘うと思われたものが存在することで、実は。
「三すくみのような関係になるのではないか?」
といえる気がする。
三すくみというものが、いかに、本当は、三すくみのように、きちんと制御できるというものであるとすれば、
「核の抑止力」
というのが、世界を救うということになるのかも知れない。
一週間後に舞い込んだ脅迫状は、同じF県内にある、
「H警察署管轄」
に送られてきたものであった。
こちらも、
「誘拐をする」
とは書かれていたが、実際に、身代金においては一切書かれていなかった。
それよりも、
「まるで復讐を思わせる」
というものであることと、
「同じ県内において、一週間前に、別の脅迫事件がある」
ということから、
「いたずらや酔狂ではない」
という考えに至ったことで、捜査本部は一応別々に作られたが、それぞれに、
「連絡を密にする」
ということで一致した。
県警本部の捜査一課が、それぞれの警察署に、結構な人数を割いてやってきたのは、それだけ、
「事件の重大さ」
というものを感じている証拠だといってもいいだろう。
そんな時、老練の刑事が一人、危惧しているということがあった。
名前を早川刑事というのだが、年齢とすれば、
「そろそろ定年を迎えてもいい」
という刑事で、K警察に勤務していた。
ただ、彼は、かつては、H警察署にもいたことがあったので、今回、
「H警察署でも、脅迫状が届いた」
ということで、不意に思い出したことがあったのだ。
その危惧に関して、K警察署の副署長に話をしたが、すぐには取り合ってはくれなかった。
その副署長というのは、以前同じ時期に、
「H警察署」
にいたことがある人で、自分の危惧を一番よく分かってくれつと感じていた人であった。
そこで、早川刑事は、
「おや?」
と思った。
副署長は、早川刑事よりも、4つほど年下であった。
ノンキャリアということで、副署長にこの年齢でなれたというのは、
「出世街道を慌てることなく、普通に進んできた」
ということであろう。
早川刑事とすれば、
「別に出世する必要もない」
と思っていた。
「出世するよりも、現場にいる方が性に合っている」
という、それこそ、
「昭和の刑事」
というものを地で言っているといってもいいだろう。
「早川刑事は、別に昇進試験を落ち続けている」
というわけではない。
「試験を受けないだけ」
ということである。
まわりから見れば、
「ちょっと勉強するだけで、簡単に試験なんかパスするんだろうけどな」
と皆が思っていた。
なんといっても、記憶力や解釈力はすごいもので、推理に関しても、
「ちょっとした理路整然とした考えを持つだけで、推理はできるというものだ」
と、若い頃は、どういってうそぶいていたということだ。
しかし、
「有言実行」
の早川刑事なのだから、誰に何を言われようとも、早川刑事は、気にすることはないのであった。
「これほどの説得力を持った人はいない」
ということで、捜査会議などで、早川刑事が口を開くのを皆が待っているという感じであった。
「これで事件は解決だ」
といってもいいほどの推理に、誰もが舌を巻く。
逆にいえば、