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夕凪の時間

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 さらには、彼女としては、
「自分の肉親を見ている」
 というわけではなく。
「どちらかというと、まるで自分の分身を見ているような気がするの」
 というではないか?
「まるで、反面教師とでもいうような感じなのかい?」
 とオーナーが聞いてみると、
「いえいえ、もう一人の自分を見ているような気がするのよ」
 というのだ。
「じゃあ、ドッペルゲンガーのような感じなのかな?」
 と聞くと、
「それもちょっと違っているといった方がいいかも知れないわね」
 というのだ。
「ということは、共通点はあるという発想なのだろうけど、決して交わることのない平行線のような、一種の結界のようなものがあるということになるのかな?」
 というと、
「そうかも知れない」
 と答えるのだった。
「それにしても、君はまだまだ若いのに、昭和に興味があるのかい?」
 と聞くと、
「ええ、昭和なんて、本当に教科書でしか見たことがない、ただの歴史の一ページでしかないんだけど、何かの魅力を感じるのよ。特に、戦前や戦後の頃というと、さらに古い時代に想えて。そこで、本当は時代が変わっているのだから、どうして違う時代として認識させなかったのかしらね」
 というのだ。
「それは、天皇が変わっていないから」
 という、当たり前の話をすると、その瞬間、彼女が悲しい顔になったことで、それ以上は、
「何かを口にしてはまずい」
 と思ったのか、オーナーは、そこで口をつぐんだ。
 しかし、そのことに関しては、彼女は何も問題にしているわけではなく、
「それは分かっているわ。でも、天皇制だって、君主制から、象徴性に変わったわけでしょう? だったら、年号はそのままでも、時代ということでいえば、分けたとしても、いいんじゃないかしら?」
 という。
「それもそうだね」
 とオーナーがいうと、
「だって、占領軍から、歴史認識を変えるように押し付けられたわけでしょう? だったら、まったく別の時代としたっていいんじゃないかしら? できない理由でもあるというのかしらね」
 という。
 さらに、彼女は続ける。
「だって、あの戦争だって、最初は、大東亜戦争ということで、日本国内で、戦争の大義名分ということで、大東亜共栄圏を使うためだったわけで、それを占領軍が、使ってはいけない言葉ということにしたのだから、日本はその時に変わったということであれば、戦前戦後で違う国になったわけだから、時代を変えてもいいと思ってね」
 というのだった。
「なるほど」
 といってオーナーが納得すると、今度は、逆に、自分の言葉に逆らうかのような、おかしな表現を始めた。
「いや、やっぱり違うわ」
 と言い出したのだ。
「何が違うというんだい?」
 と聞くと、
「そもそも、当時の日本には、まだまだ天皇を崇拝する人がいて、天皇を処刑すると、統治ができなくなるということで、天皇制を残したのだから、ここで、時代の違いというものを、占領軍が示してしまうと、日本国民の反感を買うかも知れないということになるでしょうね」
 と彼女はいうのだ。
 彼女は、最初に、
「自分の意見を正しい」
 として話をしておいて、
「一度覆す形の、正当性のある意見を、まるで、免罪符のように使い、さらに、反対意見をいうことで、こっちの方が正論だ」
 とでもいうかのように、
「正論を、免罪符で隠す」
 というやり方をしているのであった。
 そう、彼女のやり方としては。
「自分の意見を話す時、自分では、正論だ」
 と思っているにも関わらず、
「それを一度、別の意見で隠し、そこから、正論と思えることを、正論と思わせない」
 というような方法ということで、
「他の言葉を使う方法」
 ということで、
「免罪符」
 のようなものを用意しているということであった。
 そんな彼女のやり方に、真っ向から、
「反対意見」
 というか、
「反対意見ではないが、自分の発想を正しい」
 ということでは同じ理屈なのだが、正当性を表す発想が違っているということから、
「お互いに、交わることもない平行線」
 というものを描いているのであった。
 彼女が、どういう論法の考え方であるのと同じで、老人も、
「頑固なところがあり、そのくせ、相手の考えを見抜く」
 ということであったり、
 その考え方に、
「必ず最初はリスペクトをする」
 ということから、
「結局、最終的に交わることがない」
 ということであれば、
「徹底的に言い争う」
 ということになる。
 しかし、正反対に、
「意見が絶えず平行線」
 というものを描き、
「限りなくゼロに近い」
 という、
「無限ループ」
 という考えを示すのであれば、
「その人とは、絶えず発想に制限がない」
 ということで、結果的に、
「一度言い争ってしまうと、無限にかみ合わない」
 といってもいいだろう。
 つまり、
「一度かみ合えば、離れることがない相手だとしても、一度かみ合わなくなると、二度とかみ合わない」
 ということになるのだ。
 それを、
「意見がかみ合うはずだ」
 と思っている二人は、かみ合わないことに怒りを覚え、かみ合わない以上、
「どちらかが譲歩しなければ、関係がもとに戻ることはない」
 ということになる。
 特に、老人の考え方として、
「一度かみ合った人というのは、前世から、かみ合っていた」
 という考えであった。
「一つの世の中でかみ合うことができるほど、人間の考え方というのは、単純にはできていない」
 と考えていたのである。
 だから、
「この女の子は、前世からかみ合ってきた人なのだ」
 と思うのであって、
「意見が合わない」
 ということは、
「来世にまで引き継がれることになるのだろうか?」
 と考える。
 これは宗教によって考え方は違うのだが、
「人間は死ぬと、生まれ変わるために準備をする」
 というところは変わらないのだが、
「行った世界によって、人間には絶対に生まれ変われない」
 という考え方であったり、
「行った世界での行いによって、生まれ変わり先が変わってくる」
 という考えがある。
 つまりは、
「死んでしまえば、その瞬間、生まれ変わる運命は決まっている」
 というものと、
「いや、チャンスはある」
 という考え方である。
 そう考えると、
「前世の記憶がまったく残っていない」
 というのは、
「理屈としては合っている」
 ということになるかも知れない。
 そして、
「この世では、進む時間は、
「誰にでも平等だ」
 と言われるが、
「死んだ後の世界」
 というものがいくつもあると言われるが、その世界によって、
「まったく時間の進みがまったく違う」
 といってもいいだろう。
 そういう意味でも、
「同じタイミングで生まれ変わるということはできない」
 といえるのではないだろうか?
「ひょっとすると、この世での寿命が、もし80年だ」
 ということであれば、その世界によって、
「15年であったり、へたをすれば、一か月かも知れない」
 それは、
「動物や昆虫の寿命」
 といってもいいだろう。
 要するに、
「動物の寿命」
 というのは、
「この世では、ほとんど皆違う」
 ということになる。
 しかも、
作品名:夕凪の時間 作家名:森本晃次