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完全犯罪の定義

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 ということが変わってくるというものである。
「思春期というものを、二段階で考える」
 とすると、
「初恋が、辛いものだったのか?」
 ということを余計に感じてしまうことになるといえるのではないだろうか?
「妹が初恋だったのだ」
 と思ったのは、大人になってからも感じたことであった。
 というのは、
「あれは、会社に入社してすぐの頃だったので、二十代前半くらいの頃だった」
 と思っている。
 入社した会社の女の子に、
「一目惚れ」
 してしまったのだ。
 東は、それまで、一目惚れなどすることはなかった。それは、まわりの人は誰も知らないことであった。
「じゃあ、どういう気持ちで人を好きになるのか?」
 ということになるのだが、東の場合は、
「好きだから好かれたい」
 という考えくではなかったのだ。
 あくまでも、
「好かれている気がするから、好きになる」
 というタイプだった。
 しかし、東はそんなに女の子からモテるというわけではなかった。
 だから、余計に、
「好かれたから好きになる」
 ということであれば、
「女の子と付き合う」
 という機会は少なかったことだろう。
 だから、その頃まで、東は、
「まだ、童貞」
 ということであり、
「好きになった人に童貞をささげる」
 と思っていただけに、
「いつまで童貞を貫けるか?」
 とも言われていた。
 しかし、根本的に、
「好かれたから好きになる」
 という考えは、ある意味、
「傲慢ではないか?」
 と言われても
「仕方がないのではないか?」
 ということであるが、
「恋愛は自由だ」
 ということを考えれば、
「別に悪いことではない」
 といえるだろう。
 ただ、彼のように、
「モテるわけではない」
 ということになると、
「願いが叶う」
 ということはなかなかないといってもいいだろう。
「好きになってくれるかどうか分からない人を、好きになることは俺にはできない」
 と思っていたのだ。
 それはあくまでも、
「自分への自信のなさ」
 つまりは、
「好きになれるかどうか?」
 ということと、
「好きになってもらえるか?」
 という両方に、
「それぞれ自信がない」
 ということになるからだろう。

                 妹へのジレンマ

「さくらへの想い」
 というものを、何とか押し隠さないと、
「俺の童貞喪失問題」
 というものと一緒にしてしまうと考えると、
「それが、まわりの人から余計な感情を持たれる」
 ということが、
「恥ずかしいことだ」
 と感じたくないと思わせるのであった。
 しかし、この、
「童貞喪失問題」
 というのは、意外と簡単に解決した。
 これは、妥協ということでもなんでもないと信じたいのだが、あくまでも、
「タイミングの問題」
 ということだったのだろう。
 それまでは、先輩から、
「童貞なんか、後生大事に持っていたってどうしようもない」
 と言われていた。
 だからいつも、
「そんなもの、風俗にいけば、簡単だ」
 と言われていた。
 それを、
「丁重にお断り」
 というものをしていたのだが、考えてみれば、
「確かに童貞にこだわる必要なんかない」
 と思えばいいだけではないか。
「先輩は、背中を押して呉れようとしているだけだ」
 と思えば、なんてことはない。
 つまりは、
「俺は、風俗で童貞を失う」
 ということ、要するに、
「素人童貞」
 と言われることにこだわりがあっただけのことであった。
 だから、
「背中を押してくれる先輩の好意に甘えた」
 そして、ソープに連れていってくれたのだが、その時に相手をしてくれた女の子が、なんと、
「妹にそっくりだった」
 ということである。
 もし、それまでの東だったら、
「妹に似ている」
 という時点で、
「逃げ出したかも知れない」
 といえるのではないだろうか?
 だが、この日は、
「好意に甘える」
 ということと、
「童貞喪失」
 という記念日であるということから、最初から、
「余計なことは考えない」
 と思っていた。
 だから余計に、
「妹とそっくりだ」
 ということで、ショックを受けるよりも、
「夢のような展開」
 と思おうと感じていたことで、感覚がマヒしてしまったといってもいいだろう。
 ただ、このことが、逆に
「俺の初恋はさくらだったんだ」
 と、再確認させることになった。
 というのは、
「どうせなら、初恋の人と似た人と、初体験は済ませたい」
 と思うのだった。
 というのは、
「初恋というのは、成就しない」
 ということで、それだったら、
「童貞喪失くらいは、初恋の相手をイメージして」
 と考えることになるだろう。
 それを思うと、
「初恋の相手というのが、たまたまさくらだった」
 というだけのことだと思おうというのは、無理もないことなのかも知れない。
 だから、その時の初体験は、
「ソープで済ませた」
 という印象はなかった。
「初恋の彼女と、普通に済ませた」
 という感情しかなかったのだが、終わって店を出てから、
「賢者モード」
 というものに入り込んでしまったが、
「妹に対して、今日からどんな顔をすればいいんだ?」
 と思ったのだ。
「賢者モード」
 などというものがどういうものなのか分からなかったので、その時の罪悪感は、結構ひどいものだった。
 てっきり、
「風俗を利用した」
 ということが、
「自分をそんな気持ちに導いたのだ」
 と感じたが、
「そもそも、背中を押してもらうという行為に便乗したのは自分ではなかったか?」
 と思うことで、
「自分の中で、先輩の好意を免罪符にしよう」
 と感じたことへの卑怯さが、
「こんな感覚を味わわせたのではないか?」
 と感じたのだった。
 ただ、一晩寝れば、
「あれだけ似ていると思っていた風俗の女の子の顔が、まったく思い出せなくなってしあったことが不思議だったのだ」
 まるで、のっぺらぼうのようにも感じるが、それよりも、
「逆光で、見つめた顔に、影が宿っている」
 という状況を感じさせた。
 だから、
「顔が確認できるようで確認できない」
 ということで、
「分かっているにも関わらず、分からない」
 ということがどういうことなのか?
 と感じさせるのであった。
 童貞喪失には、
「さくらに似たソープ嬢」
 ということであり、
「自分の好みというのは、さくらでしかない」
 と感じたことで、
「さくらと同じ顔でないと、セックスができない」
 という状態になってしまった。
 それは、もちろん、精神的なことの影響によるもので、こうなったのは、
「ちょっとしたきっかけだった」
 といってもいいだろう。
 それが、
「背中を押してくれた先輩の手」
 といってもいいのだろうが、それを、
「先輩の責任」
 とするわけにはいかない。
 だから最初は、
「何とか無駄遣い」
 というものをせずに、
「さくらに似たソープ嬢」
 の下に通い続けるということしかないと思っていた。
 実際に、何とかそれを続けていたが、その彼女が、
「私、ソープ嬢を卒業するの」
 と言い出すではないか、
 事情は分からないが、
作品名:完全犯罪の定義 作家名:森本晃次