完全犯罪の定義
いうとすれば、
「パートナー」
といってもいいかも知れない。
犯罪計画において、
「一つの計画を全うするのに、それぞれの役割を持つのが共犯」
であり、基本的に、
「主犯と共犯とでは、それぞれに、立場が違うものが普通である」
といえるだろう。
ただ、そんな中にも、
「共同正犯」
というものがあるが、
「交換殺人」
というのは、この、
「共同正犯」
に近いかも知れない。
共犯というと、
「犯行と二人で行う」
という場合であったり、
「アリバイを作るために、主犯のために嘘をついたりする」
ということで、
「この場合の共犯というのは、そこまで二人の間で、深い関係である必要はない」
といえるだろう、
それこそ、
「交換殺人の、パートナーというのも同じ」
であり、
「あくまでも、殺人計画において、同じ役回りをそれぞれに負う」
というものだ。
だから、
「立場としては中途半端であるが、実際の関係性は、かなり深いということなのだが、逆に、お互いの関係を知られてはいけない」
という複雑な官界になるというものである。
そういう意味で、
「まずは、最初のパートナーを探す」
というのは、どれだけ難しいか?
ということになるのだ。
実際に、見つけたとしても、仲間に引き入れるには、さらに、
「こちらを信用させる必要がある」
というもので、しかも、相手が。
「こちらを疑うくらいの慎重性を持っていないと、臆病風に吹かれてしまうことになるに違いない」
というものであろう。
それが、
「交換殺人というものの難しさ」
であり、
「最初の難関」
といってもいいだろう。
「交換殺人」
というものを、持ち掛ける人がいたが、その人からは、絶えず断り続けていた。
その人には、れっきとした動機のようなものがあり、それを知っている人は、ほとんどいなかった。
初恋と辛い思い
その人は、自分の妹を事故で亡くしたのだが、その事故も、
「酒気帯び運転」
というのが原因であったので、殺人罪ということも今では視野に入れて捜査もできるが、なんといっても、運転していたのが、
「当時未成年」
ということで、数年で、少年刑務所から出てきたのだった。
妹を殺された男は、東といい、
「いずれは、あの男を殺してやる」
と東の裁判が結審するまでは思っていて、実際に口に出して叫んでいることが多かった。
だから、飲み会の時なども、
「東にあまり飲ませるんじゃない」
というのが暗黙の了解だった。
東は、妹が死んでからしばらくは、人との交流をまったく断っていた。
そもそも、人懐っこいところがあり、性格的にも天真爛漫なところがあったが、妹が死んでからというもの、まったく変わってしまったのだった。
それは当たり前のことであり、まわりもよくわかっている。
「気持ちは分かるが」
とは言っていたが、
「何とかならないのか?」
というのは、誰もが思っていることであり、だから、飲み会にも参加してくれるくらいまでになったことはうれしいことだった。
ただ、心の中のトラウマやジレンマは、どうすることもできないようで、酒に酔うと、
「あの男、ぶっ殺してやる」
とばかりに、騒ぐことがあったのだ、
もちろん、気持ちはよくわかる。
しかし、誰も、彼のあんな姿を見たいというわけではないのだ。
それを思えば、
「酒を飲ませないのが一番」
ということになる。
そんな東の様子を、一人冷静に見ている人がいた。それが、交換殺人というものを持ち掛けようという、本田という男であった。
東が妹をどれだけかわいがっていたのか知っていた。
しかし、実はその愛情に、少し歪なものがあるということも分かっていたのだ。
というのも、
「東は妹を、妹としてではなく、女として愛している」
と思ったからだ、
「実の妹である」
ということは間違いないだけに、相当な苦しみが東の中にのしかかっていることだろう。
その気持ちも、分からなくおない。そして、東から、
「俺、実は妹と」
という告白を聞いてしまった。
「お前、一線を越えてしまったのか?」
と聞くと、
「ああ、そうなんだ」
と、ぬけぬけと答えるではないか。
「おいおい、お前、どうしちゃったんだ?」
と聞くと、
「妹の方から、俺を誘惑してきたんだ」
というではないか。
正直、妹には妖艶なところがあり、
「男を狂わせる色香がある」
という気がしていた。
しかし、実際に
「兄貴を誘惑するとは」
と感じた。
だが、
「東という男、判断のつかない男」
というわけでもない。
「モノの分別」」
ということに関しては、キチンとしている人物だといってもいいだろう。
実際に東は、まわりから、
「フェミニストだ」
ということで、
「女性には、優しい」
ということでも評判で、紳士と言われていたのだ。
そんな東が、
「妹に手を出してしまった」
というのは、ショックではあるが、それよりも、
「妹に誘惑された」
ということが、ショックだったといってもいいだろう。
東の妹は、名前をさくらという。
さくらは、よく男性にモテた。東は、妹のことを、
「妖艶だ」
と思っているようだが、まわりからは、
「清楚な女の子だ」
と思われていた。
兄としては、
「生まれた時から、ずっと知っている」
ということを自負していたことで、
「妹は素直な娘だ」
という兄としての思い込みがあり、
「女としてみてはいけない」
という思いが心のどこかにあることから、
「清楚な女の子なんだ」
という思い込みが強かったのだろう。
だから、ちょっとでも、
「オンナ」
として見てしまったということで、それまで感じたことのなかった、
「妖艶さ」
というものが垣間見えるようになったのだろう。
だから、その妖艶さというものは、
「本当は男である自分が感じるものだ」
ということで、
「相手を好きになる」
ということになるのだろうが、
「相手は妹なんだ」
と思えば思うほど、
「禁断の果実である」
という感覚から、余計に、
「妖艶」
という雰囲気を感じさせるということになるのだろう。
「俺の妹が、こんなにかわいかったんだ」
ということで、
「まわりに自慢したい」
という時期が、子供の頃にはあった。
それが、、小学生の頃までだったということは自分でも分かっているのだが、それがなくなったと自分で感じる時、
「それを感じなくなると、そこから先が思春期だったんだ」
と、今さらながらに感じるのだった。
だから、思春期に入ると、
「まわりの女の子が皆かわいく見える」
という感覚は、自分にもあり、他の連中の話と、何ら違和感があるものではなかった。
だが、その違和感が、妹の姿を見ると、
「違和感としてではないが、妹に対してという意識ではなく、まわりの女の子に対して、自分の感じていることが、他の友達とは、どこか違っている」
という感覚になるのだった。。
ただ、
「それを違和感というのだ」
と思えばそれまでなのだが、そう感じられないということは、