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完全犯罪の定義

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 ということで、それぞれを理解して、比較もできている中で、その中における考え方が、東よりも、理路整然としていることで、余計に、東よりも、どこか
「冷徹にも感じられる」
 というものだ。
 もっといえば、
「妹のさくらには、感情というものが、あまりない」
 といえる。
 おとぎ話でいえば、まるで、
「雪女」
 のような感覚なのかも知れない。
 きれいで、その妖艶さに惹かれるのだが、そこに感情はないので、
「一歩間違えると氷詰めにされてしまう」
 といってもいいだろう。
 しかも、二人は
「血のつながった兄妹」
 ということで、自然と、相手が考えていることが分かるといってもいい仲であろう。
 しかし、東も、
「兄妹なのだから、俺が妹のことを分かっていると思っているのは、かなりのことのはずだ」
 と感じていたが、実際には、
「何も分かっていない」
 といってもいい。
 それを感じたのは、
「二人が身体を重ね、一つになった」
 というその時だった。
 普通であれば、
「身体を重ねたのだから、今まで以上に親密になり、相手のことがもっともっと見えてくるはずだ」
 と思ったにもかかわらず、
「そのほとんどが前と変わっていない」
 と感じたことだった。
 ということで、最初は、
「やっぱり、俺は人のことがよく分かっていないんだ」
 と、普段から感じていることを思ったに過ぎなかったが。
「兄妹であれば、身体を重ねるごとに、徐々にだろうが分かってくるだろう」
 と思ったにもかかわらず、実際には、その思いは決して叶うことはなかったのだ。
 それを思えば、
「本当に兄妹なのか?」
 と、自分たちの出生を疑ったが、本当に疑うべきは、
「自分の精神的な考え方と、精神疾患ではないか?」
 ということになるのであろうが、あえてそっちを考えることはしなかった。
 というのは、それが、自分の中での頭の回転を否定しようと考えたからで、
「あえて分かっていることを、否定し、事実から逃げよう」
 としているからだった。
 しかし、
「何が事実なのか分からない」
 と思いながらも、
「その事実というものを知りたくない」
 と思っているのも事実で、結局、
「事実の解明よりも、逃げる」
 ということの方が、
「自分にとっては大切だ」
 と思っているのだった。

                 復讐劇

 東は、そんな妹との関係を、ただ、
「本能のまま」
 過ごしてきた。
 妹も、
「悪いことだ」
 という思いがさらさらないので、それこそ、
「辞めようとは思わない」
 といっていいだろう。
 そういう意味では、
「まだ理性があるというのは、兄の東の方だろう」
 といえる。
 ただ、この場合、
「理性がある方が本当に正しい」
 といえるのだろうか。
 そもそも、この二人に、
「正しい」
 という発想があるのだろうか?
「正しい」
 という感覚は抜きにして、
「理性というものを正しいものだ」
 ということを前提にすることで、
「理性があることが正しいことへの一種の免罪符のようなものと考えてもいいだろう」
 ということになれば、
「兄の方が、どちらかというと、辞めることができるはずだ」
 ということになるだろう。
 だが、結局、二人は、まわりに秘密を抱えたまま、この関係を、
「辞めざるをえなくなってしまった」
 ということだ。
 というのは、
「もし、あのまま、何もなければ、いつまで続いていたことか?」
 と思えなくもない。
 その
「何か」
 というのは、本来であれば、
「あってはならないこと」
 あるいは、
「神も仏もあるものか」
 といってもいいくらいの、東にとっては、理不尽に思えることかも知れないが、なまじ
「理性」
 なるものがあるせいで、
「俺たちの因果を、さくらが一人で背負ってくれたんだ」
 と思ったのだ。
 何があったのかというと、
「妹のさくらが、ひき逃げに遭った」
 ということであった。
 東は、突然足元が崩れ、
「奈落の底」
 に叩き落された気がした。
 そして、
「奈落の底に落ちる」
 ということは、
「予知していたことではないか?」
 と感じるのであって、
 それは、もちろん、
「近親相姦」
 という、
「鬼畜」
 ともいえるような行為をしたことで、
「因果応報だった」
 といえるだろう。
「その報いを一人で受けてくれたというさくらに対し、自分がどういう気持ちで、これから生きていかなければいけないのか?」
 ということが分かるわけもなかった。
 それまで、あまり余計なことを考えるタイプではなかった東だった。
 だから、今回、さくらが死んだということで、
「自分がどう考えればいいのか?」
 ということを、
「人生で初めて」
 といってもいいくらいに感じるようになったのだが、
「考えれば考えるほど、迷路のように、また振り出しに戻ってくる」
 ということが分かった。
 ただこの考えは、
「以前から分かっていたような気がする」
 と感じたのだ。
 というのは、
「この思いがあるからこそ、俺は、考えるということをあえてしまったのではないだろうか?」
 と感じたのだ。
「これが、俺にとっての本能」
 というものではないだろうか?
 と考えると、
「死んだのは妹の方だった」
 というのは、
「それこそが、因果応報というものではないだろうか?」
 と感じた。
 妹は、理性というものがあるわけではないので、
「もし生き残ったのが妹であれば、精神的な苦痛はないかも知れないが、肉体的に耐えられないのではないだろうか?」
 と思うのだった。
 まるで、
「生きている亡霊」
 といってもいいように、
「男を食いつくす妖怪」
 のような存在となり、
「この世をさまよう亡霊」
 になっているかも知れない。
 しかし、死んだことによって、もしそれが地獄だったとしても、
「いずれは収まるべきところに収まった」
 といってもいいだろう。
 その時の東は、
「自分のことを棚に上げて、妹のことばかりを考えていた」
 といってもいいだろう。
 それ自体、
「異常な感情の行きつく先だ」
 といってもいいはずなのに、それを怪しく感じるのは、
「東の中で、この世でやり残したことがあるからだ」
 という思いを、最初は無意識にだが思っていて、
「それが時間とともに、それなりの形になって表れてきたのではないか?」
 と思うようになってきた。
 そこで考えたのが、
「妹の復讐」
 ということだった。
「なるべく感情を表に出さず、ただ自分の中での仕事として、復讐事業をこなす」
 ということであった。
 だから、
「なるべく、自分の中で、承認欲求のようなものを生かせるような犯罪」
 であれば、
「それに越したことはない」
 と思うようになっていた。
 そういう意味で、最初に考えたのが、
「耽美主義的な犯行」
 というものである。
「普通の犯罪」
 ということであれば、
「なるべく、犯行をごまかしたり」
 あるいは、
「犯人が誰か分からないように、トリックを使う」
 ということをするのだろうが、
「どうせやるなら、芸術として犯罪を完成させたい」
 という考えから、
作品名:完全犯罪の定義 作家名:森本晃次