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地図から抹消された村

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「人間がまったく同じことを考えて、同じことを繰り返す歴史をたどるということは、それが人間の限界ではないか?」
 ともいえる。
 そういう意味でも、歴史上の、
「原因と結果」
 というものを紐解くことが、
「歴史研究における、最終目標ではないか?」
 ということになるのだろう。
 今、この村の存在を知り、そのことに驚愕し、
「自分の研究テーマとして、ここは最高の場所だ」
 ということで考えている、一人の歴史家がいた。
 彼の名前は、
「飯塚准教授」
 という人で、近くにある、私立大学のK大学の准教授であった。
 年齢は35歳ということで、中学時代に歴史に興味を持ってから、ずっと、歴史の研究をしようと、高校時代から、K大学を目指して勉強していたのだ。
 飯塚准教授というのは、大学内でも、
「変わり者」
 と言われていた。
 本人は、それでもいいと思っていたのだ。
 歴史の研究としては、大学内の他の教授も、彼に劣らず、
「変わり者」
 と呼ばれる人も多く、それぞれに、
「個性的な解釈をする人たち」
 と言われていた。
 それらの発想は、
「どこからそんな発想が出てくるんだ?」
 ということであったが、それでも、
「歴史の検証」
 ということで、学会などでは、一定の評価を受けている人も多かった。
 そういう意味で、
「K大学の歴史研究学部というのは、日本でも有数」
 ということから、密かに、入学希望者は多いと言われている。
「歴史に興味を持つのは、変わり者だろう」
 というレッテルがまだ残っているのだから、さすがに、高校時代までは、自分が、
「歴史の造詣が深い」
 ということを大っぴらに言わない人も多かっただろう。
 しかし、大なり小なり、そんな中にも共通点があるようで、特に、K大学に入学してくる人の多くは、
「血で血を洗う歴史」
 というものに、魅了された人が多いようだ。
 かたや。最近の歴史ブームというのは、
「アニメやゲームの影響が強い」
 ということである。
 だから、
「その姿というのは、美しいもの」
 ということで、自分の頭の中に叩き込まれている。
 つまりは、
「戦国武将というのは、イケメンで、恰好のいい、二次元の世界」
 というイメージが定着している。
 確かに、
「歴史に興味を持ってもらう」
 ということでの手段としてはいいのかも知れないが、実際とは違ったイメージで、引きこむというのは、いかがなものであろうか?
 それに対しての、意見もいろいろあるだろう。
 しかし、実際に、歴史の世界に自ら足を踏み入れようとする、気概のあるという人にとって、そんな、
「にわかファンのような連中を許すことができるというのだろうか?」
 どういう意味で、
「歴史研究を真面目にやって、歴史の検証をしたい」
 と思っている人にも、どこか、歪んだ発想があるといってもいいだろう。
 それが、
「血で血を洗う歴史」
 というものに対しては、敏感であるということである。
 それは、
「いい意味でも悪い意味でも、両方に」
 ということであった。
「どうしても、アニメやゲームから入ってくる連中を意識して、あの連中と一緒だと思われるのは、心外だ」
 と考えているとすれば、
「その正反対の、オカルトやホラーのような、血で血を洗う時代背景というものに、異常な神経をとがらせている」
 ということも、無理もないことであろう。
 ここでの登場人物である、
「飯塚准教授」
 というのも、実は、そういうところがあった。
 本人は、
「自分は変わり者だ」
 ということを自覚していて、
「人と同じでは嫌だ」
 という考えをもっていた。
 だから、
「変わり者だ」
 ということを、ずっと考えていたのだ。
 それは、
「歴史をアニメやゲームから入るという人たちの存在」
 というものに影響を受けたからではなく、実際には、
「生まれつき」
 ということであったのだが、本人は、その自覚がなかった。
 つまり、
「歴史を違った目で見る連中に刺激されたことで、自分の性格が歪んでしまったのではないか?」
 ということを感じていたのである。
 それは、実際には、
「致命的な勘違い」
 といってもいいのかも知れないが、それが、功を奏したのか、歴史学者としての道を、今のところ、
「順風満帆に歩んでいる」
 ということであった。
 そんな飯塚准教授が、この、
「歴史上で抹殺された村」
 というものを発見したのは、
「ただのウワサ」
 というものからであった。
 それも、教えてくれたのが、
「馴染みのバー」
 における、知り合いではなかった客の口からだったというのも、面白いことであった。
 そもそも、
「興味を持ったり、面白いと思うことが、学問や研究への第一歩だ」
 ということを信条にしている。
 そう思ったから、歴史の道を歩もうと思ったのか、それとも、歴史の道を歩むことを決めてから、そう感じるようになったのか自分でもわかっていない。
 後になって気づくことが多い飯塚准教授であるが、
「それこそが、自分のこれからの歴史家としての道を暗示しているのかも知れない」
 ということで、どちらかというと、自分の将来に明るいものを見ているということなのであろう。
 それが、実際に今の順風満帆というものを形成しているのだから、何ら疑う余地もないということになるであろう。

                 二大勢力

 飯塚准教授は、
「隣の市に移設された」
 という祠を調べてみることにした。
 大学名を出して、
「そこの歴史の研究」
 ということであれば、市の観光課で担っている、文化財としての祠の中を閲覧することは簡単に認められた。
 隣の市では、結構いくつかの文化財というものがある。
 そもそも、
「藩の中心の街」
 ということで、城跡も残っている。
 元々、
「天守のない城」
 ということで、あまり、城跡が観光で注目されるということはなかったが、調べてみると、
「戦国時代の激戦地」
 ということが分かったようで、それなりに、歴史好きが訪れるようにはなったが、
「観光客」
 ということでは、
「正直、祠や石垣が点々と残っているだけ」
 というところに、わざわざ来ることはないだろう。
 実際には、
「県の重要文化財」
 というものも残っているのに、市の観光課の人とすれば、
「実にもったいない」
 と思っていた。
 本来であれば、復興させて、観光に一役買ってもいいと思えるのに、どうしても、県の財政というものを考えると、
「海の者とも山のものとも分からない」
 というものに、予算を当てるわけにはいかないということであった。
 それも当たり前ともいえるが、それだけ市や県のお偉いがたというのは、
「歴史というものは、まったくの二の次だ」
 と考えている、いわゆる、
「現実主義者だ」
 ということになるだろう。
 しかし、歴史に造詣の深い人は、
「そんな人達ほど歴史を勉強し、歴史に学ぶ」
 ということをしないと、取り返しのつかないことになるとは思いながら、
「上司に逆らうことはできない」
 としり込みしているのだ。
 それも、今に始まったことではなく、市や県の歩んできた、
作品名:地図から抹消された村 作家名:森本晃次