地図から抹消された村
という言葉では言い表せないほどのことになる。
社会問題になって当たり前のことだ。
そういう意味では、
「警察や政府」
という当局の連中の政策は、まだまだ生ぬるいといってもいいだろう。
そういう意味でも、田舎の人たちは、都会に余計な猜疑心を持っているかも知れない。
「詐欺集団が来たらどうしよう」
とも感じているだろう。
だから、一見都会の人に興味があるように見せておいて、絶対に自分たちのことは明かさないと考えているかも知れない。
そういう意味で、田舎の人から、昔の情報を引き出すのは難しいかも知れない。
それでも、
「何とかして情報を引き出そう」
などと考え、
「あの手この手を考える」
ということはできるかも知れないが、もしそれをしてしまうと、
「俺たちこそ、詐欺の片棒を担ぐような真似をしてしまうことになるのかも知れないな」
ということである。
さすがに、
「学者としてのプライドが許さない」
実際に相手に迷惑を被らせるわけではないし、騙したといっても、何かを盗るわけではない。
と思えば、そこまで考える必要もないのだろう。
しかし、少なくとも、信頼というものを失うことは、
「今回はいいかも知れないが、いずれは、決定的なことをしてしまい、学会から追放されたり、警察の厄介になるということになりかねない」
と考えると、
「何もできなくなってしまう」
ということになるのだ。
それを考えると、
「あまり深入りはできないだろう」
ということであった。
だが、村人に話を聞きにいくと、飯塚が考えているほど、村というのは、閉鎖的ではなかった。
「こんなことでは、詐欺集団から守ることはできないぞ」
と、内心では思うほどであったが、それでも、研究が薦められるほどに、彼らは、協力的だったのだ。
中には、
「うちに、秘蔵のもの巻物のようなものがあるんじゃが、わしらには、分からない」
ということであった。
「宝のありかか、昔の先祖が軍資金のつもりで隠したものかのどちらかなのではないかとおもっていたんじゃがな」
というのであった。
「実際にそうかも知れない」
と思いながらも、
「これ、少しお預かりしてもよろしいですか? なるべく早く返します」
ということで、預かったものが、数種類にも上った。
実際に、村人で、
「秘蔵の巻物がある」
ということで、数名の老人が出してくれたのだ。
元々の研究員を村に残し、さっそく、自分たちは、大学に戻ってきて、
「秘蔵の巻物」
というものの解読にいそしむことにした。
実際に、それだけの資料が手に入るまでに要した期間は、数日だった。本来のこの村での研究というのは、大学には、
「一か月」
と申請をしていたので、まだまだ期間はある。
そういうことで、研究員のほとんどを篠崎に任せ、自分は、その解読に躍起になったのだ。
「研究員だけを残し、隊長である教授や准教授が一人もどってきて、研究の解読を行う」
ということは、今までにも何度もあったことなので、誰からも怪しまれるということはなかったのだ。
それを考えれば、
「うまくいった」
ということで、飯塚は今のところの順風満帆さに満足していたのだ。
今度は、研究室での解読作業にいそしんだのだが、その内容というのは、飯塚とすれば、
「なりほど、そういうことか」
と納得できるものだった。
それは、飯塚としては、
「想定内のこと」
ということであり、ある程度分かっていたものであった。
もっとも、今までの研究の中で、
「結構あった」
ということではないが、
「秘密を守るために」
ということではありえることだったのだ。
飯塚が考えたことで、
「今までの大日本帝国までの時代であれば、確かにこれを公開するということはタブーだったに違いない」
ということだ。
それは、村人が遺伝子の力で分かっていることで、
「本能のようなものだ」
といっても過言ではないだろう。
それを考えると、
「村人とすれば、時代の変化に対応さえできれば、余計なことを書き残すことはない」
と先祖は考えたのだろうと思っていた。
実際に、先祖は、細かいことは書き残してはいなかったが、少なくとも、村人とすれば、
「この村に、影響を及ぼすことさえなければ、この村に伝わる秘密というものが公開されることになっても、それはそれでいいのではないか」
と考えていたのだ。
そもそも、書き残したということは、
「公開を見越して」
ということになるだろう。
もし、それが公開されたことで、村に金が入ったり、都会とのパイプができるなどのいい方向にいくのであれば、公開しても構わない」
と考えていたことであろう。
そういう意味で、
「飯塚准教授は、田舎の人から認められた」
ということである。
実際に、飯塚准教授というのは、
「私利私欲にまみれる研究者」
ということではなかった。
そういう意味では、
「篠崎という研究員には、どこか、ギラギラしたところがある」
と飯塚は感じていた。
「時々、ギラギラした視線を感じ、その先を見ていると、いつもそこには、篠崎がいる」
ということであった。
確かに、彼には野心家的なところがあるが、
「何をそんなに、俺に対して挑戦的なのだろう?」
と思わないではいられなかった。
とはいえ、
「研究家というのは、実際にはそれくらいでないといけない」
という人もいて、
「俺はそういう研究家にはなれないし、なりたくもない」
ということで、ある意味、篠崎という研究員を、自分にとっての、
「反面教師」
と考えるようになっていたのである。
だから、逆の意味でも、
「篠崎研究員にここは任せておけば、きっといい研究をしてくれる」
ということで、自分にとっても、彼にとっても、いい結果を生むに違いないと信じて疑わなかったのだ。
飯塚准教授は、数日かかって、解読した内容というのは、
「あの村には、かつて、二大勢力が存在していた」
ということである。
あの村が、いつ頃から成立していたのかということは、定かではないが、それぞれの巻物を研究していると、
「どうやら、鎌倉時代以降らしいな」
ということであった。
そもそも、この巻物の解読といっても、
「簡単に分かるようにしてある」
ということで、実際に、最初のとっかかりというものが謎であったが、それが分かれば、「まるで、現代文を読んでいるかのようだ」
というほどに分かったのだ。
彼が数日で解読したというのは、そのとっかかりが、すぐに分かったからだということであった。
それが、偶然なのか必然なのか、
「やはり、これまでの研究によって、自分が成長しているからに違いない」
と感じ、嬉しくなる飯塚だった。
実際に、飯塚が発見したというのは、
「まるで暗号を解くきっかけになる」
というものであったが、それを解いてしまうと、簡単に解読できるようになっていた。
それは、あくまでも、
「村人が解読できるように」
ということであり、その最初の解読までは、我々が簡単に分からないだろうということを村人も分かっていたのかも知れない。
だから、
作品名:地図から抹消された村 作家名:森本晃次