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本当の天才

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「自分の身は自分で守る」
 ということの、
「典型的な例だ」
 といってもいいだろう。
 それくらいのことをできないから、
「美人局」
 のような連中が、幅を利かせることになるのだろう。
「冤罪事件」
 というものと、その趣が若干違っているという気はするが、少なくとも、
「このような、美人局のような連中がいる」
 ということであったり、
「まわりの人の目が、どうしても、告発された人に対しての目」
 というものに偏見があるということが、
「冤罪を生む原因の一つになるということではないだろうか。
 そして、このような痴漢事件というのは、本当は親告罪ではないのだが、それを親告罪であるかのように感じることで、逆に話がややこしくなってくるということを考えると、それが、
「まわりの人の目を、偏見に傾けてしまう」
 ということになるのではないだろうか?
 というのは、一つは、
「その事件現場の特殊性」
 というものにあるのではないだろうか?
 というのは、
「密閉された満員電車の中」
 ということである。
 そんな中で、誰にも見えないのをいいことに、痴漢の犯人は、
「気が弱くて声を出せない」
 という人を狙ったりする。
 しかも、犯罪者側には、
「プロ」
 という連中がいるようで、それが、集団を作って、
「連係プレイ」
 というものをしている。
 まるで、スリと同じようなものであるが、普通に考えれば、
「痴漢に何の得がある」
 というのか?
 ということである。
 スリであれば、盗んだもので、儲けを得るということができるだろうが、
「女性を触ったとしても、金が入るわけではない」
 もちろん、
「性的欲求を満たす」
 ということのためといえば、そうなのだろうが、集団を組んでまで行うということに疑問を感じるといってもいいだろう。
「痴漢行為」
 というものの何が楽しみなのか?
 ということを考えると、
「ただ触るだけ」
 ということだけであろうか?
 もちろん、
「触りたいだけ」
 という人もいるだろうが、正直。それだけであれば、
「すぐに飽きるのではないか?」
 と思える。
「相手が、痴漢されて、そのことに対しての、恥辱の思いを抱くことで、見ていて、興奮する」
 というような感情があるからこそ、
「危険を犯してまで痴漢をする」
 ということになるのだろう。
 しかも、その興奮を得るために、
「誰かの協力を得る」
 ということで、
「果たして、本当の興奮を得ることができるのか?」
 と思うと、
「何の得にもならない」
 ということであったり、
「満足もできない」
 ということであれば、
「集団を組んでまで」
 と思うのではないだろうか?
 ただ、
「仲間がいる方が、捕まる可能性は低い」
 ということには違いないだろう。
 それを考えると、
「集団を組んでいる連中」
 というのは、
「本当の痴漢というものではないような気がする」
 といえるのではないだろうか?

                 勧善懲悪

「何が本当の痴漢なのか?」
 と言われると、ハッキリとしたことは言えないが、
「集団を組むくらいなら、捕まってもいいから、一人でやった方がいい」
 と思っているのが、
「坂田」
 という男であった。
 本来であれば、
「捕まることに対しての恐怖よりも、自分の中ある興奮を抑えられない」
 という方が若干強いことで、今のところ、
「痴漢は辞められない」
 と思っている。
 実際には、
「若いだけに気持ちを抑えられない」
 というのが、一番の理由だといってもいいだろう。
 そんな彼は、年齢としては、まだ二十歳だった。
 大学に通うのに、満員電車での通学だったが、少し、学校までは遠く、一度、都心部に出てからの乗り換えとなるのだが、都心部での地下鉄内が、坂田にとっての、
「行動範囲」
 といってもいいだろう。
 中学時代から、どこか、制服フェチなところがあった。
 坂田という男は、思春期は晩生であり、身長が伸びだしたのは、中学三年生になってからであったが、その分、伸びるのも早く、高校生になれば、それまで、低い方から数えてすぐだったものが、いつの間にか、後ろから数えるのが、早いくらいになったのだ。
 なんといっても、高校二年生から三年生になるそのタイミングで、
「なんと、5センチ伸びた」
 といってもいい。
 だから、高校三年生になった時には、身長が180センチになっていて、ちゅうがくじだいの友達が、
「お前何を食べたら、そんなに背が高くなるんだ?」
 と言われたほどだった。
 だから、中学時代までは、満員電車は大嫌いだった。
 受験の時、
「俺の成績で受験する学校は、いやでも、電車通勤になるな」
 ということで、正直、憂鬱だったというくらいである。
「無理もない」
 といってもいいのだろうが、幸か不幸か、中学三年生の頃から、身長が伸び始めたのであった。
 だから、高校生になってから、満員電車に乗っても、首が何とか、
「人の波」
 から頭一つ上に出せるくらいになったので、
「人に埋もれる」
 ということはなかった。
 そんな中で、電車の乗っていると、その時、
「自分が制服フェチだったんだ」
 ということに気が付いた。
 元々、何か制服に思い入れがあったのだが、その気持ちがどこからくるのか分からなかった。
 しかし、その気持ちの終点が見えていなかったのだが、それは、
「わざと見ないようにしていた」
 ということなのかも知れない。
 ただ、
「電車の中での痴漢行為は、いけないことだ」
 ということは、モラルとして分かっていた。
 だから、制服の女の子が近くにいても、
「触りたい」
 という気持ちはなかったのだ。
 しかし、あれは、高校二年生の時、電車に乗っていて、
「一人の女の子が痴漢に遭った」
 という場面にたまたま遭遇したのである。
 この時も、
「まるで絵にかいたような光景」
 といってもいいが、
 窓際近くに立っていた女の子を窓の方に追い詰めていた男性が、他の男性から手を掴まれて、
「こいつ痴漢だ」
 とばかりに、腕をまるで勝ち誇ったかのように、上に突き出していた。
 犯人は、気の弱そうな男性で、背広を着ていたので、サラリーマンか何かだろう。
 坂田がそれを目撃した時、腕を掴まれた男は、顔色が悪く、完全に土色だった。その様子は、脂ぎって勝ち誇ったような顔をしている男に、完全に観念していたのだ。
 それこそ、
「勧善懲悪」
 という場面であった。
 まわりの人の目は、完全に、
「捕まえた男をヒーロー」
 でもあるかのように見上げていて、捕まった男を、完全に、
「犯罪者を見るような目で、見下している」
 という様子だった。
 その場だけを見れば、
「当たり前の光景だ」
 といってもいい。
 だが、坂田は、どこか釈然としない気持ちになっていた。
 というのは、
「事実関係がはっきりとしているわけではないのに、まわりの目が完全に、推定有罪となっている」
 と感じたことだった。
 もちろん、
「捕まった男の情けない表情」
 それから、
「捕まえた男の勝ち誇ったような表情」
 に違和感はあった。
作品名:本当の天才 作家名:森本晃次