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本当の天才

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「えっ? 俺は見られていたといことか?」
 と考えたが、そのことを坂田に話したわりに、
「だから、坂田に何かを聞いたりはせず」
 話が別の方向へと流れていくと。
「あの人、失踪したんだよ」
 と言い出したのだ。
 元々、身内のことを、本来であれば、隠そうとするものを、それが恥になることでも、誰かに話してしまわないと我慢できないタイプの男ではあったが、
「だからといって、誰にでも話せばいいというわけではなく、相手を選んで話をする」
 ということにかけては、長けていたといってもいいだろう。
 そういう意味で、
「その友達とすれば、坂田は、口が堅い男だ」
 ということだったのだろう、
 実際に、坂田は、人の話をペラペラとしゃべる方ではない。
 もっともそれは当たり前のことで、
「自分にやましいことがあるから、他の人の秘密をペラペラしゃべるようなことはしないのは当たり前のことだ」
 といえるだろう。
 それを考えると、
「なるほど、口が堅い」
 ということは、
「人に言えない何かの秘密を握っている」
 といってもいいだろう。
 それを思えば、
「坂田という男は、敵に回すと怖いかも知れないが、味方につければ、頼もしいやつなんおかも知れない」
 と思われていた。
 しかし、実際に、坂田という男のいいところというのは、
「純粋なところ」
 ということであった。
 裏表はないわけではないが、人を裏切ったり、打算でものを考えたりはしない男であった。
 ただ、頭の回転は速く、そういう意味で、何かあった時に相談すれば、
「実に的確なアドバイスをくれる」
 ということで、坂田を頼もしく思っている人は一定数いた。
 その中に、工藤という男がいた。
 坂田も、工藤も、それぞれ、
「友人はあまり多くはない」
 ということであったが、
「親友といえば、坂田(工藤)だ」
 ということで、お互いに、相手のことだけを親友として認識していたのであった。

                 保険金詐欺

 ただ、坂田は、工藤のことを、
「あいつは何か犯罪の匂いがするな」
 と思っていたのだ、
 それは、自分も犯罪者という自覚があることから、
「おれだから分かることなんだろうな?」
 と感じたのであった。
 実は同じことを工藤の方でも分かっていたようで、お互いに、相手のことを、
「たすきにかけた性格だ」
 と思っていた。
 工藤は、坂田が触っていた女性のことを、
「あの女、実は、銀行員で、彼氏が銀行の資金を横領している片棒を担いでいて、主犯である男がその使い込みがバレたことで、女も、ヤバくなって、身を隠さなければならなくなったのさ」
 ということのようだった。
「なんでそんなこと知ってるんだ?」
 と聞くと、
「家族の間では、隠し事なしなのさ」
 というのはどういうことかというと、
「皆共犯になるから、余計なことを警察や怪しい連中には、漏れないようにするだろう?」
 ということからだった。
「それなら、なんで俺にそれをいうんだい?」
 と聞くと、
「だって、詳しくはここでは言わないが、お前だって、叩けば埃の出る身体だろう?」
 といって、にんまりとする。
 どうやら、工藤には、坂田の性癖を分かっていて、その坂田が、失踪した女とかかわりがあったということを分かっているようだ。
 しかし、それを考えてみると、
「まさか、あの女、俺が、工藤の親友だということを知って、近づいてきたのか?」
 ということであったが、
「何のために近づいたのだろう?」
 と思った。
「ひょっとすれば、何かの時に、利用しようとでも思ったのかな?」
 と感じた。
「工藤は何もかも知っているのではないか?」
 と思ったが、話をしている限りでは、
「お互いに協力体制ではなかったが、どこか一蓮托生の気がしたのだ」
 そもそも、
「痴漢行為」
 というのは、まわりの誰かをまきこんだり、
「まわりにバレたくない」
 という思いよりも、
「いざとなったら、その時は腹をくくる」
 というくらいまで覚悟をしているつもりだった。
 しかし、実際に、そんな覚悟などあるはずもなく、
「ただ、今の状況に流されているだけだ」
 と思っている程度だった。
 実際に覚悟などあるわけもないことを、自覚はしているが、だからといって、やめられないというのは、言い訳でしかないということになるだろう。
 ただ、工藤を見ていると、
「やつも、何か俺に隠し事をしているような気がするな」
 と思っていた。
 もちろん、同じように痴漢をしているというわけではないが、
「犯罪であることに変わりはない」
 ということであった。
 しかも、
「やつは、一人で行動しているわけではなく、複数での行動かも知れない」
 と思った。
 そして、
「家族の中に、悪いことをしても、それを集団意識として感じさせる」
 というような、普通では考えられない感覚を持っていることから、
「犯罪家族なのかも知れないな」
 と思えば、
「スリや、コソ泥のたぐいくらいはやっているかも」
 と思うようになった。
 そのことが分かったのが、ちょうど、坂田が、最近気になっている女を、ストーキングするようになってからのことだった。
 というのは、
「坂田が、いつものように、その女を尾行し、そのことに快感を覚えている時、普段とは違う異変が起こった」
 ということであった。
 その時、いつものように、彼女の家の近くまで来た時、彼女の家を見張っている集団があるのに気が付いた。
 といっても、
「集団で見張っている」
 などという、
「すぐにバレる」
 というようなことをするわけではない。
「4人くらいいただろうか、それぞれに、受け持ちの場所があって、そこを根拠として家の中を見張っている」
 という感じであった。
 それこそ、
「刑事の張り込み」
 という感じであろうか。
 だからといって、
「警察ではない」
 ということはすぐに分かった。
 一人の男が、
「工藤だった」
 ということで、警察ではないということは一目瞭然であるが、
「警察であれば、貼っているということ自体がバレないようにしているはずだ」
 といえるのだが、やつらとしては、
「別にバレても関係ない」
 と言ったような、大胆さがあった、
 実際に、家の中の様子をみれば、
「見張られている」
 ということは十分に分かっているようだった。
 そうであれば、見張る方も、最小限の人数にして、あまり、まわりを刺激しないようにすることだろう。
 それなのに、
「バレて当然」
 というような、
「不細工な張り込み」
 というものを行うということは、
「相手に対しての脅し」
 ということになるのだろう。
「俺たちはお前たちのことをずっと見ているぞ」
 ということで、それこそ、
「絶対に逃がさない」
 ということを言っているのと同じことではないだろうか?
 さらにもう一つ気になることとすれば、
「どうして、警察に通報しないのだろうか?」
 ということである。
 見張っているがわも、
「相手が警察に通報することはない」
 ということを分かっているからこそ、何も言わないのだ。
 それを思えば、
作品名:本当の天才 作家名:森本晃次