症候群と秘密結社
という伝説があり、しかも、
「伝説というものには、敏感な民族」
ということで、誰も入ろうとしなかった場所を国家が開発に使ったのである。
この国家では、伝説の村ということで、
「村の長とは密約があった」
ということである。
「この村の独立性は国家が保障するから、奥の山林には立ち入らない」
ということを契約していたのだ。
村は村で、
「厳しい掟」
というものがあった。
それさえ守っていれば、
「村人にとって、かなり自由なところ」
ということだったので、村の掟に逆らうことを誰もしなかったのだ。
だから、
「秘密の研究所は、見つからずに大々的に研究ができた」
しかし、実際に、
「戦争に負けそうだ」
ということで、
「731部隊」
のように、証拠隠滅が必要になると、今度は、まわりの木を一気に伐採し、オープンな形にした。
そこで、研究していたものを他の場所にもっていき、そこには、医療器具などを速やかに運び込み、
「まるでそこが最初から病院だった」
ということにしたのだった。
入院患者も捏造され、さらに、
「精神疾患患者」
という人たちも収容しているということにすることで、
「いきなり森の中に現れた奇妙な病院」
というものを、もとから、
「奇妙な病院だった」
ということを不審がることのないようにしたのであった。
それを思えば、それこそ、
「木を隠すには森の中」
と言われるが、結論としては、
「逆の効果だったのだ」
といえるのではないだろうか?
木を伐採したことで、現れた真実を、今度は、そのあざとさと大胆さで、ごまかそうということになるのであった。
うまくその作戦は功を奏し、占領軍から怪しまれることはなかった。
しかし、考えてみれば、
「本当にそうだったのだろうか?」
とも考えられる、
というのは、
「占領軍たちとの間で、取引があったのではないか?」
ということであった、
「占領軍というのは、国家を統治する」
ということで、
「利用できるものは何でも使う」
と考えていた。
「自国の利益になりそうなことであれば、秘密の協定を結ぶ」
ということもありではないか。
実際に、
「731部隊」
も、証拠がないということで、誰も戦犯に問われることはなかったではないか。
それを思えば、
「研究結果を取引に」
ということも考えられることであった。
だから、この建物は、破壊されることもなく、軍内部では、
「細菌兵器や、化学兵器を秘密裏に作っている」
ということが暗黙の了解になっていたが、戦局が怪しくなると、
「証拠隠滅ということも視野に入れなければ」
ということも言われだしたという。
実際に、ここの所長は、かなり頭が切れる人で、かなり初めの頃から、
「証拠隠滅」
というものを図っていたということであった。
だから、実際に、政府が隠滅に図ろうとした時、研究所では、すでに、隠滅を考えていたのであった。
だから、戦争が終わってからすぐに、森林を伐採することで、
「ここは、普通の病院だった」
ということにし、さらには、
「精神疾患者」
と収容することで、
「特殊な病院」
ということで、少しでも、怪しまれないようにするということに長けていたといってもいいだろう。
そんな国家というものは、
「国破れて山河あり」
ということで、
「都心部は、焦土と化したが、山間部は、それほど被害に遭ったわけではない」
だから、山間部に人の目は注がれたので、よほど気を付けないと、
「発覚してしまう」
ということになるだろう。
しかし、彼らは、それを何とか隠蔽した。
そして、そのまま、この土地に病院を残すということに成功したのだ。
実際に、占領軍が撤退していっても、この病院は存続することになり、
「基本的には、精神病患者の受け入れ」
ということが行われた。
だから、全国にある精神病の病院というのは、山間部にある場合が多いが、
「そういう病院の元々は、この病院のように、軍部の秘密開発のための研究所だったのではないだろうか?」
と言われているのであった。
そのことは、
「街の七不思議」
のように言われていて、それこそ、
「都市伝説だ」
ということになっている。
実際に、病院の壁には、
「蔦が絡んでいる」
ということであったり、
「窓には鉄格子が嵌っている」
ということだったりして、臭いもかなりきついといってもいいだろう。
ここに病院があるのは、皆知っていた。そして、この病院は、
「精神病院だ」
という話も、公然の秘密のようになっていた。
その話を聞いた時、当時の子供は、そんなにビックリはしなかったという。
当時、精神病というと、
「一定数はいるのだろうが、そんなにたくさんはいないだろう」
というのが、子供の一般的な考えだったという。分からない部分も今に比べれば結構だっただろうし、今でこそ、いろいろな病名がついているが、昔はそれが一つになり、というか、
「分類ができなかった」
といってもいいのかも知れない。
今では、種類によって、幾層にも分けられていることから、一人の人間が、いくつもの症状を合併しているかのように見えている。だから、
「根底には一つの病気が合って、他にもいくつもの併合がある」
ということから、薬の種類が、それぞれに出ることで、かなりたくさんのものが出されることになるのだ。
陰謀論の人からすれば、
「薬の種類を増やして、医療費を高くする」
という人もいるかも知れないが、それだけのことなのか、ハッキリとは言えないだろう。
今だったら、精神疾患の人の病院ということで、
「心療内科」
という病院もあり、普通の病院と変わらないくらいにきれいで、いわゆる、
「クリニック」
と言われているので、知らない人は、
「普通の内科」
であったり、
「歯科医」
などとあまり変わらない。
ただ、中に入ればその違いを判る人は分かるというもので、それが、臭いであった。
独特な臭いを感じるのは、薬だけの臭いだといえるだろうか。
ただ、昔のサナトリウムのようなところは、そもそもが、臭いに関しては、どうしようもなく、どの病院でも、臭いを隠すということができるわけもなく、とにかく、
「これは病院の臭いだ」
ということで、一緒くたにしていただろう。
それでも、
「歯医者」
と、
「外科」
だけは、特殊な臭いがしていた。
精神科も同じことで、精神科の場合は他の病院と違い、
「湿気まで感じられる」
といっていた人がいたようだったのだ。
このサナトリウムも、昔の精神科病院だった頃は、湿気にあふれていた。それでも、
「自然の中に建っていることで、その湿気を含んだ臭いというのも、若干、緩和されている」
といってもよかった。
今では、精神病院というのはなくなった。患者は、他の土地に作られた大学病院に、それぞれ転移したが、それでも、若干名は残っている。それよりも、この病院は、患者数は、病院の大きさに比べれば、だいぶ少なくなっているようで、実際には、
「何かの研究所」
という側面があるようだ。