症候群と秘密結社
「本当に復讐として、殺害を最終目標に置いている場合は、もう一度殺しにくるかも知れないが。もし速攻で行動してくれば、被害者の身元が分かれば、犯人もすぐに分かるというものだ」
要するに、
「犯人にとって、被害者の記憶が戻ってしまうと、結果的に自分が終わりだと思うと、危険を冒しても殺しにくるだろう」
一番危ないのは、
「犯行現場にて、相手に顔を見られた」
と感じた場合である。
ただ、この事件が、
「迷宮入りになる」
と考えられる場合がある。
犯人の動機が、復讐であったりした場合、
「犯人が最初から、殺害が終われば、自殺をする」
と考えていた場合である。
被害者を殺しておいて、復讐が達成されれば、
「復讐の報告をしに、自分も追いかける」
とばかりに、自害するという人もいるだろう。
そもそも、動機が、
「復讐」
ということで、復讐の対象になる人が、
「これからの人生を共に歩もうとしている人で、その人が殺されたり自殺したことでの復讐」
ということであれば、
その人のいないこの世で、一人生きていくのは忍びない」
と考えることで、
「死を選ぶ」
ということが考えられるからだ。
その人が遺書を残した時、自分が行った復讐を事細かに書いていれば、
「被疑者死亡」
ということで、事件は解決ということになるだろう。
しかし、自分が好きだった人の、
「後を追う」
というだけのことを書いているのであれば、
「交通事故」
と、今回の事件は結びつかないのだ。
ただ、一つ、今回の事件で、一つ考えられることがある、
というのは、被害者は、
「ただのひき逃げだった」
という場合であり、
「なぜ、そんなことを考えたのか?」
というと、
「被害者が、記憶喪失だ」
ということからであった。
「もし、この交通事故というものと、記憶喪失との間に、因果関係が求められない」
ということであったら?
という発想である。
どういうことなのかというと、
「被害者が交通事故に遭い、病院に運ばれ、緊急手術を受けた」
ということから、
「交通事故が原因で、彼女は記憶喪失になってしまった」
ということを、当たり前のように感じているが、果たしてそうなのだろうか?
可能性としては、かなり低いとは思うが、0ということではない。
というのは、
「彼女は、交通事故に遭う前から、記憶喪失だったのではないか?」
という考え方である。
というのは、まず、
「彼女がなぜ、あのような寂しくも、さらいは、歩道もないような道を歩いていたのだろうか?」
ということ。
そして、
「彼女が交通事故に遭った」
といっても、夜といえど、
「見通しのいい場所」
ということで、
「そんなに簡単に事故が起こる」
ということか?
ということである。
例えば、
「彼女が、あの場所を歩いていたのは、何かの事件にまきこまれ、あの場所で、車から放り出された」
とも考えられないだろうか?
「婦女暴行の後」
ということであれば、あんな寂しいところを歩いていたとしても、不思議はない。
ただ、もしそうであれば、
「最初の暴行犯」
と、
「ひき逃げ犯」
とは、別々だといってもいいだろう。
彼女の服に乱れはなかったのかどうか、正直、これが暴行事件であれば、きちんと分かるのだろうが、
「一刻を争う命の危険を伴ったひき逃げ事件」
ということで、病院側も、そこまで見ていなかっただろう。
車にひき逃げされたのだから、少々の服の乱れは、それを怪しむこともないわけで、
「急いでの応急手当から、服も着替えていただろう」
急な手術なので、
「暴行の痕があったとしても、まったく気づかない」
とすれば、暴行犯にとっては、
「すでに捨てた女」
ということで、
「危険を犯してまで、彼女を殺しに来る」
ということはないだろう。
またもう一つ考えられることとして、ただ、この可能性はかなり低いといえるであろうが、
「薬物中毒ではないか?」
ということである。
「なぜ彼女がそこにいたのか?」
という問題は残るが、
「交通事故に遭った」
ということで、見通しのいい道路でということを考えると、
「薬物中毒でふらふらしていることから、被害に遭った」
と考えられる。
そうなると、彼女の薬物がどれほどのレベルのものかによって、犯罪が発覚するかということおである。
重度であれば、
「記憶を失っていようとも、禁断症状」
というのは起こるもので、最初は理由が分からなくとも、医者がいるのだから、
「これは禁断症状」
ということですぐに判明することであろう。
「意識」と「記憶」
どっちにしても、この被害者の記憶喪失が、
「事故に遭う前に、巻き込まれた何かの事件」
に原因があるとすると、もし、それが判明することになるというのであれば、
「彼女が死んでしまって、その時に、不審なことがあったりした場合に行われる、司法解剖でなければ、明らかになることではないだろう。
そうなると、
「警察が入り口の前で警備している」
といっても、
「まったくの無駄」
ということになるだろう。
しかし、その二つの可能性は、
「0でない」
というだけで、
「限りなく0に近い」
と言ってもいいだろう。
それはまるで、彼女が事故にあった道のように、
「見晴らしがよく」
そして、
「交わることのない平行線であるかのような、きれいな直線を描いているように思えるのだ」
つまりは、
「見えないもう一つの道が、どこかにあるのでは?」
ということも考えられるのだが、
今の時点で、そのことに気づくという人は誰もいないといってもいいだろう。
「彼女が記憶喪失になっている」
というのは、もし、本当に犯人がいて、その犯人にとって、
「都合のいいことなのか?」
ということである。
本当であれば、
「死んでもらわなければ困る」
と考えるとすれば、
「復讐ということで、最終的な死を望む」
という、
「私刑」
というものを考える場合。
そして、
「死んでくれなければ、自分に遺産が入らない」
という事情がある場合。
さらには、
「顔を見られてしまった」
などということで、彼女に記憶を取り戻されると、犯人とすれば、困るという場合である。
そのどれにしても、
「生きていられると困る」
ということであり、さらに、
「ただ死んでほしい」
という場合ではない、
「遺産問題」
と、
「目撃された」
などという場合であれば、
「時間との闘い」
ということになる。
だから、
「急いで死んでもらわないと」
ということで、何らかの手を打ってくるということになるだろう。
逆に言えば、犯人が動けば、大体の動機は分かるということで、それに対しての、警察側の対策というのも分かってくるということになる。
もちろん、本人が、
「いるべきところにいない」
ということで、
「失踪届が出ているはずだ」
それが出ていないとすれば、
「出せない理由がある」
ということで、
「事件が、おかしな方向に行っている」
といえるだろう。