症候群と秘密結社
主流だといってもいいだろう。
それを考えると、
「これほど、むごい世の中もない」
ということで、家族にとっては、
「この世の地獄」
というものを味わっているといってもいい。
「一思いに、生命維持装置を外そうか」
と考えたとして、
「それは家族としてはしょうがないことだ」
というのが、心理的には考えられることだ。
「どうせ、意識が戻る可能性はほとんどない」
と医者からも言われている。
医者としても、
「目の前で苦しんでいる患者の家族を見ているのは忍びないだろう」
といえる。
「本当であれば、楽にさせてあげたい」
といってもいいのに、それができないというのは、
「命を救う」
ということの本当の意味なのだろうか?
世の中というのは、基本的に考えると、
「多数決」
であったり、
「合理的な方向」
を正として、法律は作られているのではないだろうか?
「意識が戻る可能性がほぼほぼないというのに、それでも、家族が生き地獄を味わっているとしても、安楽死を許さない」
というのは、どうしたことなのだろう?
いくら、
「人間の死というものは尊厳のあるもの」
といっても、あんまりではないか。
昔の大日本帝国時代は、
「家族や天皇のために、死ぬのが当たり前」
と言われていた。
まるで、それに対しての、今の時代の戒めのように思えるくらいであるが、
それこそ、
「宗教かかっているようで、意味が分からない」
宗教によっては、
「身体に異物を入れることを拒む」
という宗教があり、
「輸血」
はおろか、
「特効薬の注射」
すら許されないというものがあるという。
つまり、
「異物を身体に入れるくらいであれば、そのまま死んでしまうのも、致し方がない」
ということになるのだ。
それこそが、彼らにとっての、
「尊厳死」
というもので、残された家族が困らないようにすることの何が悪いというのか。
そもそも、
「臓器移植」
というものも、認められようとしているのだから、安楽死を認めないというのは、それこそ、おかしな発想だといえるのではないだろうか?
この時の被害者は、
「植物人間」
ということにはならなかったが、別の形で、
「後遺症」
というものが残った。
その後遺症というものは、植物人間というほどひどいものではないが、
「他人をまきこんだり」
「他人に迷惑をかける」
ということでは、決して甘い問題ではなかったのだ。
刑事が、聞き取りに行った時、医者が、反射的に嫌な顔になったというのも、無理もないことだったのかも知れない。
この被害者の後遺症というのは、
「記憶喪失」
というものであった。
最初に目覚めた時の様子は、他の人と変わりがないように見えたので、医者も、
「まさか、記憶が失われている」
などということになっているなど、想像もしていなかったということであった。
その人は、年齢としては。20歳から30歳くらいの人で、女性であった。
そもそも、一番の疑問は、
「なぜ、そんな田舎道を歩いていたのか?」
ということであった。
実際に目撃者もおらず、ただ、夜、道の真ん中で倒れているのを車が見つけたということで、それから救急車の出動ということになったわけで、通報があったのが、
「午後11時くらい」
ということで、いくらバイパスとはいえ、深夜に車が走るのはまれということであろう。
ただ、それだけに、車が走るときは、結構スピードを出しているというのは普通にあることだった。
何しろ、山間のバイパスなのだから、
「普通、深夜に人が歩いている」
などということを考えたりしないだろう。
バス道路ではあるが、倒れていた場所は、バス停からも遠いところで、
「その近くに、家もなく、あるとすれば、別荘が考えられるくらいだった」
ただ、彼女が向かっていた方向に、この病院があるのであり、その方向を普通に歩いたとすれば、一番最初に到着する場所が、病院だったのだ。
そう考えれば、
「目的地は病院ではないか?」
ということも容易に想像がつくというもので、
「本当であれば、病院内の人、
「職員や入院患者」
に、写真を見せて、
「この人知りませんか?」
と言えばよかっただろう。
しかし、
「さすがにそれはまずい」
ということで思いとどまった。
今の時代は、
「個人情報保護」
というものがある。
もし、彼女は、
「事故に遭った」
というのではなく、
「故意に轢かれた」
ということであれば、
「殺人未遂事件」
ということになる。
それであれば、
「彼女がこの病院にいる」
ということを犯人に知らせるようなもの」
ということで、しない方がいい。
それをするのは、あくまでも、警察ということである。
一応、集中治療室の前には、常時、警官が見張っているということにはなっているが、
「いつまでも」
というわけにはいかない。
本当は、
「彼女の記憶が戻り次第、聞き込みを行って、事件を明らかにしておこう」
という考えだったのだが、
「まさか記憶喪失だったとは」
ということで、計画が狂ってしまったということだ。
ただ、犯人側はどうなのだろう?
「本当は殺すつもりだった」
ということであれば、すでに、彼女が生きていて、
「再度口を塞ごう」
と考えるのではないだろうか?
もし、それをしなければ、
「何のために、交通事故まで起こしたのか?」
ということになる。
問題は、
「殺害が目的だったのか?」
あるいは、
「何かを知っていて、それをしゃべられないようにする」
というのが目的だったのかということになるわけで、
「殺害目的だった」
ということであれば、文字通り、
「このままでは済まない」
ということになるだろう。
「彼女に死んでほしい」
と考える場合、
「完全な殺人」
ということで、その動機は、広範囲かも知れない。
「何かの恨みがある怨恨による殺人」
であったり、
「彼女が死んでくれることで得をする」
という意味での、
「遺産相続問題」
など、さらには、
「しゃべられては困る」
という意味での、証拠隠滅という場合などである。
最初の、
「怨恨」
というのは、そのレベルにもよるが、
「家族がその人に殺されたり、あるいは、屈辱の目にあわされて、その人が自ら命を絶った」
などという場合、
そして、
「自分自身の恨みの対象」
ということで、
「恋敵」
のような、
「嫉妬の対象」
ということであったり、
「自分の開発したものを盗作などされたという、名誉欲に対しての復讐」
などがあるだろう。
どちらにしても、
「相手を殺したい」
というくらいに恨みを感じるということもあり、その場合は、本来であれば、被害者の身辺を洗うことで分かってくるのであろうが、何よりも、
「被害者が誰だか分からない」
ということから、
「捜査のしようがない」
ということになるだろう。
「もし、このまま記憶が戻らなければ、これ以上何かをする必要はない」
というのが犯人側の考え方だろう。
もちろん、