覚悟という錯誤
「階段をわざと大きな石で作り、登りにくくすることで、敵がせめてきた時、足元にも気を付けないといけない状態にして。上から攻撃する」
というやり方。
さらには。
「城にかかっている橋に差し掛かると、わざと支えになる棒を外して、すぐに壊れるようにしておく」
などというテクニックがあったという。
中には、城によっては、
「一つの石を動かしただけで、一気に崩れてしまう石垣を作ったということで、
「千人殺しの石垣」
と呼ばれる城もあるという。
それだけ城には、いろいろな策が催されていて、
「攻城には、籠城の三倍の人数がいる」
と言われ、
「攻める方が、守るよりも、かなり難しい」
と言われているのだ。
しかし、守る方の一番の、問題は、
「補給を断たれると、地獄が待っている」
ということである。
だから、戦国時代などで、城を攻める時、前もって、敵が城下にある店から、食料を買い占めてしまうということがあったり、
「補給路となるところを抑える」
というやり方をしていたりするということであった。
実際に、城を守るためには、
「秘密の抜け穴を前もって作っておいて、そこから補給する」
ということであったり、
「実際に、相手が本丸に迫ってきた時、屋敷の裏や、庭の井戸から、隠し通路を作り、逃げ道を確保する」
ということも行われていたのだ。
実際に、城の普請、つまり、
「城の建設工事に携わった大工と言われる人の棟梁クラスは、城の普請が終わり、大名と呼ばれる殿様から、打ち上げだということで、宴会の席に招かれ、有頂天になって、接待を受けていると、その時に、毒殺される」
という話を聞いたことがあった。
「どうしてそんな」
と聞いたが、考えてみれば当たり前だ。
なんといっても、
「城の隅から隅まで構造を知っている」
ということである。
だから、そんな人を生かして帰すと敵がせめて来るとき、その情報を手に入れてしまえば、
「完全に裸城になってしまう」
というわけで、結局は、
「秘密を知っている人の口を封じるしかない」
ということになる。
それだけ、
「戦国時代」
というのは、厳しい時代ということで、
「やらなければやられてしまう」
ということになるのだ。
実際に、戦ともなれば、
「敵の中に、裏切るものを作る」
ということで、
「敵を買収する」
ということも行われている。
実際に、そんなことをしなくても、
「城中の武将の中には、敵に買収されたものがたくさん混じっている」
という噂を出すだけで、殿様は疑心暗鬼になり、
「本当はそんなこともないのに、ちょっとでも、意見をいう武将が出てくると、容赦なく、スパイ扱いにされて、暗殺されてしまったりした」
そうなると、相手が自滅することになり、
「戦を始める前から、すでに勝負はついていた」
ということになってしまうだろう。
それが、
「戦国時代」
というものであり、
「昨日の友は今日の敵」
ということで、気が弱い城主は、
「自分で自分の首を絞める」
ということになるのだ。
特に、
「何でもあり」
と言われる戦国時代。どこでどんな暗躍が行われているのか、分かったものではないということである。
そんな時代から、
「遊郭」
というものは存在している。
そもそも、
「遊郭」
の、
「郭」
という字は、、
「城郭」
の、
「郭」
という字と同じではないか。
そう考えると、
「実に面白いものだ」
といえるであろう。
戦国時代というものの起こりが、そもそも、室町時代の将軍家が、
「弱体だった」
といってもいいだろう。
贅沢三昧だったり、守護大名の力が元々強かったり」
とそんな時代だったのだ。
全国に残るソープ街のほとんどは、そんな遊郭の名残りである。元々昔は高級店が多かったが、今では、大衆店、格安店と幅が広がってきた。
それだけに、店の方でも生き残りに大変で、
「コンセプトを持ったお店」
という個性を打ち出すことで、店側も経営を保っているということであった。
そんなソープ街を、学生の頃まで毛嫌いしていた。
どうしても、
「お金で女を買う」
ということが汚い気がして、しかも、
「最初の女性は、好きな女性と」
と、まるで、昭和の純愛を考えていた。
そのくせ心の中で、
「優しいお姉さんに導かれたい」
という意識のどこかにあった。
大学時代の知り合いの中に、聞きたくもないのに、
「俺は、童貞を知り合いのお姉さんに喪失させてもらった」
などといって、まるで自慢げに話すやつもいた。
それは、別に自慢でもないのに、わざわざ言われると、本当に自慢に聞こえて仕方がない。それが、その人の性格であり、
「自分にもそんなところがあるんだ」
と思うと、自慢している相手がまるで自分のように見えてきたのだ。
「そういうのも、悪くないかな?」
と思いながら、結局大学時代は、その機会もなかった。
「だったら他力本願でも」
ということで、会社の先輩から話があった時、心の中で、まんざらでもなかったのだ。
しかも、いきなり店に行くわけではなく、緊張を和らげるつもりだったのか、近くの公園に連れてきてくれた。
後から分かったことだが、その先輩も、口では、先輩風を吹かせていたが、実際には、この公園に連れてきてくれたのは、
「自分の気持ちを和らげるためでもあった」
ということであった。
特に、
「灯台」
には感銘があるようで、同じように歴史好きには、その気持ちが分かってきて、先輩に連れてきてもらって童貞を無事に喪失することができると、今度は、自分が、このあたりに出没することも多くなってきた。
とはいえ、そんな頻繁に来れるわけでもなく、
「数か月に一度」
という感じできていた。
別に、
「馴染みの女の子」
というのがいるわけではなく、とりあえず、ネットで気に入った女の子を見つけて入っていくことにしていた。
すでに先輩が連れてきてくれてから、数年が経っていたので、毎回違う女の子ではあったが、自分の中の、
「馴染みを数人に絞った」
という中での、ローテーションであった。
そういう意味では、自分の中のサイクルになっていて、ソープ街には、
「帰ってきた」
という感覚だったのだ。
そして、高度パターンも毎回同じ、
「灯台のある風景」
というものを楽しみに来るのだった。
時間帯は、仕事が終わっての夜が多く、ネオンサインもきれいで、それが、川面に移っている様子を、しばし眺めるのも楽しみだった。
その日も、いつものように予約をしていて、まず、公園で軽く休憩をして、店に入った。
待合室には、いつも数人の客がいるが、誰も意識してか、表情も変えず、各々好きなことをしている。
スマホを見ている人が多く、スタッフが呼びに来るのを、今か今かと待っている様子だった。
数年も通っていると、客の様子から、最近き始めたのか、ベテランかということはその雰囲気で分かるというものだ。