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裏の裏

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 ということであった。
「DNA鑑定に入った」
 というのは、被害者の所持品から鑑定に回されたものだが、わざわざ、
「DNA鑑定を行った」
 というのは、
「万が一、被害者がこのまま命を落としてしまったら」
 ということからの、万が一ということでの検査だったのだ。
 犯人としては。
「何が目的だったのか?」
 まずは、被害者として運ばれた人物が誰なのか?」
 ということであった。
 幸いにも彼が倒れているその場で、彼がかばんを所持していたことから、身元の判明には、そんなに時間が掛からなかった。
 しかも、彼が所持していたカバンというのは、
「ショルダーバッグ」
 ということで、それこそ、
「肌身離さずに身に着けている」
 ということで、明らかだといっていいだろう。
 カバンの中には、名刺も財布も、免許証もあった。
 被害者の名前は、
「横山悟」
 といい、年齢は35歳で。近くの商社に勤めているサラリーマンだった。
 商社といっても、そんなに大きな会社というわけではなく、地元では名前は知られているという程度で、それでも、
「業界内で知られている」
 というだけのことで、一般的には、知っている人は少ないといわれる会社だったのだ。
 その会社で営業をしているようで、どうやら、たまに、早朝会議があるということで、
「まずは、普段の自分の仕事をこなしてから、会議に入りたい」
 と思っていることから、
「彼は会議の時は、いつも、始発でくるんですよ」
 と、始発が、近くの駅に到着するのが、
「早朝の5時半くらい」
 ということで、事件があったのが、
「6時前後」
 と考えれば、
「事件があって、二時間以内ではないか?」
 という医者の見立ても、まんざらということではないだろう。
 その日、駅の改札を被害者が抜けたのを駅員が覚えていたことから、
「駅に5時半に降りた」
 ということは、証明されたのであった。
「その時の横山に何があったというのか?」
 というのは、本人が記憶を失っているので。はっきりとはしない。
 それでも、
「命が助かった」
 ということは、いいことであった。
 ただ、問題は、
「被害者が、何かを見ている」
 ということを犯人が怖がっていると考えていたり、そもそもの目的というのが、
「被害者の殺害」
 ということであれば、その目的は達成していないということもあり、結果的に、
「再度狙われる可能性が高い」
 といってもいいだろう。
 それを考えると、
「被害者への警備は完璧にしなければいけない」
 ということで、しばらくの間、病室の前に、
「警備の警官を配備する」
 ということは当たり前であった。 
 実際に、再度狙われるということはなかった。
「犯人は、被害者を殺害するつもりまではなかったということになるのかな?」
 と考えられたが、
「じゃあ、衝動的な犯行だったというのかい? だとすれば、二つの血痕の意味がますます分からない」
 と一人の刑事は言ったが、
「殺意と二つの血痕というのは、直接的に結びつくものなんですかね?」
 ともう一人がいうと、
「そりゃあ、そうだろう。あれだけの血の海状態を残したんだから、何か意味があったといってもいいだろう。たまたま、誰かを襲ったが。そこでは、実なその前に別の事件があったというのは、偶然としては、できすぎではないか?」
 というのだった。
「でも、偶然じゃないとも言えないのでは? 同じ場所で同じ目的なのかどうかは別にして、血痕が残っているのは、何かのカモフラージュだと考えられないとも限らないからね」
 というのだった。
「昔読んだミステリー小説で、大量の血痕を隠すために、猫を殺害して、その痕跡を隠したというのがあったが、それはあくまでも、殺人自体をごまかすということで、今回のように、公衆の道路において被害者がいる事件なので、血痕をごまかすという必要など、さらさらないということになるだろうね」
 と言った。
「ところで、あのもう一つの血というのは、間違いなく人間の血なんだろ上?」
「それは間違いないですね。人間の血液型が鑑識発表では出ていますからね」
「それにしても、変な事件だ」
 ということであったが、
「聞き込みの成果もあまり上がらなかったな」
「ああ、そもそも、あのあたりは人通りも少なく、住宅はあっても、閑静な住宅街ということで、マンションも防音設備も整っているので、少々の物音や声では、気づかない人が多いでしょうね。しかも、今の人は、少々のことでは、いちいち確認したりしないですからね」
 ということであった。
「手掛かりというのは、ほとんどないといってもいいのかな?」
「ええ、その通り、最初、ほとんど手掛かりはないと、今度は時間ただけがいたずらに過ぎていくということになるので。当然、証拠や証言も曖昧になり、もし、証人がいたとしても、その信憑性に関してはほとんどないということになるでしょうね。
 ということは、
 さて、今回の事件で被害者が、
「一部の記憶を思い出した」
 ということで、捜査員とすれば、
「一縷の望み」
 ということは分かっていても、それまで何も情報らしいものがなかっただけに、
「出てきただけでもよかった」
 と考えたのだ。
 今回のような事件が起これば、
「すでに、迷宮入り一歩手前」
 といってもいいだろう。
 ただ、
「被害者は頭を殴られて、その場に倒れこんだんだろうな。だけどどうして死亡しているかどうか、最後まで確認しなかったんだろう?」
 ということであるが、
「誰かが近くを通りかかったのでびっくりして逃げたんじゃないか?」
 といった。
「でも、だったら、誰か目撃者がいてもよさそうなんだが」
 というと
「言い出せないだけの理由がその人にはあったんじゃないか?」
「例えば?」
「不倫のカップルがいて、そこに二人がいるはずないというようなアリバイ工作をしているとか?」
「なるほど、その場合は考えられることだわな」
「他には、別の犯罪が絡んでいたりして、そういう人も名乗り出ることはできないよな」
 と言った。
「もっと、普通に名乗れない場合がないか?」
 と言われて、
「あっ、そうだ。被害者か加害者を知っていて、特に加害者などを知っているとすれば、今度は自分が危ないと考えるのではないか?」
 ということであった。
「それなら、考えられないことはないが、ちなみに、犯行現場は、被害者の家の近くなのか?」
 と聞かれ、
「ええ、通勤路に当たるということでした」
「その割に、目撃者がいないというのは、少し分からないな。犯人がわざとその時間のその場所を狙ったとも考えられる」
「いやいや、そうなると、もう一つの血液の説明がつかない」
 というと、
「いやいや、そもそも、この事件において、今までに説明がつかないということは、ずっと言われていることで、これ以降も同じということになるので、何を今さら、そのことにこだわるか? ということになるんだよ」
 という。
「じゃあ、君は、事件を他から攻めていって。最後に内濠を埋めるということで、考えているのかい?」
作品名:裏の裏 作家名:森本晃次