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最後の天使

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「毎日平均の勤務時間が、10時間以上といわれているが、それも無理もないことだ」
 と言えるのではないだろうか。
 それが教師の実態であり、
「ブラックの典型例」
 と言われるのも当たり前のことである。
 だから、学校をやめて、塾の講師になったり、他の道を選ぶという人も結構いるのではないだろうか?
 そういう意味で、こちらのパソコン教室の講師にも、
「元学校教師」
 という人も数人いたのだった。
 彼らは、自分のことを多くは語らない。
 それだけ、
「教師時代が、不遇であり、思い出したくもない過去だ」
 ということになるのかも知れない。
 そもそも、講師どうしで話をすることもない、
「時間が合わない」
 というのも、その理由であるが、普段は結構ブスッとしていたりするのだ。
 そんな対応が、女性の中には、
「あの講師、気になるわ」
 と思っている人も多いだろう。
 パソコン教室の中級コースというのは、他のコースに比べて、比較的女性が多い。
 半分くらいは女性ではないだろうか。初級コースは、それこそ、
「中高年の中間管理職」
 ということで、機械関係に疎いことから、どうしても男性が多くなる。
 さらに、上級コースは、
「プログラマーやシステムエンジニア志望」
 ということで、やはり、女性が圧倒的に少ない。
 それぞれのクラスは、
「ほとんどが男性だ」
 といってもいいだろう。
 しかし、
「中級コース」
 というのは、それほど切羽詰まってはいなくて、
「趣味のパソコン講座」
 という意味合いが強く、
「アフターファイブにすることもない」
 という人が通ってくるので、男女ともに、平均した数になるというのは、当たり前のことであろう。
 だから、中級コースは、そこまで切羽詰まった講義はなく、
「ほのぼのとしたコース」
 といってもいいだろう。
 当然教える方も、物腰が軽く、教えられる方も、
「講師に対して、好印象を持つ」
 というのも当たり前だということだ。
 しかも、教える方は、
「元教師」
 若い女性などでは、
「学生時代の初恋を思い出す」
 という人もいるだろう。
 特に若い講師で、
「イケメン」
 ということであれば、憧れるというのもありであろう、
 中には、
「婚活目的」
 という人もいないわけではない。
 元々は、同じ講習を受けている生徒の中からと思っていたのだろうが、相手は、講師であってもありだということだ。
 いつも、顔を見ているのだから、それは意識しない方がおかしいというものだ。
 実際に、生徒の中に、大した人はいない。今の時代、
「そこまでの肉食系の男子がいれば、こんなところで婚活を考えたりはしないわ」
 と女性の中には感じている人もいるだろう。
 そんな中で、この、
「パソコン教室」
 というものの中で一番モテているのが、
「白石一郎」
 という講師であった。
 彼は、見た目にはさわやかで、女性生徒からも人気があった。もちろん、女性生徒からすれば、
「まわりはライバル」
 ということで、ひそかに憧れるという雰囲気であったが、中には本気にしている人や、実際に関係のあった人もいるようだった。
 だから余計に、女性陣の中で、
「バチバチという火花が散っている」
 ということなのだろうが、誰も、それをまわりに感じさせないようにしていた。
 ただ、そんな喧騒とした雰囲気は伝わるもので、
「白石講師とめぐって、女子生徒の間で嫉妬心が渦巻いている」
 という感覚を持っている人もいただろう。
 中には、男子生徒の中で、
「女性生徒といい仲になりたい」
 ともくろんでいる輩もいた。
 婚活というよりも、どちらかというと、
「いい男女の関係」
 つまり、
「割り切りで付き合う」
 という、セフレのような関係を望んでいる人だ。
 そんな人から見れば、バチバチの女の争いなどというのは、一目瞭然といってもいいだろう。
 だから、肉食系の男子からすれば、
「そんなややこしい女と関係を持つと後が厄介だ」
 ということで、無視をしていたのだ。
 だからこそ、女たちも、
「そんな男子生徒の目が鬱陶しくなるので、余計に講師に向く」
 ということで、ある意味、ぎくしゃくはしているが、決して悪い関係ということではないのだった。
 それを考えると、
「白石講師」
 とすれば、
「やりやすい」
 といってもよかったのかも知れない。
 彼は、学校に勤めていた頃にくらべ、
「かなり楽だ」
 と思っていた。
 なんといっても、
「指導員のようなことをしないでいい」
 ということだからである。
 あくまでも、
「講師というのは、パソコンを教えるだけ」
 というだけの関係なので、別に余計な意識もいらない。
 それに、受験というものが関係あるわけではないので、
「とりあえず、講習期間中に、ある程度の事務職において、パソコンが使える程度になってくれればいい」
 ということなのだ。
 だから、基本的な付き合いは、
「講習期間中だけ」
 ということで、
「これ以上の割り切りはない」
 と思っていたのだ。
 ただ、それも、実際に女性と付き合ってみると、想定外のことも起こるものだった。
 それまで学校の教師をしている時は、
「生徒の母親に手を出す」
 などというリスクは負えないと思っていた。
 しかもただでさえ、学校や、教育委員会からのプレッシャーが強く、
「女に手を出す」
 などということで、精神的にも余裕がなかったといえるだろう。
 しかし、これが、
「パソコン教室」
 ということになれば、基本的に、
「生徒からの苦情がなければ、問題ない」
 ということであった。
 これが、学習塾などであれば、
「生徒の進学」
 というのが、ノルマになってくる。
 教室内の至るところに、進学校の名前が貼ってあり、いやでも見てしまうことで、
「学校とは違った意味での問題」
 というものが出てくるということになるだろう。
 だから、
「パソコン教室」
 というのは、白石講師にとって、
「天職ではないか?」
 と思うほど、居心地のいいところであった。
 実際に、
「生徒に手を出す」
 ということは行っていた。
「他の講師がどうなのか?」
 ということは分からなかったが、
「少なくとも、バレないようにしないといけない」
 と思っていた。
 もちろん、会社からは、そこまでは言われていないが、それくらいのことは、
「モラル的に当たり前のこと」
 ということで、わざわざいう必要はないということなのだろう。
 そういう意味では、却って、
「気を付けないといけない」
 ということなのだろうが、そもそも、白石の中には、
「これまでの暗黒の人生とはおさらば」
 ということで、気が大きくなっているのは無理もないことだ。
「学校で教師などとやっていたことを思えば、ここは天国だ」
 ということで、自分には、それなりに、気分的な余裕のようなものがあった。
 だからなのか、彼が自分から動こうとしなくても、
「女の方から寄ってくる」
 ということで、
「モテキというものに入ったかな?」
 と、実に都合のいい解釈をするのであった。
 実際に、今までにはない、
「自分の中の余裕」
作品名:最後の天使 作家名:森本晃次