最後の天使
といってもいいだろう。
そこへもってきての。
「ソーリの売名のための海外への金配り」
よく、国民が許せるというものだ。
しかし、問題はそこではなく、
「今の政府に代わる人がいない」
ということが一番の問題で、
「野党第一党」
というのは、支持率数パーセントというひどい状況。
そして、政府が何か粗末なことを行えば、それを糾弾し、いい方向にもっていくというのが、政府の在り方であるはずなのに、結局は、
「ただ、文句はいうが、その代替え案というものを一切出さない」
つまり、
「政府が悪い」
「政府がだらしない」
とはいうが、具体的に、
「どこが悪いというのか?」
「じゃあ、どうすればいいのか?」
ということを一切言わない。
そんな連中に政治を任せると、結局、
「投げ出して終わり」
ということになり、
「結局、今の政府がどんなにポンコツでも、誰がやるよりもまし」
というだけのことである。
これが、
「今の政治だ」
ということになれば、手の打ちようはないといってもいいだろう。
「そんなひどい国家だからこそ、うちのような会社がやってこれたんだ」
と、今の当主である父親は、そう言っていたが、兄弟ともに、そんなことが分かるはずがない。
「きっと、自分が当主となってやってみれば、次第に分かってくるのだろう」
と弟は思うようになった。
だから、弟は、兄が投げ出した会社を、
「自分がやろう」
と考えたのであろう。
実際に当主にまではなっていないが、
「見習い状態」
ということであっても、見えてこなかった会社の内情が見えてくるようになると、余計に、
「兄貴には、この立場は渡さない」
と思うようになったのだ。
だから、本当であれば、
「兄貴が教師としてうまくいってくれればよかったのに」
と思っている。
最初こそ、
「教師を辞めたことで、すべてに疲れ果てた兄が帰ってきた」
という時、
「このままでは、俺の立場が」
と思ったのも事実だった。
だから、弟として
「兄を励ましている」
という素振りを見せて、
「何を考えているのか?」
ということを探っていたのだった。
しかし、兄が、心の中で、
「都会で、もう一度」
と考えているのが分かったところで、追い打ちをかけるように、
「俺、今度結婚する」
と言ったのだった。
実際に付き合っている女性がいないわけでもなかったが、本気で結婚というところまでは考えていなかった。
「結婚するには、ちょっと問題が」
と思う女性であり、
そう感じたのは、
「俺が本当に好きなのかどうかわからない」
ということと、
「この女と一緒にいると、俺が操られる気がする」
と思ったからである。
要するに、
「こんな女と結婚すれば、家を乗っ取られる危険がある」
ということを感じたからだった。
実際に、
「計算高い」
ということを感じた。
本当は、
「先読みができる」
ということで、そこまで悪い女ではないのであったが、
「一度疑ってしまうと、なかなか解消されない」
と感じる弟とすれば、
「こんな女は、兄貴でちょうどいいや」
というくらいに思っていた。
実際に、
「幼く見えて、体型も幼児体型」
ということで、
「兄貴好みの女だ」
と思ったのだ。
弟からすれば、
「俺はもっと大人っぽい女に惹かれるな」
ということで、実際に、一時期であるが、
「キャバクラに通った」
という時期があった。
それは、取引先の人に連れていってもらって、少し遊び心が出たといってもいいが、すぐに行くのをやめた。
要するに、
「熱しやすく冷めやすい」
という性格で、
「飽きてしまった」
ということになるのだろう。
それを考えると、知らないこととはいえ。
「兄弟とも、風俗に嵌りやすいところがある」
ということであった。
ただ、兄貴の方は、今でも風俗が好きだった。前述のように、
「行為目的」
というわけではなく、
「会話だけでも楽しい」
という、
「癒しを求める」
ということであった。
ただ、
「異常性癖」
というのは、兄弟にそれぞれ持っていて、それこそが、
「父親からの遺伝ではないか?」
と思われた。
それこそ、
「英雄色を好む」
という言葉があるように、そういう解釈をするときだけ、兄弟そろって、
「俺たちは、会社社長の息子なんだ」
という思いを抱くのだった。
弟の場合は、
「会社社長ということとして」
と考えるが、兄の方では、
「単純に、異常性癖ということで」
ということで、考えることであった。
そういう意味の兄弟のギャップを、
「兄の方は死んでしまった」
ということで、
「片方からだけでは理解できない」
ということもあって、
「もし事件が迷宮入りするとすれば、ここが一つの結界だったのかも知れない」
と思えたのである。
実際に犯人は、
「弟ではないか?」
と言われている。
いろいろと捜査した結果、
「他に誰か、犯人に思い当たる」
という人はいない。
ちょうど、何回目かの捜査会議が終わった後、秋元刑事と、樋口刑事。そして、桜井警部補が三人で、
「裏捜査会議」
を行っていた。
この三人は、いつも事件を解決しているトリオということで、今では、恒例行事ということになっているのであった。
それなりに、
「恨みを持っているという人はいなかった」
人間だから、それなりに、人から恨みを買うということは普通にあるだろうが、だからといって、
「殺したい」
というほどの人がいるとは思えなかった。
これは、もちろん、今捜査線上に浮かんだ相手だけということなので、他に範囲を広げれば、他にも犯人が出てくるかも知れないが、事件が起こって、そろそろ二週間が経とうとしていて、その間に、
「何も出てこない」
ということは、中間捜査としては、今の中から犯人を考えてもいいのではないか?
と思えるのだった。
そうやって考えると、犯人と思しき人は少なかった。
被害者が関係した女の中にいるかと考えたが、実際には、講義の時間を終えて、被害者が戻ってくるまでの間、被害者と付き合っている女としては、
「主婦の二人にはアリバイがあった」
のである。
二人とも、携帯ブースで電話をかけていた。それは、他の人たちから見られているので、
「二人同時にアリバイが成立した」
といってもいいだろう。
その間に、独身の彼女だけが、その時アリバイはなかった。
実際には、
「トイレに行っていた」
と供述したが、その証拠はなかったのだ。
ただ、彼女のことを調べていると、
「別に男がいる」
ということが判明した。
それを、彼女は、警察に追及されると、あっけなく話したのだった。
その供述は実は彼女にとって、かなり不利になるものであって、
「犯人でなくとも、何か事件に重要な立場にいる」
ということになるのだ。
ただ、彼女に対して警察が、
「どうして、そんなにあっけらかんと話すんだい?」
と聞かれて、
「ああ、そんなことは警察が普通に調べれば、すぐにわかること」
ということであった。