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二刀流の行きつく先

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「大人に対しての距離感」
 というものが今までにないものとなったのであった。
 これまでは、
「背伸びしている」
 とは感じていたが、へたをすれば、自分に接する大人の中には。自分よりも背が低いという人もいるだろう。
 と思うようになっていた。
 それを考えると、
「今回のことで、俺は子供に戻ってきたのではないか?」
 と感じられたことも、
「疑心暗鬼」
 になってきた一つだったのだ。
 そして、この、
「疑心暗鬼の正体」
 というのが、
「これまで、まわりの大人が、自分たちの都合だけで、持ち上げるだけ持ち上げてきたものに対し、こっちも気を遣って、持ち上げやすいようにしていた」
 と思うようになったのだ。
「お互いに、うまくいっている距離感だ」
 と思っていたことで、何も相手を疑うこともなく、前に進むということが、どれほど楽なことかと感じていた。
 だから、
「疑心暗鬼」
 などというものはなく、
「すでに自分は大人になっていたのだ」
 ということで、小説の作風や、演技に対しては、
「子供の目」
 から見ていればいい。
 ということで、
「却って周りに対しての、自分というものがはっきりとしている」
 と考えると、
「分かりやすいキャラクターでいることが、世渡り尾基本だ」
 と考えることで、それを、
「大人だ」
 と考えていたのだろう。
 そんなことを本人が考えているなどと、まわりの大人は分かってはいないだろう。
 そもそも、
「何かに悩んでいる」
 などということを感じることもなかったはずだ。
 ただ、
「少し、普段とは違うな」
 とはさすがに思っていただろうが、それも、
「大ヒットのために、毎日が忙しかったので、その反動が出たのだろう」
 という程度のことだった。
「反動」
 ということに間違いはなかった。
 作品が大ヒットしたことで、忙しい毎日が一段落すると、誰もが、ぽっかりと穴が開いたような気がするというのはあることで、それこそ、
「年末の繁忙期を乗り越えて、正月休みに入った時と同じ」
 ということで、いわゆる、
「気が抜けた」
 といってもいいだろう。
 ただ、この時の本人が、
「大人への階段」
 というものを、
「やっと登ろうとしていた」
 ということに、誰も気づいていなかったということであろう。

                 出来レース

 この感覚は、
「実は本人にも分かっていなかった」
 というもので、だからこそ、
「暗中の策を繰り返している」
 という状況に、まわりとの、感覚のギャップを埋めようとして、無意識に、
「大人になろう」
 と考えていたのだろう。
 これは、子供に限ったことではなく、大人とすれば、誰もが考えることだということになるのだった。
 そのきっかけになったのが、今回の、
「小説におけるベストセラー」
 ということであり、役者としても、
「自作での主演」
 ということでの、視聴率への貢献は、
「まだ子供だ」
 という人間にとっては、
「有頂天にさせられるには、十分だった」
 といってもいいだろう。
 なんといっても、なかなか二刀流うなどできるわけもないのに、こなしてくれているということを、大人目線で回りが見ていたからだった。
 そんな大人と子供の違いを、彼は、自分の中でどう感じていたのか?
 正直、
「最初から、知名度が高かったことで、他の子供が大人の階段を上っていくのとでは、かなり違っている」
 ということは分かるのだが、
「では、どのように?」
 ということに関しては、大人としても、
「今までに、ここまで優秀な少年を相手にしたことがないので分からない」
 と思っていた。
 正直まわりの大人は、彼のことを、一律に
「天才だ」
 と思っていた。
 確かに、
「天才だ」
 といってもいいだろう。
 だから、逆に大人側が、
「彼に学ばないといけないところがある」
 と考えるほどだった。
 しかし、彼からすればどうだろう?
 本当は、目指すべき大人の背中を見ながら進んでいくというのが、大人になる近道ではないか?
 しかし、彼の場合は、いつも先頭にいて、目指すものはなかった。
 ただ、それも、
「生まれつきの天才」
 ということではなかった。
 もちろん、
「どこかで、開花した」
 ということなのだろうが、そのきっかけを知っている人は誰もいない。
 子供の頃から、
「一風変わったところがある」
 ということで、逆に、まわりから敬遠されていて、近所の大人は、自分の子供に、
「あんまり、あの子と遊んだりしちゃだめよ」
 と言われている始末だった。
 実際に、両親も変わり者だ」
 と言われていたのだから、その因果が子供に及んだといってもいいのだろうが、要するに、
「遺伝的に、人とかかわるのが嫌だ」
 と考えていたのだ。
 その考え方の根本には、
「人と同じではいやだ」
 ということであった。
「人と同じことをするくらいなら、孤独な方がいい」
 と、両親ともに感じていたのだった。
 なるほど、
「天邪鬼」
 であったり、
「変わり者一家」
 と言われるのも無理もないことで、子供としても、
「あんな連中と一緒にされないだけ、一人の方がいい」
 ということで、
「村八分に逢っていた」
 ということであった。
 しかし、中学生くらいの頃から、彼は、その
「天才の片鱗」
 というものを示し始めていた。
 先生の一人に、
「先見の明がある」
 という人がいたのも、幸運だったかも知れない。
「彼には、文才がある」
 ということで、本人には、その話をしたことで、
「そっか、じゃあ、何か小説でも書いてみるか?」
 というのが、そもそもだったのだ。
 その間に、母親が、内緒で
「オーディション」
 のようなものに応募していた。
 実は、母親の弟が、芸能プロダクションで、
「どうしても、誰か一人候補を出さないといけないということで、困っていたけど、ちょうど、姉さんのところには、オーディションに出てもらえるいい人がいた」
 ということで、弟に折れる形ではあったが、
「しょうがない」
 ということで、本人には内緒で、オーディションに申し込んだのだった。
 書類審査も順調に通過し、実際に、
「オーディション会場で」
 ということになって初めて打ち明けた。
 最初こそ。
「俺がそんな、いやだよ」
 と言っていたが、弟の、
「小説も書いていて、それだけ積極的な活動しているんだったら、いじれは、二刀流になればいいんだ」
 ということで、ちょうど、例の野球選手が、頭角を現してきたということで、
「二刀流」
 という言葉に皆あこがれを持っていたので、その言葉に動かされる形になったのだ。
 実際に、オーディションに出ると、その時は、合格は及ばなかったのだが、一応、
「審査員特別賞」
 というのをもらった。
 そして、実際に、ある芸能会社から、
「エキストラではあるけど、出演してもらえるかい?」
 ということで、実際に出演した。
「意外と面白いな」
 ということで、
「また話があればやってみたい」
 と考えていたのだった。
 もちろん、小説は書き続け、何度目かの、
「K出版社ミステリー大賞」
作品名:二刀流の行きつく先 作家名:森本晃次