闇が作り出した幻影
そもそも、大日本帝国というのは、科学力に関しては、欧米列強に引けを取らない」
というどころか、
「最先端を行っている」
といってもいいだろう。
小説家
駅前のカフェでのひそひそ話をしているすぐそばで、パソコンをいじっている人間は、小説を書いていた。
どんな小説を書いているのかというと、どうやら、
「陰謀論関係」
の小説を書いているという。
彼は別にプロ作家ということではなく、出版社との契約で書いているというわけでもないので、基本的には、
「何を書こうが問題ない」
ということであった。
彼が書いている、陰謀論というのも、あくまでも、架空の話ということなので、誰からも何も言われないだろう。
ただ、それを気にするという人たちがいて、特に今の時代、少しでも、表に出るようなことがあれば、気に掛ける人がいたようだ。
彼は名前を、
「川崎幸三」
と言った。
書いた小説は、約15年くらい前から主流になってきた、
「無料投稿サイト」
というところに掲載していた。
ここでは、書きたい人も、読みたい人も、無料で登録すれば、読み書きができるというシステムになっていて、15年くらい前から数年間がピークだったといってもいいだろう。
それ以降は、次第にさびれて言ってはいるが、最盛期に比べれば、かなりサイト数も減ってきたわけで、それでも、今残っているところは、それなりに、
「知名度がある」
というところであろう。
そもそもの、
「火付け役」
ということになったサイトであったり、
「運営している会社が、大手出版社」
ということで、
「印刷物での発表にもダイレクト」
ということが人気となり、いまだに主流と言われているのであった。
最大レベルのところは、いまだに、
「数分に1作品は誰かアップしている」
と言われるところで、そもそもが、
「ファンタジー系に強いところ」
ということで、
「無料投稿サイト」
の火付け役ということだけではなく、
「ファンタジーブームの火付け役」
ということでもあることが、人気の秘密だったのだ。
実際に、ここで書いていた人が、
「プロとしてデビューする」
ということも当たり前に行われている。
だから、他の投稿サイトが、どんどん閉鎖されていく中で、まだ残っているところが結構あるというのは、
「このサイトが、そもそも強かった」
というのが大きかったことだろう。
そして、そこからかなり遅れてではあったが、他の投稿サイトが下火になりかかった頃、出版社としては、日本でも3本の指に入るくらいの大手出版社が、
「無料投稿サイト」
というところに名乗りを上げてきたのだった。
そもそも、これまでの無料投稿サイトというのは、
「何かにつけて、強みがなければ、続いてこなかった」
ナンバーワンと言われるところであっても、
「ファンタジー作家が非常に多い」
ということから、ファンタジーむーむが起こったことで、この会社が、ナンバーワンになったのか?
それとも、ここが元々強い勢力があり、
「そんな投稿サイトが推しているファンタジーというジャンルだから、ファンタジーブームが巻き起こったのか?」
ということにかけては、正直分かっていない。
しかし、そもそも、無料投稿サイトが流行りだした理由というのも、実は理由があったのだ。
これは、前述の、
「バブル崩壊」
ということに端を発している。
そこから、今の無料投稿サイトに入るわけだが、その間に、一度、
「自費出版社系の会社」
という存在が大きかったのだ。
この会社が出てきた理由の一つの前提として、2つあるといえるだろう。
一つの理由が、
「バブル崩壊」
というものによって、
「社会が変革してきた」
というところにつながってくる。
「バブルの崩壊」
というもので、会社は、
「事業の縮小」
ということになり、大規模なリストラが行われることで、
「今までのような、残業もなくなった」
もちろん、
「残業手当を出せない」
ということがその一つで、もう一つは、
「社員というもののあり方が、正社員から、非正規雇用である派遣社員などに移行してきた」
ということである。
派遣社員というと、派遣会社から派遣しゃれた社員のことで、派遣会社と派遣先の会社との間の契約ということになるので、社員は、派遣会社との契約だから、派遣会社の社員として、派遣先の会社に、それこそ、
「派遣されて仕事をこなす」
ということになる。
となると、派遣先としても、
「安い給料」
ということが前提で、
「派遣会社」
とすれば、
「契約以上の仕事はさせられない」
ということもあり、
「残業は絶対にさせられない」
ということで、
「残った仕事は、社員がサービス残業でこなす」
ということになるのだ。
しかし、そうなってくると、
「基本的に、残業はない」
ということになり、それまで、
「24時間働いていた」
ということから、
「定時になったら帰る」
ということで、
「夜からの時間、何をしていいのか分からない」
ということになる。
バブルの時代には、
「残業しないといけない」
ということであったが、基本的に、
「働いた分は、きちんと残業手当がもらえていた」
ということで、お金はあるといえるだろう。
しかし、仕事ばかりして、お金を使う暇がなかったので、今時間がある分、
「そのお金を使って、何かをしよう」
と考えるだろう。
中には、
「ギャンブル」
に使ったり、
「飲みに使ったり」
という人もいただろうが、その時のバブル崩壊から、
「明日はどうなるか分からない」
ということもあり、
「何か趣味に高じれればいい」
と考える人も多く、実際に、
「英会話」
などのカルチャースクールがたくさんできたり、
「スポーツジム」
のような、身体を鍛えるところが増えてきたりした。
その中で、
「なかなか趣味としてやるという人はそこまではいなかった」
というようだが、実際には、
「金がかからない趣味」
ということで、
「小説を書く」
というのも、静かなブームだったようだ。
ここからが、もう一つの理由なのだが、
「小説家になりたい」
ということで、当時までは、そのやり方ということで、
「有名出版社の賞に応募して、入選する」
ということであった。
これが一番手っ取り早いというもので、一番の正統派のやり方だといってもいいだろう。
「王道」
ということになる。
いわゆる、
「登竜門」
と言われる、新人賞というのはなかなかハードルが高く、
「何かの趣味を持とう」
という程度で手を出して簡単に受賞できるということはない。
しかも、賞に応募して、当然のごとく落選することになるのだろうが、応募者としては、
「自分の実力がどの程度なのか?」
ということを知りたいと思っても、応募条項の中に、
「審査に対しての一切の質問には答えられない」
と、出版社側も、伏線を敷いてきているのだ。