小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

闇が作り出した幻影

INDEX|4ページ/17ページ|

次のページ前のページ
 

 そもそも、この土地の市長は、
「元アナウンサー」
 ということで、知名度だけはあり、何期も市長を続けてきたが、それは別に、
「有能だ」
 ということからではなく、他の対抗候補に、
「ろくな連中がいない」
 というだけで続けているという。
 しかも。市長が、中央の政治家であり、
「自分のブレーンである」
 という師匠のような人に、
「自分も中央に進出したい」
 といっても、
「まだまだだ」
 と言って撥ねつけられているという話を聞くと、
「ああ、しょせん。それだけの政治家なんだ」
 ということで、無能と言われるのも、無理もないということであった。
 いろいろな人から流れてくるうわさもあった。
「アナウンサー時代には、夜のタクシーに、女を横に侍らせて乗ってくるのだが、その時の態度を、彼の支持者や有権者に見せてやりたい」
 というくらいに、怒り心頭だったという。
 それだけ、横柄な態度だったということだが、
「市長になってからの方が、もっとひどい」
 と言われるようになったという。
 それだけ、市長という立場に胡坐をかいているかということであるが、何よりひどいのは、
「こんな市長の対抗馬がいない」
 ということを、ひどいことだと思わない市民なのではないだろうか?
 そもそも、旧国鉄もひどいのだが、元々、このあたりでの、
「大地主」
 といってもいいのが、このあたりで唯一の私鉄経営をしている会社だった。
 ここは、昔から、
「他の地元大手も逆らうことができないほどの、独裁企業」
 ということで有名で、
「他の大都市には、そんなところはないだろう」
 と言われるほどだったのだ。
 だから、実際には、
「やりたい放題」
 ということであり、何か問題が起こりそうなら、市長や県知事を動かして、事態を収拾するということをしていたところだ。
 そんな企業だから、
「高架化計画」
 というものができてから、実際に運営されるまでにかかった期間が、なんと30年だったというのだ。
 それも、
「全区間高架」
 ということであれば、無理もないと思えるが、その区間というのが、なんと4駅区間だけということで、
「いくら何でもお粗末だ」
 と言えるだろう。
 元々の目的は、朝のラッシュ時の、
「開かずの踏切」
 というのを何とかしないといけないということであったが、実際に、30年も経ってしまうと、
「新しい道ができたりして、交通渋滞はかなり緩和されてきた」
 というのは、
「あの大名商売を行っている会社がいつまで経っても、高架にしない」
 ということから、自治体などがしびれを切らし、
「自分たちでできるところから何とかしよう」
 と動いたからだった。
 もちろん、動かなければいけない背景があったからで、それはもちろん、
「利用している市民の声」
 というものが、鉄道会社や自治体に寄せられる。
 鉄道会社は、そもそもが、
「大名商売なのだから、少々のことでは、折れるわけもない」
 となると、その煽りを食うのは、自治体ということで、
「公務である以上、市民の声を無視はできない」
 ということだ。
 鉄道会社の
「大名商売」
 ということで、実際に高架ができあがると。
「何を今さら」
 ということになるのだ。
「自治体がすでに体制を整えてくれて、交通渋滞を緩和してくれた状態で、今さら高架にしたって、なんの効果もないし、ありがたみなどあったものではない」
 ということになる。
 さらに、ひどいのは、
「高架にするための最初の、政策ということで、行った、区画整理で立ち退いていった人は、いったいどうなるというのだ?」
 ということである。
 せっかく、駅前開発に乗り出して、たくさんの店が軒を連ねていたのに、
「区画整理」
 の名目で立ち退きを迫られ、仕方なしに、店を閉めた人は多いだろう。
 しかも、実際に、
「いつ戻ってこれるか分からない」
 ということで、とっくに、
「鞍替えしている人も多いことだろう」
 そうなると、
「駅前は高架になっても、閑散としている」
 なんといっても、その30年の間に、実際の街の分布図は、ハッキリと代わってしまったのだ。
 そういう意味で、高架となった駅前は、
「完全に、浦島太郎状態だ」
 と言えるだろう。
 それこそ、30年、いや、40年近くも経っているのだ。昔を知っている人は、すでに、初老と言われる年齢に達していることだろう。
 つまりは、
「前この駅前から通勤していたという人は、すでに定年退職している」
 といってもいいのだ。
 だから、
「仕事に利用しているすべても期間、ずっと工事中だった」
 ということである。
「どれだけ待たせれば気が済むというのか?」
 ということであった。
「旧国鉄側は、そこまでひどくはないが、それでも、新幹線が開通して、便利になった」
 というのは、幻影であり、
「なるほど、各地への出張という場合はいいであろうが、在来線では特急が廃止になったり、普通電車の本数が減ってしまったりと、地域住民にとっては、ひどい状態であった」
 しかも、
「新幹線の線路に位置している県民は、その建設費の一部を負担させられるとして、住民税をたくさん払わねばならない」
 ということになる。
 それを考えると、
「新幹線などいらない」
 といってもいいだろう。
 実際に、新幹線が開通したことで、それまで、在来線の特急も止まるという駅近くは、
「町おこし」
 が行われ、成功を収めていたのに、新幹線の開通で、特急が廃止になり、しかも
「赤字路線」
 ということで、地元に払い下げられ。地元の運営という、いわゆる、
「第三セクター」
 という形での、それまでとはまったく違った形になったことで、
「街はまたさびれてしまった」
 というところがたくさん出てきたのだ。
 それこそ、
「整備新幹線計画」
 というのは昔からあり、時代の変化に対して。あまり考えずに、
「計画通りにこなす」
 という、あたかも、
「親方日の丸」
 と呼ばれる時代をそのまま継承しているのであるから質が悪いというものだ。
 だから、今の時代において、鉄道会社に対して、
「誰も期待などしていない」
 ということで、
「せめて街が荒廃していくというのは、勘弁してほしい」
 と思っている人も結構いるに違いない。
 鉄道というと、昔から、
「インフラの中心」
 ということであったが、今もそうなのだろうか?
 そのあたりがしっかりと分かっていないので、鉄道会社の歴史というものを、本来であれば、知っておくべきであろう。
 考えてみれば、明治の初期に、
「新橋と横浜を結んだ鉄道」
 というのは私鉄だった。
 そもそも、最初から鉄道を国の運営にするという計画があったのかどうかは分からないが、少なく十、
「海のものとも山のものとも分からない」
 というのが、鉄道というものだったということである。
 だから、鉄道網が徐々に充実していった時、
「軍事物資の輸送」
 などということで必要となったのだろう。
「鉄道を国営化する」
 ということになった。
 まだまだ、インフラとしての整備はこれからということであっただろうが、一応、
「国鉄」
作品名:闇が作り出した幻影 作家名:森本晃次