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時間差の悲劇

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「老けている」
 ということへの言い訳のようなものだった。
 ただ、彼女の生い立ちを聞いてみると、
「なるほど」
 と分かったのだ。
 つまりは
「父親がいない」
 ということから、父親のような人を慕いたい。
 つまりは、
「おじさま好き」
 ということになるのだった。
 そして、彼女が付き合う時、
「付き合っていけるか自信がない」
 と言ったのは、
「香織が、自分の好みがおじさんだ」
 ということが、二宮に告白されたことで分かった。
 そして、香織はその時、
「彼の容姿で、彼を好きになった」
 と思ったのだと感じたのだろう。
 そう思うと、よく考えてみれば、
「二宮さんのことを、まだ何尾知らない」
 ということで、初めて我に返ってしまい、
「うまく付き合っていけるかどうかわからない」
 と感じたからだろう。
 しかし、二宮は、献身的に、そして、必死になって、香織を愛したいといってくれた。
 それは、その時に感じていた不安を払しょくしてくれたことで、香織は、
「気持ちがすっきりした状態で、これ以上、彼に余計な気持ちを負わせるのは忍びない」
 ということから、
「何もなかったかのように接した」
 ということだったのだろう。
 それが正解なのか、不正解なのか、二宮には分らなかった。
 しかし、それから数か月の、
「付き合い始め」
 としては、
「これ以上ない」
 というくらいに、
「素晴らしいスタートを切った」
 ということになるだろう。
 それが、香織としても、二宮としても、
「もう何も心配することはない」
 ということで、
「恋愛機関の安定期に入った」
 と感じていたのだった。
 二人は、毎日とまでいかないが、
「会える時には、なるべく会う」
 ということにしていた。
 もちろん、付き合い始めて最初の三か月が経った頃に、初めて身体を重ねることになった。
 二人とも、初めてではなかったが、少なくとも、二宮にとっては、
「最初といってもいいくらいに感動した」
 と思ったのだ。
 お互いに、相手の体を貪りあっている時に、思わず彼女が言った言葉、
「お父さん」
 という言葉が印象的だった。
 もちろん、そのことを、彼女も無意識だったようで、照れる様子もなく、顔色は変わっていなかった。
 だから、二宮も、
「そのことに触れる」
 ということはなかった。
 しかし、
「お父さん」
 という一言は、そもそも、彼女が、
「お父さんのように慕える相手だった最高」
 と言っていたこともあって、
「俺を認めてくれたんだ」
 ということで、それが、
「初めて身体を重ねた時だった」
 ということで、余計に
「香織を大切にしないといけないんだ」
 と感じたのだ。
 それが、二宮が香織に感じたことであり、それからずっと、そのことを思い、願っていたことだったといってもいいだろう。
 さすがにその頃になると、
「それぞれの会社でも、ウワサが流れるようになった」
 二宮の会社では、さすがに相手が誰かは分からなかったが、
「誰か、得意先に彼女がいるんだ」
 ということくらいは、察しがついていた。
 そして、大体のことも察しがついていたのは、彼女の会社に営業に行くときだけ、明らかにその表情が違ったからだった。
 彼女の会社の方は、二宮を見ても、香織を見ても、
「非の打ち所がない」
 というほどの、
「完璧なカップル」
 に見えることから、
「これは、お互いにいい関係だ」
 ということを示しているのだった。
 だからといって、会社内で騒ぐことはない。今は、
「様子を見ることで、温めていこう」
 と考えているように見受けられた。
 それが、完全なベストカップルに見えたことだろう。

                 社会的主義

 そんな香織との付き合いが、1年くらいになろうとしていた頃のことだった。付き合っていると、
「結婚したい」
 と思うようになり、そう感じていると、
「結婚がゴールだ」
 と思うようになっていた。
 最初から、
「結婚などというのは考えていなかった」
 そもそも、
「恋愛と結婚は別物だ」
 と思っていて、逆に、
「恋愛対象の人は、結婚相手ではない」
 と思っていて、香織は、
「あくまでも恋愛相手だ」
 と思っていたのだ。
 しかし、途中から、
「この人となら結婚したい」
 と思うようになり、
「結婚するなら、この人しかいない」
 と感じるようになった。
「どうして、そう思うようになったのか?」
 と考えると、
「お父さんを早くに亡くした」
 というところからではなかっただろうか。
 最初こそ、
「かわいそうだ」
 という感覚からの同情だったといえるかも知れない。
 しかし、それが次第に、
「自分を父親のように慕ってくれている香織が、いとおしくなってきた」
 というのも、
「恋愛感情というのは、お互いに引き合っている気持ちに勢いがあるものではないだろうか?」
 と感じていて、逆に結婚になると、
「自分を慕ってくれる相手をいとおしく思えば、それが結婚だ」
 と思うようになった。
 だから、順序が違って。
「相手をいとおしく思うことで、相手が、慕ってくれるようになった場合が、恋愛相手」
 ということになるのだろう。
 だから、この立場が入れ替わった時、相手を結婚相手として認識することになるのだろう。
 ただ、最初から、相手が慕ってくれている場合がある。つまりは、
「好きになられたから、こちらが好きになる」
 ということである。
 これは恋愛であれば、
「そんな考えであれば、長続きしない」
 と言われたことがあったが、それは、
「彼女として長続きしない」
 というだけで、
「相手が奥さんだと考えると、好きになってくれたことで、相手を好きになろうとする気持ちが謙虚で素直な気持ちになり、うまくいくためのきっかけになるのではないだろうか?」
「成田離婚」
 などと言って、
「スピード離婚」
 してしまうというような場合は、
「恋愛から、勢いだけで結婚しよう」
 と考えてしまうことで、相手を恋愛対象というだけで見ていて、結婚相手としてみたのが、結婚してからだということになれば、
「成田離婚」
 ということも、無理もないことのように感じるであろう。
 しかし、香織も二宮も、その順序を間違っていなかった。
 最初こそ、香織が、
「自信がない」
 と言って、ごねた時期があったが、それは、
「これからの自分たちの長い道のりから考えると、些細なことでしかなかった」
 それこそ、
「雨降って地固まる」
 ということだったのだ。
 その証拠にそれ以降、二人の間にいさかいなどなかった。恋愛期間を1年くらい取り、その途中でお互いに、
「そろそろ結婚を考えてもいいかな?」
 と思った時期も同じだったようで、
「結婚を意識した恋愛がしたい」
 という二宮の言葉に、香織も二つ返事でOKしたのだ。
 香織としても、
「願ったりかなったり」
 二宮は香織の表情を見て、
「これからの二人の運命がはっきりと見えた」
 ということを信じて疑わなかった。
 実際に、自分たちの両親に対して、
「結婚の許可」
作品名:時間差の悲劇 作家名:森本晃次