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交わる平行線

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 警察はもちろん、それくらいの気概で捜査に当たらなければいけないのだろうが、市民としても、実際に、このような事件を半年以上も引きずっていて、その成果が出ていないということになれば、
「警察だけではなく、自治体の責任問題になりかねない」
 ということで、躍起になっていた。
 実際に、
「警察に対して圧力くらいは、当然のごとくかけていることだろう」
 それだけ、官僚や警察組織というのは、
「普段は、市民のために何をしているのかわからない」
 というくせに、
「自分たちの保身」
 というものに関しては、
「これほどシビアなものはない」
 といってもいいだろう。
 それが、今現状としての建前だといってもいいだろう。
 今回の事件において、一つ鑑識から、
「気になる報告」
 というものがもたらされた。
 というのは、
「今回の鑑識捜査として捜査をした中において、一つ気になることがありました」
 と言って鑑識官が、捜査本部に、
「鑑識からの報告書」
 をもってきた時、もたらされた情報だった。
「遺留品などに、おかしなものはなかったのですが、気になることがあったというのは、現場にあった血痕ですが、そこにはもう一つ別の血液型の血液が付着していたんです」
 というのだった。
「ん? 犯人もけがをしているということか?」
 と刑事が聞くと、
「いいえ、暴行事件の前の日に雨が降ったのですが、もう一つの血液は、明らかに、雨の水分を含んでいました。ということは、2,3日以上経った血液が付着していたということになりますね。しかも、その血液は、雨でも残っていたということで、かなり大量だったということを示していますね」
 というのが、鑑識からの報告であった。

                 似て非なるもの

「その血液が誰の血液なのか?」
 ということも問題であるが、本来であれば、
「オオカミ少年」
 こと、鳴海青年の証言が、ここでは大きな物議をかもすことになるのだろうが、実際には、鳴海青年の供述は、通報ということであるにも関わらず、警察は取り上げてはくれなかった。
 なんといっても、飛び降り自殺なのか、誰かに突き飛ばされたのか分からないが、実際であれば、
「大事件だ」
 ということになるにも関わらず、その痕が、まったく見られなかった。
 死体がそこに転がっていれば分かるわけで、実際に、高いマンションの屋上から飛び降りたわけで、実際の階数というのは、下から順序だてて数えてみないと、ハッキリと分かるものではない。
 実際に、8階建てなので、そこから本当に落ちたのだとすれば、これほどの衝撃はないわけで、当然、即死であってしかるべきということであろう。
 実際に、飛び降りたのであれば、相当な音がしているはずだし、血液の散布もあることだろう。
 それなのに、見た目には何もなかったのだ。
 当然、警察とすれば、
「デマを通報しやがって」
 ということで、忙しい中を呼び出されたということで、警官の方も、佐久間刑事としても、
「たまったものではない」
 ということで、自分たちの中で、
「鳴海という男は、オオカミ少年だ」
 というレッテルが貼られてしまい、
「今度通報があっても、信じない」
 と思っていたのかもしれない。
 警察は、
「デマだと思ったとしても、出動だけはしないといけない」
 というのは、職務だから仕方がないだろう。
 しかし、警察官だって人間。そんな職務を持った自分たちをからかうという行為をするやつは。
「もはや。守らなければいけない市民」
 というわけではないと思うことだろう。
 そもそも、そんな連中がいたずらをしたことで、本来、助けなければいけない事故や事件が起こった時、そっちに手を取られて、助けることができなかったとなると、
「これほど、やりきれないことはない」
 と言ってもいいだろう。
 これが、いたずらではなく、
「本来の事件が、偶然にも重なったのだ」
 ということで、
「片方で死人が出てしまった」
 のであれば、
「不本意であるが、仕方がない」
 といえるだろう。
 それでも、
「何とか助けることができなかったのか?」
 ということで、反省は怠らない。
 そして。
「次に同じようなことがあった場合に、どう対処すればいいか?」
 ということを考えるに違いない。
 それを考えると、
「とにかく何かが起こった時には全力で挑む」
 と考えるだろう。
 特に、
「警察というものは、何かが起こらないと動かない」
 ということで、世間からは見られていて、
「実際にもその通りだ」
 ということなのだから、当然、
「許されることではない」
 といえるだろう。
「それだけ警察というところは、理不尽なんだ」
 ということも分かっている。
 分かっていて、警察に入ったのだから、それは覚悟の上であり、それでも、
「市民の役に立ちたい」
 ということから、
「今の自分がここにいる」
 と考えると、
「いずれは、正しいことをキチンとできる警察にしたい」
 という野望もあることだろう。
 しかし、実際には、
「ノンキャリア」
 である佐久間にとって、
「できる昇進の最高位」
 というものを考えると、
「まず、その野望を果たすことはできないだろうな」
 と思えてきた。
 妥協ということになるだろうが、
「だったら、せめて、目の前の人たちを守るくらいはしたい」
 と思っている。
 そのためには、
「上に逆らうアウトローになってもいい」
 と思っている。
 刑事ドラマの主人公のようになりたい」
 と思い、間違っても、
「権力に従うだけの、イエスマンにはなりたくない」
 と思っていた。
 だから今の佐久間刑事を支えている考えというのは、
「勧善懲悪」
 という考え方からきているものだといっても過言ではないだろう。
 ただ、どうしても若いこともあってか、
「自分たちを裏切る行為に関しては、どうしても許せない」
 というのは、
「オオカミ少年」
 という行為は、間違いなく。
「警察の捜査を妨害するものであり、我々を愚弄し、舐め切っているのではないか?」
 と思うことで、
「そんな連中のいうことを、そう何度も聞いていられない」
 と考えていた。
 実際に、その時にいた制服警官の話によると、
「あの鳴海という青年は、そこまでしょっちゅうというわけではないですが、狂言壁のようなものがあって、我々警官は、注意はしているんですけどね」
 と言って、
「やれやれ」
 という顔をしていた。
 そう、
「警官」
 という立場では、注意喚起くらいしかできないのだ。
 いたずらで通報したからと言って、それで逮捕するというわけにもいかず、確かに悪質ではあるが、それを取り締まるだけの法律も見当たらないことから、何もできないというのが、本音というところであろうか。
 実際に、
「オオカミ少年」
 であっても、それが、何かの犯罪を形成するわけでもなく、逆に、
「?であってほしい」
 という思いが通じたということで、
「よかった」
 と、ホッと安堵する人もいると考えれば、むやみに怒りをぶつけることもできない。
 もし、怒りをぶつけても、当事者からすれば、
作品名:交わる平行線 作家名:森本晃次