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交わる平行線

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「何か、魔物を思わせるものがある」
 ということになる。
 しかも、昔から、
「この時間には、魔物と出会う時間帯」
 ということで、
「逢魔が時」
 と言われているという。
 実際に、今の時代でも、
「この逢魔が時と呼ばれる時間帯に、交通事故が多発している」
 というデータがあるという。
 つまりは、
「科学の発展したこの時代に伝説として言われている、都市伝説のようなものである」
 といってもいいだろう。
 ただ、これは理屈としては証明されていることであり、
「夕方の日が暮れる寸前は、光の力が一番弱い」
 ということで、
「光の屈折がない」
 といってもいいだろう。
 そのために、
「光を構成する屈折の弱さから、光を表現できなくなり、この時間帯だけは、モノクロに見えてしまう」
 ということになる。
 実際に、
「夕焼け」
 であったり、
「それまでの明るさが目に焼き付いてしまったことで、モノクロになっていることに気づかない」
 ということにより、
「まるで、魔物に操られているかのようだ」
 と思わせることで、
「逢魔が時」
 という伝説が、今でも言われているということになるだろう。
 それが、この時代において、
「都市伝説」
 として息づいていることから、鳴海青年が、
「オオカミ少年」
 などと、寓話の話になぞらえたあだ名を冠するということになってしまったのだろう。
 そんな彼が見たのは、
「マンションから、一人の男性が飛び降りた」
 という光景であった。
 驚いた彼は、急いで警察に通報した。
 警察は、県警から、K警察署に連絡があり、急いで、交番から制服警官が向かい、警察署からは、佐久間刑事が向かうことになった。
 佐久間刑事は、その時ちょうどいた
「清水刑事」
 を伴って、現場に向かったのだ。
 佐久間刑事としては、
「通報が一件だ」
 ということに少し疑問を感じていた。
「時間帯からすれば、数件あってもよさそうなのに」
 と思った。
「飛び降りたとすれば、当然、鈍い音というのがするはずなので、誰かがいれば、すぐにわかるだろう」
 ということと、
「帰宅する人や、新聞配達の人などもいて、誰も気づかないというのはおかしい」
 という考えであった。
 そもそも、最近では、
「世界的なパンデミック」
 の影響から、
「夕飯すら、宅配」
 ということで、
「配達員がこの時間はウロウロしているものだ」
 と感じていたので。誰も気づかないというのはおかしいということであった。
 とはいえ、
「一件とはいえ、通報があった」
 ということで、
「事件あり」
 ということを前提に、現地に向かった。
 実際に現地に来てみると、制服警官が、一人の青年から話を聞いているようだった。
 まわりを見ると、別に怪しい光景はない。
 実際に、人が行き来しているのも見ることができるし、それでも、
「通報が他に入ってていない」
 ということと、
「誰も騒いでいない」
 ということから、
「狂言か?」
 と思わないでもなかった。
 警官が、青年に話を聞いていると、青年は、恐縮そうに頭をうなだれていて、警官の口調は厳しそうだった。
「どうやら、狂言の可能性が強いようだな」
 と思ったので、まずは警官に事情を聴いてもらいながら、少し離れたところから、その様子を眺めていた。
 やはり、
「青年が、見間違えた」
 ということで、恐縮しているようだった。
 だが、そもそも、
「警察への通報」
 というのは、本当でなければ、通報者にメリットはない。
「もし間違いだとすれば、相手から、怒られることは当たり前のことである」
 なんといっても、
「警察を語法で動かした」
 というのは、へたをすれば、罰金ものと言われても仕方のないことであろう。
 もっとも、警察は、罰金などを取ったりということはしないはずだ。
 これは冷静に考えれば当たり前のことであり、
「こんなところで罰金を取ってしまうと、本当に緊急を要する通報であっても、市民は、もし間違いだったら罰金を取られる」
 ということで、通報をしなくなるだろう。
 もっといえば、
「俺が通報しなくても、他の人がしてくれる」
 と考え、他の人も皆同じ考えだということになれば、
「誰も通報しなくなる」
 というものだ。
 そうなると、
「警察にとって、最初から後手に回る」
 ということであり、へたをして、
「命に関わることであれば、その瞬間が遅れたとして、命が断たれる」
 ということになると、
「果たして誰が責任を取る」
 ということになるのか?
 つまり、
「その批判は、警察に集中する」
 ということで、
「警察が、罰金なんかとるから、助かる命も助からなかった」
 と言われても仕方がない。
 そうなると、
「警察は誰からも信用されなくなり、その威厳は、完全に失墜してしまう」
 ということになるのであろう。
 それを考えると、
「浅はかな考えが、ひいては、警察の存在意義すらゆがめかねない」
 ということになるのであった。
 とにかく、
「今回は何もなくて、とりあえずはよかった」
 ということにしておくしかないということになるだろう。
 実際に、その通りということで、その時の警官も、佐久間刑事も、
「とにかく事なきを得た」
 ということで、
「問題はない」
 ということで、それでよかったと考えるようにした。
 佐久間刑事は、
「何もなかった」
 ということで、警察署に戻り、
「通報への出動」
 ということでの行動日誌に、
「通報により出動したが、誤報ということで事なきを得、そのまま通報者に注意喚起を行ったうえでの、帰署」
 ということを書いて、この日の出動に関しては、当たり前のように、次第に忘れていくのであった。
 それこそ、
「人のうわさも七十五日」
 ということで、本来であれば、
「鳴海青年」
 のことを、簡単に忘れてもよかったであろう。
 しかし、実際に、その翌週、その場所で、
「一人の女性がナイフで刺される」
 という事件があった。
 死ぬということはなかったのだが、一応、現場検証が行われ、鑑識による捜査も入ったのだった。
 実際に、そのあたりが調べられた。
 基本的には、
「遺留品であったり、犯人につながる何かがほしい」
 ということからの現場検証だったのだ。
 そもそも、
「K警察管内」
 においては、以前から、
「婦女暴行事件が多発している」
 ということで、
「重点警戒地区」
 となっているのであったので、
「殺人事件にならなくてよかった」
 というのも、
「警察の警戒のおかげ」
 とも言われたが、逆に、
「そこまで警戒しておいて、犯人を捕まえられないというのは、お粗末だ」
 とも言われている。
 今回は確かに、死ななくてよかったといえるだろうが、犯人を取り逃がしたということは、
「次に、また犯罪が起こる」
 という可能性は高いということで、
「今度は、本当の殺人事件」
 ということになるかもしれないと考えるのであった。
作品名:交わる平行線 作家名:森本晃次