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交わる平行線

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「仕事だからしょうがない」
 ということで、何とか乗り切ってきたことはあったが、今回だって。最初、関わりかけて、結局、
「オオカミ少年だった」
 ということで、自分の中で、腹は立ったが、
「関わることがなかったということで、事なきを得た」
 ということになるのだろう。
 だから、
「オオカミ少年でよかった」
 と思っているのに、あの時の証言を聞いてしまった以上、捜査をしないわけにはいかないのだ。
「できれば、鳴海とは関係のない捜査陣にしてほしいな」
 と感じていたが、
「そんなことを考えていれば、どこに神様がいるのかわからないが、見透かされたかのように、その男の担当に導かれる」
 ということになるのだった。
 そこで、
「いやではあったが、行くしかない」
 ということで、
「しょうがない。捜査に出るか」
 ということになった。
 コンビはいつもの、清水刑事。いつもであれば、年長の自分が、先頭を切っていくのであるが、今回は、
「そろそろ、君が中心であってもいいだろう」
 ということで、巧みに誘導し、清水刑事に任せることにした。
 佐久間刑事は、一応、
「まじめ」
 ということで通っているので、若年の清水刑事が、佐久間刑事の心情を疑うということはなかったのだ。
 佐久間刑事というと、それまで、
「若手でエース」
 と呼ばれていた、
「秋元刑事」
 という人が、隣接した。
「F警察署」
 に引き抜かれたということで、結果っとしては、
「繰り上がり当選」
 ということで、佐久間刑事が、実質上、
「若手エース」
 と呼ばれるようになったのだ。
 ただ、佐久間刑事としては、
「まだまだ自分は、秋元刑事の足元にも及ばない」
 と思っていて、まわりの上司も、少なからず、
「まだ少し頼りないかな?」
 とも思っていた。
 しかし、実際に実力から言っても、その力としても、
「秋元刑事の後釜は、佐久間刑事しかいない」
 というのは、誰もが認める事実だといってもいいだろう。
 そういう意味で上司としても、
「無理せずに育てよう」
 と考えていた。
 しかし、だからといって甘やかすこともしない。
 上司から見ていて、佐久間刑事の欠点として、
「佐久間刑事ほど、甘やかすと調子に乗る刑事もいない」
 と言われていたのだ。
 ただ、これは、
「長所の裏返し」
 ともいえるところで、
「佐久間刑事というのは、おだてに乗りやすく。おだてに乗ると、画期的なアイデアが生まれることが多く、その時の閃きのすごさは、転任していった秋元刑事と甲乙つけがたいところがある」
 といってもいいだろう。
 佐久間刑事は、もちろん、
「秋元刑事のいいところ」
 というのは把握していた。
 そして。
「自分も、あれだけの能力を持つことができればいいのにな」
 と感じているのは間違いないことで、たまに、自分の発想が、いきなり、突拍子のないことを考え付き、そんな時に限って、
「閃きを感じた」
 と感じるものであった。
 ただ、一つ残念なのは、
「F警察署とK警察署では、上司のランクがかなり違う」
 ということであった。
 さすがに、まだまだ若手である佐久間刑事にも、清水刑事にもそのことは分かっておらず、秋元刑事が転任したのも、
「引き抜きによる栄転」
 とは思っていなかったのだ。
 そのきっかけになったのが、
「反社会的犯罪」
 と呼ばれた事件でのことで、
「広域に行われた犯罪」
 ということで、
「K警察署」
 と、
「F警察署」
 による。合同捜査ということになった。
 捜査本部は、
「F警察に設けられ、そこで、K警察から派遣された秋元刑事の活躍で事件が解決したことから、秋元刑事の転任が決まった」
 ということである。
 この際の、F警察署の動きは速かった。
 あっという間に、桜井警部補が署長に進言し、署長も、
「桜井警部補のいうことだから」
 ということで、疑うことなく、K警察署に打診をしてきたのであった。
 秋元刑事も、F警察署の人たちに一目置いていた。
「K警察とはまったく違った組織だ」
 ということで、大いなる興味も持っていて、何よりも、
「勘で捜査する」
 と言われる、秋元刑事の性格をうまく利用して、
「やりやすいように敷いたレール」
 の上で、秋元刑事は、存分に力を発揮したということだったのだ。
 門倉警部、桜井警部補はもちろんのこと、
「F警察のエース」
 と呼ばれる、
「樋口刑事」
 を目の前で見ることができ、実際に、推理を組み立てるうえで、その推理に導いてくれたのが、
「樋口刑事だった」
 と思っている。
 樋口刑事は、
「うまく相手を引き出して、自分の手札とすることができる」
 ということに長けている人で、
「秋元刑事のように、勘で捜査する人物をうまく扱えるのは、たぶん、そうはいないだろう」
 ということを、F警察でも感じていた。
 そこで、それを引き出したのが、樋口刑事だということを最初から分かっていた、
「門倉警部」
 と、
「桜井警部補」
 であったが、二人は、示し合わせたように、
「俺たちの感じていることが正解だったら、是が非でもうちの署に、秋元刑事を招集したいな」
 ということで、署長への根回しも早かったわけだ。
 署長も、
「この二人の進言であれば、間違いない」
 と思っていた。
 へたに考えたりすると、機会を逃すということも分かっていたので、署長の行動の速さは定評があった。
 そもそも、
「桜井警部補と門倉警部が、署長を育てた」
 といってもいい。
 署長が、門倉警部の位置にいる時、つまりは、
「捜査本部長」
 として君臨していた時は、
「門倉警部も、桜井警部補も、どちらも、捜査本部長の背中を目指している」
 といってもよかっただろう。
 しかし、今度は。
「署長という立場になると、今までのようにはできなくなる」
 他の署長との横のつながりであったり、
「県警本部」
 とのつながりなどで、
「表に出る」
 ということが多くなると、それまでの実績では、どうにもならないということもあったりするだろう。
 そこで、
「署長としては、一年生だ」
 ということになり、助けがなければ、うまくいかないということになるだろう。
 それで、うまくできずに、
「署長という立場で、各地を転々とする」
 ということで、
「さらなる出世が望めない」
 という人もいることであろう。
 もちろん、そんなことがすぐにわかるということもなく、悩んでしまう署長というのも少なくはない。
 そういう意味で、
「署長までしっかりしている警察署」
 ということで、秋元刑事としても、この転任を、
「栄転」
 と捉え、二つ返事で転任ということになったのだ。
 もちろん、
「F警察署」
 では、大歓迎であった。
 刑事課としても、秋元刑事の活躍は目の当たりにしたのであり、
「そのために、桜井警部補と門倉警部が動いた」
 ということは、周知の上ということであったのだろう。
 今回は、そんな
「秋元刑事はもういない。自分でやらなければ」
 という自負もあれば、プレッシャーというものもあった。
 そういう意味では、今回の佐久間刑事は、
作品名:交わる平行線 作家名:森本晃次