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反社会的犯罪

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「今の時点では、自殺ではないということを立証するだけの証拠がまったくの皆無ということで、遠吠え」
 ということにしかなっていないのだ。
 もちろん、自殺だという根拠もないわけなので、どちらの捜査も行われるわけだが、どうしても、若いからの血気にはやるということなのか、秋元刑事は納得がいっていないようだった。
 そんな中で、樋口刑事が、一つの突破口になるかも知れないことを仕入れてきた、
 それを、捜査会議において、
「鑑識の見解」
 ということでの話になったのだが、
「自殺か自殺ではないかということへの言及まではいきませんが、現場検証をしていて、少し気になるところがありました」
 というのだ。
 鑑識は、その話を、あくまでも、自殺か他殺に言及しないように徹した、
 あくまでも、鑑識というのは、事実を究明するだけで、そこから捜査への推理は、刑事たちの捜査ということになるからだ、
「警察というのは、分業制で、相手の縄張りに入りこんではいけない」
 という縄張り意識はしっかりしているのかも知れない。
 しかし、いくら、
「縄張り意識が捜査の足かせになる」
 といっても、組織で動いているものの、
「組織捜査」
 というものを頭から否定してしまうと、
「ろくなことにはならない」
 というのも分かっているので、そのあたりの線引きは、難しいところである。
 鑑識が言い出したことととして、
「自殺をした人が、まず、仰向けになって死んでいるというのが、少し気になったんですよね」
 ということであった。
 それに関しては、皆、少しは感じていることであったが、そこに言及しなかったのは、やはり、
「自殺に間違いない」
 という考えが大きく、それを口にすることをためらったからであった。
「確かにそれは言えるだろうが、だが、自殺をする人が仰向けで死んだということがなかったんだろうか?」
 という、
 確かにそれはないとはいえないでしょうが、あくまでも可能性ということで考えるとですね、あの形で落ちたということは、少なくとも、ビルの屋上から足が離れた時は、落ちる方向から反対を向いていたということになりますよね。自殺をする人が、後ろ向きに飛び込むという精神状態にはならないと思うんですよ、それを思えば、まわりを数人に囲まれて、あの場所に追い詰められたことで、足を踏みはずしたと考える方が、可能性としては。圧倒的に高いですよね」
 というのであった。 
 これも、刑事であれば考えることであったが、それでも、自殺と考えてしまったのは、
「まわりが、自殺だということで捜査が行われている」
 ということの情報操作からではないか?
 と考えられるのであった。
 捜査には、確かに、情報操作というものが、見えない力になることがある、
 そうさせるのが、状況証拠というもので、今回も、
「彼が犯人で、逃れられないと思った」
 あるいは、
「罪の呵責にさいなまれた」
 ということから、
「状況証拠」
 としては、
「自殺以外いは考えられない」
 ということであった。
 ただ、
「自殺に疑問を持っている」
 という意見である。樋口刑事も、秋元刑事も、
「久保が暴行犯である」
 ということに変わりはなかった。
 それは、もちろん、他の捜査員と同じ考えであろう。
 しかし、
「自分たち二人だけが、自殺に疑問を持っている」
 ということで、樋口刑事の考えとしては、
「俺たち二人は、皆と同じように、暴行犯が久保であるということに変わりはないのだが、自殺に関しては完全に意見が分かれる」
 と思っている。
 ということは、
「久保の暴行ということには変わりはないのだが、そこに、何か他の人と別の考えがあるのではないか?」
 ということであった。
 樋口刑事は、少し考えがまとまってきたのだが、それは、
「事件がこれでは終わりではない」
 ということだ。
 それは、ここまでの事件経過という意味だけでなく、
「連続暴行事件が、被疑者死亡で終わってしまう」
 というのが、納得いかないと思っているのだ。
 きっと、そこまでハッキリとした確証を得ているわけではないのだろうが、秋元刑事も、自殺に対して、猛反対するというのは、その恐れを、
「彼なりに感じている」
 と思っているからだろう。
 これは。
「もし、これが自殺ではないということになると、どうなるか?」
 と考えると、
「事故か、事件か?」
 ということになる、
 まさか、事故であれば、いくら犯人で、精神が錯乱しているからといって、あのような不自然な死に方はしないだろう。
 しかも、完全に、仰向けになっているということは、
「後ろ向きに飛び降りた」
 ということになり、
「自殺でないとなると、それこそ、事故の可能性はもっとない」
 ということである。
 そうなると、
「殺人?」
 ということになるわけで、しかも、真後ろということは、
「まわりを囲まれた」
 と考えるのが自然である。
 相手が一人であれば、他の方向に逃げることもできるわけで、
「端に追い込まれた」
 というわけではなく、完全に、ビルの四方の角とは、遠い、一方の線の中心部分から飛び降りていることになるからだった。
 そう考えるなら、
「数人に追い込まれて飛び降りるしかなかった」
 ということで、これが殺人ということであれば、
「追い詰めるだけで十分だった」
 ということになる。
 そうなると、
「犯人は複数」
 ということになる。
 元々、彼を殺す必要があるとすれば、
「犯人を彼に押し付けて、自分は、蚊帳の外にいる」
 という人であろう。
 それが、
「共犯なのかどうか分からない」
 もし、これが、
「単独の婦女暴行事件」
 ということであれば、
「共犯」
 ということもあるかも知れないが、これが、
「連続暴行魔」
 ということであれば、
「共犯」
 というのは考えにくい。
 あくまでも、このような事件は
「異常性癖」
 であったり、
「精神疾患者が犯人だ」
 ということになり、
 犯人側とすれば、
「猟奇犯罪を、同じ連中とは行いたくない」
 という思いから、
「連続班ということであれば、まず、共犯というのは考えられないだろう」
 ということであった。
 そこまでくると、
「待てよ」
 と樋口刑事は考えた。
「まさか、久保が暴行犯ではないという可能性も、まったくないわけでもない」
 とも思えてきた。
 ある程度まで、事件の骨組みを考えていたが、
「もう一度最初から考え直そう」
 と思った。
 しかし、その中でも同じ考えにいたるのは、どうしても、久保が死んだ状況と、連続暴行事件において、
「共犯は考えられない」
 ということからの、矛盾が残るわけで、これを解決しようとするならば、
「本当に、久保が連続暴行魔なのだろうか?」
 という疑問は、
「もし、違ったとしても、推理の最後まで、残ることになるだろう」
 ということであった。
「久保が犯人でないとすれば事件は、振り出しに戻る」
 というわけで、
「事件には、まったく違った側面も存在する」
 ともいえるだろう。
 実際にその考えを持っていたのは、秋元刑事で、彼は彼なりに、推理の中で、樋口刑事よりも先に、
作品名:反社会的犯罪 作家名:森本晃次