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反社会的犯罪

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「久保が飛び降りた場所が、まったく何の関係もないビルだった」
 ということで、
「家からも、犯行現場からも遠い」
 ということと、
「その近くに彼が立ち寄るような場所がない」
 ということを考慮すれば、
「なぜ、ヵれがあんな場所から飛び降りることになったんだい?」
 ということであった。
 しかし、
「犯人の精神が錯乱状態で、暴行自体が、衝動的な犯行だったとすれば、やってしまった後に錯乱してしまい、とにかくどこかに逃げないとと思ったことで闇雲に逃げたはいいが、気が付けば知らないとことに行きついて、急に不安になって、自殺を思い立ったと考えるが、自然ではないですか?」
 というのだった。
 そういって、自信たっぷりの捜査員を見ると、
「なるほど」
 と一言いって、樋口刑事は考え込んだ。
「どこか間違っていますか?」
 と言わんばかりの捜査員に対して、ニコリとほほ笑んだ樋口刑事だったが、それを見た捜査員は、ハッとなった。
「今回のような態度を取る時の樋口刑事は、相手の意見をしっかり聞いて判断することにしているので、最初は反対意見は途中でかぶせるようにしては言わない。今回のように話を一通り聞いたうえで、ニコリと笑えば、一応の意見に賛同はしてくれている」
 ということだと思った。
 しかし、賛同はするが、賛成はしていない。
 つまり、まだ自分の意見を言っていないからであり、聞く方は、実はこの時が肝心なのだった。
「確かに筋は通っているよね。だけど、私は天邪鬼なところがあるから、それだけでは、納得のいかないところがあるんだ。何といっても、彼がそのマンションを選んだということなんだよね。その場所に本当に関係は何もないのかということがハッキリしないと納得できない。さらに、彼が死んでしまった今となっては、何とも言えないところがあるので、単純には決められないと思うんだよ」
 ということだった。
 捜査員は、それでも、
「血気に走る」
 といってもいい人が多く、それはそれで刑事としては、必要なところでもあるだろう。
 しかし、推理するとなると、一応の冷静さも必要で、感情に走らないところが重要ということでもあった。
 そこで、捜査員も、
「本当は口にしてはいけない」
 と思ったが、つい、気になって口にしてしまった。
「樋口刑事はまさか、あのK警察の秋元という男の感情に走った言い分を信じているわけではないでしょうね?」
 と言った。
 それに対して、樋口刑事のこめかみが一瞬、ビクッとなったが、それに気づいた捜査員はいなかっただろう。
 もっとも、それくらいに繊細であれば、やみくもに、そこまで秋元刑事に敵対意識を示すはずがない。
「これは明らかな、秋元刑事に対しての反発心になるんだろうな」
 ということだったのだ。
 それを考えると、
「うちにも、秋元刑事のような人が一人でもいればな」
 と思えた。
 逆にいえば、
「秋元刑事がいるから、K警察署は、面目を保っているということに、他の捜査員は分かっていないんだろうな」
 ということであった。
 さらに、
「秋元刑事のいいところを上司が把握していることが、せめてもの救いなのかも知れないな」
 と思うと、
「ああいう刑事とコンビを組んでみたいと思えてきたな」
 というのであった。
 今の自分のパートナーである清水刑事も、
「血気に走る」
 というところがないわけではない。
 確かに、樋口刑事は、清水刑事を信頼もしている。
 ただ、それは、
「新人の頃から、自分が育ててきた」
 という自負があるからで、もっといえば、
「人材育成に関しては自信がある」
 と思っている。
 しかし、彼は、表向きには、
「後輩を育てるのが苦手で、後継者だなんて」
 という顔をしている。
 桜井警部補に対しても同じような態度を取っているのであり、桜井警部補としては、
「そんな謙遜を」
 と思っているが、樋口刑事とすれば、
「私は、このまま現場に、もう少しいたいんだ」
 と気持ちがあった。
 だから、少しでも、
「後継者お育てている」
 という態度を見せてしまうと、自分の立場が、根本から狂ってしまうと思っている。
 その信念に関しては、相手がたとえ、桜井警部補であっても。崩したくない。
 もちろん、桜井警部補くらいの人間になれば、そんなことは分かっていて、大目に見ている。
 樋口刑事も、
「そんな桜井刑事だからこそ、俺は、従っているんだ」
 ということになるのだろう。
 それを考えると、
「F警察の実質的なリーダーという位置に自分が近づいている」
 とは感じていた。
 今の実質的なリーダーは、言わずと知れた、
「桜井警部補」
 であり、それは、捜査員全員、そして、上層部も、全員が周知のことであろう。
 だからこそ、F警察の検挙率は、県警察の中でもトップクラスで、
「数字には出ないが、犯罪防止率に関しても、トップクラスであろう」
 と考えていた。
 特に、この警察の署長をはじめ、門倉警部も、同じで、
「犯罪検挙率」
 というものを重視する警察署」
 というものを目指そうとしている。
 しかし、犯罪防御率というものが、数字には出てこない以上、、大っぴらにそれを訴えても、士気に影響するわけではない。部下にやる気を起こさせるには、何といっても、
「数字がモノをいうところにしないと、結果に表れない」
 ということで、
「目の前にニンジンをぶら下げないと、人間は動かない」
 ということである。
 何といっても警察は、昔から、
「悪しき伝統」
 なるものがあり、たとえば、
「警察は何かが起こらなければ動かない」
 と言われているように、
「数え上げれば、山ほどある」
 というほとの、
「悪しき伝統」
 というものを、
「いかに解決していけばいいか?」
 ということを、
「永遠のテーマ」
 とでもいうべきこととして、F警察署の上層部は考えていたのである。
 しかし、それを大っぴらに口にできるはずもなく、一応は、
「上層部に従っている」
 ということにしておいて、実際には、水面下で、
「悪しき伝説撤廃」
 というところに行きつけるように、
「どうしても時間が掛かる」
 ということで、当然、
「自分たちの時代にできるはずもない」「
 と考えると、
「これからの時代において、いかにやってくれる人を育てるか?」
 ということが必要になるだろう。
 さすがに、上層部も、最初から、
「そんな大それたことを考えていたわけではない」
 というのも、もっと前の時代は、
「昭和の何でもあり」
 と言われた時代であったり、
「バブル崩壊」
 というものによって、
「世間が狭まったうえに、悪い方に向かっている」
 ということが分かる時代になってきたからである。
 そんな時代に、昔からの、
「縦割りという、階級組織の問題。そして、横割りといってもいい、縄張り組織の問題」
 というものが警察組織の中にあることで、実際には、
「雁字搦めになっている」
 といってもいいだろう。
 そんな警察組織において、
 まず最初にできた体制として、今から15年前くらいに、
「門倉刑事が警部補に昇進した」
 ということから始まった。
作品名:反社会的犯罪 作家名:森本晃次