交換による解決
「俺の捜査と推理というのは、ジレンマになってしまうことになるんだろうな」
と思うのであった、
そんなことを考えていると、
「いつも、捜査責任者に叱られる」
と考えていたが、怒られるくらいは、別にどうでもいいことで、
「自分の操作方法」
というものがブレてしまうということが、
「自分にとって」
いや、
「警察官として、難しい考えに至る」
ということになるのだろう。
しかし、今回は、別の署の、まったく違う事件を、
「関連があるかも知れない」
ということだけで、客観的に、見ることができる。
相手の、秋元刑事も、
「私は。結構勘で捜査をする方ですからね」
といっているが、実際には、まわりが見ている二人と、実際に自分で感じている二人では、それぞれ違っているというのも面白い。
樋口刑事は、印象としてまわりから、秋元刑事のように思われていて、逆に、秋元刑事は樋口刑事のように思われている。
その発想が、それぞれの刑事のいい面をはじき出すということになるのだろうが、それをまずは、
「交換推理」
というものを言い出した樋口刑事の、
「逆転ホームラン」
ということになるかも知れない。
二人の刑事が今まで解決してきた事件は、お互いに知らないが、少なくとも、お互いにリスペクトしているのは間違いない。
そうでもなければ、
「交換推理」
というのを言い出すことも、それをいわれて、
「それは面白い」
ということで簡単に従うということもないだろう。
今度の事件の見えないところは、
「二人の推理でどこまで賄えるというのか?」
それが面白いところであった。
まず最初に疑問として上ったのは、
「奥寺議員が出した手紙の冒頭部分にあった遺書」
という文字であった。
「文章がいかにもなつかしさを煽る内容であるのに、なぜ、遺書と書いたのか?」
ということである。
「遺書と書くのであれば、それは、何かの含みがある」
ということになり、逆に、
「遺書というのは、あくまでも、悪戯だ」
ということもいえる、
もし悪戯だということになれば、
「出しても失礼にならないという二人だけにしか分からない暗号のようなものがある」
ということなのか、それとも、
「遺書という言葉を書いても相手はちゃんと冗談だということを分かってくれる」
というほどに、親密な仲ということになるということだ。
「どちらなのか?」
ということは、普通に推理したのでは分からない。直観として感じた樋口刑事としては、
「後者だと思った」
ということだ。
そして、秋元刑事は、逆に、
「暗号ではないか?」
と思ったのだ。
「交換推理」
ということであるが、
「この部分は、元々二つの事件を結び付ける」
ということでの、
「共通点」
ということである・
そうなりと、
「二人は独自にそれぞれの意見を考えているわけで。それがまったく正反対のことを考えていた」
ということは、この時は分からなかった。
しかし、それが、事件を解き明かす意味での
「キーポイントになる」
と考えると、
「最初の問題」
といってもいいだろう。
さらに他の問題として、
「二人が仲が良かった」
ということであるが、これは、
「お互いに仲がいい」
ということではなく、
「二人に共通の弱点」
であったり、
「潰し合う」
というところから、
「相手に強く出られない」
ということが絡んでくるからだといえるのではないだろうか?
ということであった。
確かに
「マイナスにマイナスを掛け合わせると、プラスになる」
ということであるが、
「逆はない」
ともいえるだろう。
というのは、
「プラスにプラスを掛け合わせると、プラスになる」
というわけで、マイナスになるということはないわけである。
つまりは、
「数学的」
に、
「数字の世界」
においては、
「プラスというのが圧倒的な強みを発揮する」
ということになるだろう。
大団円
「実際に、この数学の考え方は、推理において、役に立つ」
ということを、二人の刑事は、それぞれに感じていた。
ただ、
「マイナスにマイナスを掛けるとプラスになる」
という考え一本で考えているのが、秋元刑事の方であった。
樋口刑事の方は、
「それぞれに、考えを絡めていくことで、どんどん発想が深まってくるというような、いわゆる、
「わらしべ長者的」
な発想であった、
だから、今回のような事件にて、
「交換推理」
というものをすると、分かってくることも多いということだ。
となると、
「今度の事件で、どちらが重要なのか?」
ということになると、
「軸となるのは、ジャーナリストの死」
ということであろう。
この考え方は、樋口刑事の方だった。
これは、
「自分の所轄での事件」
という考えではないとは言い切れないだろう。
あくまでも、
「最初に死んだことで、残った一人が誘発された」
ということであろうし、しかし、これが、
「自分が死ぬことで、道連れにしよう」
と考えたとすれば、
「遺書」
ということで、相手に皮肉めいた手紙を送るというのは、相手を、
「追い詰める」
という意味で、ありえることだろう。
ただ、樋口刑事の中で、
「二人は、決して憎み合っているわけではない」
と思っていたからで、ここが、
「秋元刑事との大きな違いだ」
といってもいいだろう。
秋元刑事が、そう感じる理由としては、
「奥寺議員が、死体が上がらない方法で自殺をした」
ということと、
「小笠原の死」
というものが、
「他殺の可能性」
というものを匂わせているということからの発想であった。
そもそも、
「死体が上がらない」
ということは、
「偽装自殺」
と思われても仕方がない。
ということであるが、実際に、
「上からの圧力」
というもののせいで、
「自殺なんだ」
ということで終わらせようという
「意図が働いている」
と考えられるからである。
そんなことを考えると、
「最終的に、回りくどいことを考えずに、シンプルに事件を見るというのはどうだろうか?」
とも考えられた。
それにより、
「秋元刑事が最初シンプルに考えてみた」
のだが、結局、
「シンプルではない」
と考えるようになった。
「勘でいくと、シンプルには考えられない」
ということであり、結局、
「樋口刑事の、シンプルな発想が、最後は的を得ていた」
ということで、やはり、
「事件の発端が、事件のミソだった」
ということである。
今回の事件において、
「二人は、学生時代の親友だった」
というところから始まるのだが、
「大学時代に、遭難したことで、しかも、嵐に遭い、山小屋で避難していた女子大生を、二人で襲ったことで、二人が結局自殺をしてしまった」
という、
「ミステリー小説などで、結構定番の動機のような話が実際に起こった」
元々、小笠原も奥寺も知り合いではなく、その山小屋で一緒になっただけだったのだ。