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 遺書自体は、ワープロであったが、その最後には署名がしてあり、その署名は、筆跡鑑定の結果、
「本人に間違いない」
 ということであった、
 そこで、自殺についての裏付け捜査が行われたが、まわりの人からは、
「自殺なんて素振り、まったくありませんでした」
 ということであった。
「そもそも、「落選した」
 ということであれば、自殺の動機になるのかも知れないが、それもない。
 というのも、
「今回の自殺は家の近くで行われたわけではなく、電車に乗っても、車で移動しての、数時間がかかるとことだった」
 ということからだった。
 実際には、電車での移動であり、駅員などが、覚えていたりしたことや、防犯カメラの映像からハッキリとした。
 さらに、自殺をした当日から、
「2泊3日」
 ということで、ホテルに予約を入れていたことからも、分かったというもので、
「その予約を入れたのは、宿泊予定の一週間前から」
 ということであった。
 つまり、
「少なくとも、一週間前から、奥寺議員は、この宿に2泊三日で泊まるという予定にしていた」
 ということになるのだった。
「ということは、当選落選は関係ないということになるんですかね?」
 という意見に対し、現場の責任刑事は、
「ああ、そういうことになるんだろうな、ということは、本人にとって、政治家人生を棒に振るかも知れないことをここで考えようとしていたんだろうか?」
 と言った。
 この現場捜査刑事は、名前を秋元刑事といって、普段は、
「直観で捜査をする」
 という人だった。
 もちろん、
「裏付けに基づいた捜査」
 というのもできる人だが、
「迷宮入りしそうな事件で、ウルトラ?を見せるということで、彼の場合は、その直感捜査を許されていた」
 ということである、
「彼の場合は、直感ではなく、直観なんだ」
 ということで、
「考えに頼るというわけではなく、あくまでも、見えているものを、直接見る」
 という捜査方法だということであった。
「今度の事件の捜査において、分からないことが実際に多すぎる」
 ということで、
「秋元刑事のような捜査員が、一番の適任なのかも知れない」
 と言われていた。
 実際に、
「今回の事件は、疑問が多い」
 ということで、秋元刑事は、捜査会議で、それを提起した。
 そもそも、今回の事件。見た目は完全に自殺である。
 遺書もあったからであるが、何といっても、
「遺体が見つかっていない」
 というところが問題だった。
 遺書を書いて身を投げるのだから、
「そもそも、遺体が見つからない」
 ということは矛盾ではないだろうか?
 中には、
「自分の亡骸を表に晒したくない」
 という人もいるだろうが、
「政治家」
 という立場で、そんなことがありえるだろうか?
 特に、議員には息子がいて、その息子がいずれは、世襲するということは、
「公然のこと」
 ということであり、
「遺産相続」
 ということを考えても、
「遺体が上がらない」
 ということであれば、スムーズにいかなくなるというのも分かっていることであるはずだ。
 それなのに、まるで、
「意地悪をしているかのように、遺体が上がらないところで自殺をする」
 というのはどういうことであろう。
 実は、奥寺議員は、
「遺言書」
 というものもきちんと作成していた、
「議員である以上、どこで何があるか分からない」
 ということで、遺書を作成したのだった。
 それは、奥さんや側近は周知のことであり、
「それだけ、奥寺議員は、身ぎれいな議員だ」
 ということで、野党であっても、それなりの人気を地元で博しているということになるのであった。
 それを考えると、
「今回の自殺はあまりにもずさんだ」
 ということで、
「これが、奥寺議員その人が行ったことだとは、到底思えない」
 ということで、
「衝動的な行動であれば分からなくもないが」
 と考えられるが、少なくとも、この土地に来ることは、最初からの計画だったわけで、それを考えると、
「議員には、他人には知られていない何かの秘密があるのではないか?」
 と考えられた。
 警察署の考えとしては、
「あまりにも分からないことが多すぎる」
 ということで、
「本当に自殺なのだろうか?」
 という意見が多く、
「しかも、これをただの自殺ということで処理をしてしまうのは、世間と、政府に申し開きができない」
 ということから、
「自殺と殺人の両面から捜査をする」
 ということになったのだ。
 普通であれば、
「殺害されたということでの捜査」
 というのは、
「それなりに証拠がなければいけない」
 ということになるのだろうが、実際に、司法解剖しようにも、遺体がないので、それも不可能。
 要するに、
「圧力に押される形での殺害の可能性」
 ということになるのであった。
 ただ、実際に捜査を進めるにあたって、
「殺害しなければいけないだけの動機を持った人間が、身近にはいない」
 ということであった。
 そもそも、
「議員の失踪は、側近も奥さんも気づかなかったわけで、それを知っている人がいたとして、これが殺人事件ということであれば、失踪しても無理のないような、それこそ、近しい人間ということでないと成り立たない」
 ということで、捜査は、
「近親者」
 に絞られた。
 それで、実際に、
「近親者との関係」
 というものを洗っていると、
「誰にも、殺害までしよう」
 という恨みを持った人が誰もいないということになるのだった。
 そうなると、
「やはり自殺なのか?」
 ということが言われてきて、
「自殺するには、その理由が分からない」
 ということであったが、
「自殺ということであれば」
 ということで、側近の一人が、秋元刑事に、
「直接は関係ないかも知れませんが」
 という前置きをしたうえで話をした。
 もっとも、警察としても、
「ええ、かまいませんよ。とにかく、分からないことが多いので、事件に対してのとっかかりがほしいんです」
 といった。
 この事件は、
「調べれば調べるほど。分からないことが増えてくる」
 というものであった。
 つまりは、
「歯車が噛み合うはずの深堀が、逆に、五里霧中にさせてしまう」
 というような作用があるということであった。
 それは、捜査員にも分かっていることであり、
「側近や奥さんも分かる」
 というような、
「そこだけは、分かりやすい」
 ということになるのであった。
 この事件は、
「自殺か、殺人か?」
 ということは、
「調べれば調べるほど、分からなくなっている」
 といってもいいだろう。
 ただ、それによって、
「奥寺議員」
 という人間のことは分かってくるのだった。
 それはまるで、
「今回の事件は、奥寺議員のことを、世間に分かるようにするための何かの力が働いている」
 ということになるのではないか?
 そんな発想を一番感じているのが、
「側近の人」
 ということであった。
 この人は、
「奥さんよりも古い付き合いだった」
 というのは、奥寺議員の奥さんは、
「後添い」
 ということで、実は前の奥さんは、
作品名:交換による解決 作家名:森本晃次