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真実と事実のパラレル

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「螺旋階段のようになっている」
 ということで、それを、
「負のスパイラルだ」
 と考えるようになった。
 それが本当に、
「負なのかどうか?」
 ということは、ハッキリと分からないと思うのであった。
 そんな
「嫉妬」
 と、
「二重人格」
 というものは、それぞれに、
「たすきに見せるというものの、反対側の作用なのではないか?」
 と感じるようになったのだ。
 村上は、
「殺された」
 ということであるが、
「本当に死んだのだろうか?」
 と思う人がいた。
 それが誰なのか?
 ということであるが、実は、それが、村上にとっての、
「もう一人の自分」
 だということを、村上自身も分かっているのであろうか?

                 自殺した自分

「殺された自分」
 というのは、もちろん殺したのは、奥さんだった。
 そして、奥さんは、半狂乱であったが、すぐに確保され、今、取り調べを受けている。
「旦那は、死なないのよ」
 というわけの分からないことを叫びながら、奥さんは、半狂乱状態になっていた。
 もちろん、心療内科の受診を受けながらということであるが、刑事としても、
「あの状態では、事情聴取もまともにできないな」
 というほどなので、
「精神錯乱状態での犯罪」
 ということで、
「無罪になる可能性は高いな」
 ということであった。
 しかし、そんな奥さんの、
「錯乱状態」
 というものを見て、本来であれば、
「奥さんも気の毒に」
 とは思うが、それだけではなく、
「奥さんの言っている意味が何となく分かる」
 と思っている刑事もいた。
 それが、
「秋元刑事」
 という刑事で、彼は、
「スピリチュアルな話」
 であったり、
「都市伝説」
 のような話に大いに興味があったのだ。
 だから、
「旦那は死なないのよ」
 と言ったことに対して気になっていた。
「旦那は、死んでいない」
 ということであれば、まだ、言葉のつながりが分かる気がするが、
「旦那は死なない」
 ということは、言葉的に、非常に違和感を感じさせられる。
「旦那は死んでいない」
 ということであれば、言っていることは確かにおかしいが、
「まだ死んでいない」
 ということを言いたいだけだ。
 しかし、
「旦那は死なない」
 ということは、
「殺しても死なない」
 ということであり、それが、
「不死身」
 ということなのか、それとも、
「殺しても殺しても、生き返る」
 ということなのか、
「とらえ方一つで、二つの考え方ができる」
 というものである。
 それを考えると、
「後の方が、余計に違和感がある」
 ということになるのである。
 秋元刑事は、今までに幾度となく、殺人事件に遭遇してきていて、中には、犯人が、
「半狂乱となる」
 ということも、少なくなかった。
 しかし、それでも、2,3日もすれば落ち着いてきて、事情聴取に応じてくれる人がほとんどだった。
 しかも、落ち着けば、
「これほど素直な人はいない」
 というほどに落ち着いているのである。
 それだけ、元々が、
「気が弱い」
 ということなのかも知れない。
 追い詰められ、殺すしかない状況になり、結果、
「殺してしまう」
 ということになるのだが、そうなると、今度は、自分の中で、精神的な許容ができなくなるということで、
「限界を突破してしまう」
 ということになるだろう。
 だから、
「半狂乱状態」
 というものになった時は、
「戯言」
 ということで聞き流すくらいの気持ちになっていたのだが、今回の殺人事件においての言葉は、
「無視できないもの」
 と考えるようになったのだった。
 秋元刑事は、
「この言葉の意味するものは?」
 ということで考えた。
 事件の方は、奥さんが半狂乱の状態では
事情聴取などできるはずもなく、医者に話しても、
「この状態は厳しいでしょうね」
 というので、
「どれくらいで正常になりますかね?」
 と言われた医者は、眉をひそめて、
「うーん、何とも言えないですね、正直、冷静さを取り戻しても、前のままの状態に戻っているかどうか、分からないですね。それに私は奥さんの前というのを知らないので、何とも言えないといっていいでしょう」
 という、曖昧な言い方しかしなかったのだ。
 秋元刑事は、
「それくらいのことは、俺には想像がつく」
 と思っていた。
 ただ、
「夫が死なない」
 という言葉だけが気になっていたのだ。
「どういうことなのだろう?」
 と繰り返し思っていたが、一つの結論として感じているのが、
「彼女の中にある、夢の世界」
 というものであった、
「現実世界と夢の世界の交錯」
 というものが、二人の間に存在していて、それを奥さんとしては、殺したはずの旦那の夢の世界だけが、起きていても襲ってくる気がすることから、
「死なない」
 という表現になったのではないか?
 ということであった、
「死んでしまったはず」
 しかも、それを実行したのが自分」
 ということで、自分の中にある、
「うしろめたさ」
 というものを、
「夫の魂が責めさいなめている」
 と感じると、
「霊がついてしまった」
 と考えて、
「どんなに罪を償っても償いきれない」
 と思うと、半狂乱にもなるというものだ。
 さらに、医者の話では、
「奥さんは、うわ言のようなことも言っていますね」
 という。
「それは、どういうものなんですか?」
 と聞くと、
「死んでも死にきれないという言葉なんですよ」
 という。
 この言葉は、よく言われる言葉ではあるが、この場合に、果たして適切な言葉といえるだろうか?
「死んでも死にきれない」
 ということは、
「死のうとする意志があるが、怖くて死にきれない」
 ということで、
「自殺を意味している」
 ということになるだろう。
 しかし、医者がいうには、
「彼女の中に、自殺しようという意識はまったくないように思うんですよ。普通なら、人を殺せば、その罪の意識から、少しは、自殺をしようという意識があってもしかるべきだと思うんですが、この奥さんに限っては、その意識はでてこないんですよね」
 ということであった。
「確かに、自殺を考える人は、見ていれば分かるというもので、精神錯乱状態だから、自殺の意識を感じ取ることはできなかったので、警察とすれば、自殺も警戒しなければいけない」
 と考えていた。
 殺人犯に、検察に起訴する前に、警察署内で自殺などされると、
「警察のメンツは丸つぶれ」
 ということになるだろう。
 それを考えると、警察としては、今は、彼女を警察病院に入院させているが、
「自殺させないように」
 ということで、刃物などは気を付けるようにして、病室の前に、制服警官を配備させているのだった。
 実際に、中から奇声が聞こえてきて。
「大丈夫ですか?」
 と警官が中に飛び込むということもあるというのは事実だった。
「警察のメンツも大切だが、自殺をされると、真実が分からなくなる」
 ということで、警察としても、
「ここまで捜査をしていたことが、無駄になる」
 ということになるのだった。
作品名:真実と事実のパラレル 作家名:森本晃次